怪・その27

「母を見られない」

昨年から続く、現在進行形のお話です。

私達夫婦には、
隣県に、一人暮らしの、
夫の母(85歳)がいます。

運転はできませんが、
年のわりになんでもひとりで出来るので
心配はなく、
病院・美容院などには、
近くの親戚が車を出してくれていました。

苦労続きで、
ひねくれた性格の母でしたが、
息子である夫だけは溺愛して、
愛情のすべてを注いでいました。

そのうちに親戚と仲たがいをし、
近所の人ともうまくいかなくなり、

昨年夏に、川に飛び込み、
自殺未遂をしました。

見ていた人がすぐ助けてくれて、
警察のお世話になりましたが、
幸いなことに怪我もなく、
その後しばらく我が家で同居しました。

すると、はじめにあてがった
神棚のある部屋をいやがり、
2階の角部屋に移り、
夏だというのに窓も開けず、
昼間も、窓も障子も締め切って、
猛暑日でもクーラーも使わずに、
じっと座っています。

母は言葉が少なくなりましたが、
会話はでき、一見普通の様子でした。

ただ、小食な母でしたが、
食欲旺盛に変わっていました。

そしてそのころから、
母の部屋で、
妙な匂いがするようになりました。

なんだか甘いような、それでいて、
嗅ぐと本能的に「危ない」と感じる匂いです。

ひと呼吸しただけで、気持ち悪くなります。

また、母が階段をゆっくり降りてくる姿が
なんとも気味悪く、
廊下で私に会うと、
幽霊のように両手を前に出して、
今度はすごい速さで歩いてきて
泣きそうな顔で私に抱き着いてきて

「追い出さないでおくれ。
帰るところがないんだよ」

と言いました。

この時は、胸の奥から恐ろしい気がして、
しばらく恐怖がとれませんでした。

その頃、たまに母の部屋に掃除に入ると、
以前は見たこともないような
しめった埃が部屋の隅にたまっています。

まるで川の水を吸ったような、
湿気のあるじめっとした、
固まったたくさんの埃です。

使った寝具も、
床に如いたマットも同じ匂いがしていて、
干しても臭いがとれず、
新品でしたが処分しました。

現在母は、母の地元のほうの
ケアハウスに入居しています。

先週夫婦で会いに行きましたが、
やはり、同じ匂いがするのです。

窓を開けても、週に2日入浴しても、する匂い。

自殺未遂の後、
母は性格が変わってしまい、

息子である夫にも、
意地悪をして困らせるようになりました。


実は、夫は神主の資格があり、
サラリーマンのかたわら、
仕事でお祓いをしたりしています。

夫の見立てでは

「川で自殺しようとして、
同じような自殺した魂(幽霊)が憑いている。

笑う顔を見ると気持ちが悪い。

ずっと憑いているのではなくて、
(母の体に)出たり入ったりしている。

助けようがない」

というのです。

神社で母をお祓いしていただくことも出来ますが、
母自身に生きる気力がないので、
お祓いしていただいてもどうなのか、
ということだそうす。

私も自殺騒動後は、
母を見ると気持ち悪く、顔を正視できず、
特に目を見ると、
胸が詰まるような気持ちになります。

母に接しているほかの方は
どう感じているのか、聞いてみたい思いです。

現在のケアハウスの母の部屋は、
光を見ると疲れるというので、
昼間でも厚いカーテンを閉めています。

神仏に関わるものは何も置いていません。

以前は近くの神社に日参して、
信仰心のある母だったのですが。

母の姿は、
頬がこけて目の上が大きく窪んでいて、
白髪は染めず、
体型は、ヨガに熱中している人のように痩せ型です。

今も母のところへ行くときは、
必ず神様のお札をつけて出かけています。

(まるちゃん)

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2019-08-22-THU