怪・その28

「押入れが現れて」


学生の頃、後輩が話してくれたことです。

彼女は、幼少の頃、
家族で借家に住んでいたそうです。

そしてたまに、双子の兄と二人きりで
留守番をすることがあったそうです。

大人が家を空け、
双子だけになった時に限って、
普段は何もない壁の真ん中に
“押入れ”が現れたそうです。

押入れが現れると
彼女たちは不思議な衝動に駆られて、
毎回、その引き戸を開けてしまった、と言います。

開けると中からは、
人間の形をした
黒い霧のような
「何か」が現れたそうです。

その「何か」は
押入れの外へ出てくるのですが、
彼女たちはいつも決まってひとりで
「何か」を押入れに戻そうと
抗ったのだと言います。

私は、彼女たちがなぜ毎回、
「逃げる」ではなく
「戦う」を選択したのかが
腑に落ちなかったので、

「なぜ、逃げなかったの?
戦うにしてもなぜいつもひとりだったの?」

と尋ねました。

彼女は、

「だって、どちらかひとりは、
『何か』に首を絞められてしまっているから、
助けなくちゃいけないじゃないですか」

そう答えてくれました。

借家から引っ越してからは、
押入れが現れることはなくなったそうですが、
ほかにも不思議なことが幾つも起きていた、
と言っていました。

(hiratcha)

こわいね!
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