怪・その29
「父のいたずら」
2018年の年の瀬に、父が他界しました。
私は間に合いませんでしたが、
50年以上過ごした自宅で、家族に看取られて、
静かに旅立ちました。
私が実家に着いたのは、
父が亡くなってから
約2時間が経った頃でした。
私の顔を見るなり、
小学6年生と小学2年生の甥っ子達が、
「あのね、爺ちゃんが死んでから、
不思議なことがあったんだよ」
と話しだしました。
甥っ子が言うには、
父が亡くなってしばらく経ってから、
玄関の呼び鈴が鳴ったそうです。
父が亡くなったのは午後9時頃だったので、
近所にも親戚にも
まだ知らせていなかったそうなのですが、
「誰かきたのかな?」と言いながら
甥っ子が見に行ったところ、
誰もいなかった‥‥と言うのです。
それも、2回。
甥っ子達は、
「たぶん爺ちゃんがいたずらしにきたんだよ」と、
あまり怖がってもいない様子でした。
葬儀が終わり、初七日が過ぎる頃に、もう一つ。
父が乗っていた車のクラクションが
突然鳴りだしました。
盗難防止用の、繰り返し鳴り響くやつです。
慌ててエンジンをかけて止めましたが、
周りには誰もおらず、
鳴った理由がわかりませんでした。
甥っ子達は、
「ほら、やっぱり爺ちゃんがいたずらしてるんだよ」
「怖〜い(笑)」
と、楽しんでいました。
それきり、不思議な事は起きていません。
案外本当に、
父が名残りを惜しんでいたのかもしれません。
(なおじろう)