怪・その35

「図書館の下駄の音」

大学時代の経験を投稿させてください。

大学の図書館はクーラーも効き、
調べ物もすぐ出来るため、学期末の図書館には、
試験勉強やレポート作成をする学生が多くいました。

この図書館は地下階がありました。
そこにも机と椅子があり、
また、古い文献しか置いていないため、
他の階より空いています。

上の階から階段を通じて
クーラーの冷気が流れてきて涼しく、
暑い夏に居座るにはぴったりの穴場でした。

ある夏の日、
図書館の地下階でレポートを書いていました。

友人と一緒に昼食を食べる約束をしたので、
それまでに仕上げるつもりでした。

地下階へ、階段で降りると長机があり、
間に書棚を挟んで、
部屋の角に1つだけ、
古い机と椅子がポツンとあります。

座ると目の前と右が壁ですが、
他の席から離れているので、
埋まっていることが多い席です。

しかしその日は地下階に誰もいなかったので、
私は角の席に陣取りました。

レポートのまとめを書いていたら、
ふと下駄で歩き回る足音に気づきました。

後ろの棚を行ったり来たりしているようです。

今どき下駄とは珍しいなぁ、
と思いながらも続けていると、
足音が私の方へ近づいてきました。

この席を使いたいのかな?
と振り向きましたが、誰もいません。

棚を挟んだ向こうの長机にも、誰もいません。

気のせいかと前を向いたら、
また下駄が歩き回る音が
後ろから聞こえてきました。

不審に思い、再度振り返りましたが、
やはり誰もいません。

ゾッとして、
もう図書館を出ようと前を向いたその時。
カラン。

私のすぐ真後ろで下駄の音がしました。

思わず固まっていると、下駄の音はそのまま、
カラン、カランと私の席の周りを
ぐるぐる歩き回り始めました。

机の二面が壁にピッタリ接しているのに、
下駄の足音は、私の席の周りを
ずっとぐるぐる回っていました。

怖くて動けないでいると、
階段の方向から、
おーい! と呼びかけられました。

ハッと振り返ると、
昼食の約束をした友人でした。

いつの間にか下駄の足音も消え、
ホッとしてすぐさま荷物をまとめて
地下階から上がりました。

その日以来、私は卒業するまで
地下階へ足を踏み入れませんでした。


この経験は誰にも話さずにいたのですが、
先日、同じ大学出身の先輩が飲み会で、
その図書館の同じ席で
同じ経験をしたと話しており、思い出しました。

(y)

こわいね!
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2019-08-29-THU