怪・その42
「四十九日の前に」
いまでもはっきり覚えている音です。
母が亡くなり、
遺品の片付けなどで
実家に滞在していました。
四十九日の法要が近づいたある日の早朝、
父と私は、
2階の自室でそれぞれ休んでいました。
眠っていた私は、
寝室のドアを叩く
「コンコン」という音で目覚めました。
「あれ、父かな?
具合でも悪くて私を呼んでるのかな」
と思って起きようとした時、
別室で寝ていた父が
寝室のドアを開け、
廊下を歩く音が聞こえました。
しばらく廊下を行ったり来たりした父が
再び自室に戻った気配を聞いて、
私は再び眠りに落ちました。
朝食の食卓で、
2人ともに
ドアを叩く音を
同時に聞いていたことがわかりました。
とても力強く、はっきりした
「コン! コン!」でした。
父も同様に、
私が気分が悪くて
呼んでいるのかと思って
確認に起きたそうです。
母が四十九日の前に、
お別れに来たんだな、
と確信しました。
(キケット)