怪・その44

「白いヒラヒラした」

これは、会社のY先輩から聞いたお話。

今から20年以上前のある夜、Y先輩は彼女と、
長野県のとある山麓線をドライブしていました。

見通しの良い長い一本道にさしかかった時、
ふとバックミラーを見ると、
白いヒラヒラしたものが
100mほど後方に浮かんでいるのが見えたそうです。

Y先輩は
「きっと風で白い布が舞っているんだろう」
と、最初はたいして気にしていなかったのですが、

いくらか経ってからまたバックミラーを見ると、
白いヒラヒラしたものが
未だ後方に浮かんでおり、
そしてそれはY先輩の車のわずか後方、
認識できる距離まで近づいてきていたのです。

その姿はまさに、妖怪一反木綿のようでした。

車以上のスピードで近づいてくる
その白いヒラヒラした
一反木綿のような得体の知れない何かに
恐怖を感じたY先輩は、
車のスピードを目一杯上げて
無我夢中で逃げたそうです。

しばらくして恐る恐るバックミラーを見ると、
一反木綿のような何かは
もういなくなっていました。

数日後の真昼間、
Y先輩はまた、山麓線を運転していました。

一反木綿のような何かを
目撃したあたりに差し掛かると、
道端に花が捧げられているのが見えたそうです。

事故で誰かが亡くなっていたのです。

Y先輩は言っていました。

「人魂といえば丸いのもが一般的だけれど、
あの白いヒラヒラしたものも
きっと人魂だったんだろうな」と。

(t)

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2019-09-05-THU