Hobo Nikkan Itoi Shinbun
「ほぼ日の怪談」〜プロローグに代えて〜
この不思議なお話は、前回からの続きとなっています。
第1回からお読みください
。
『トントンさん』その2
京都のK子さんから「ほぼ日」へ、
ご自身のお母さまと娘さんが経験した
ふしぎな出来事をつづったメールは、
5通、6通と、日をおいて届き続けました。
「ばあちゃん(お母さま)」と
K子さんの娘であり、ばあちゃんには孫になる
「S子さん」のふたりの目前で、
この「トントンさん」と名付けられた存在は、
次々とふしぎな現象を起こしています。
続きです。
ばあちゃん宅の間取りは、
玄関を入ったところがキッチンで、
右側にリビング、その奥に二間、仏間と寝室があります。
ある昼間、ばあちゃんがキッチンに立っていると
仏間の方から、ばあちゃんが作ったお手玉や
小豆が入った小さな枕などが飛んで来たそうです。
他に、S子の文房具なども。
S子もそれを見ています。
また長細い紐状の物を置いておくと、
きれいに編んであったりもしました。
ばあちゃんは、自分はそんな結び方は見たことがないし、
自分でも出来ない、と証言していました。
ばあちゃんが近所の友だちにその話をしたところ、
二人が紐を数本持って、家にやって来ました。
寝室でごろ寝して紐を頭上に置き、
ばあちゃんはトントンさんにお願いした。
「紐、結んでくれる?」
ほんの数分すると、いつもの様に編まれ、
紐が帰って来ます。ポーンと飛んで来るそうです。
友人たちはびっくりしていましたが、
おもしろがってその後も2、3回、
違う友人も連れて、たくさんの紐を持参し、
結んでもらって、その紐を持ち帰ったそうです。
ばあちゃんは今、その結んでもらったものを二つ、
大切に持っています。
一つは腰紐で、もう一つはエプロン。
腰紐は去年、私が持ち帰り今自宅に保管しています。
そのばあちゃんの友だちは今でも、
「TVでやってるものよりか、
ずーっと不思議だったよねー」と、
たまに会うと言うそうです。
私は実際お会いしたことがないので、
次回ぜひ話を聞いて、
そして結ばれた紐を見せていただきたいと思っています。
続く。
続きです。
こんなこともありました。
ばあちゃんが冗談で、
「肩を揉んでくれる?」と言ったところ、
グッ、と肩になにやら力が加わったので、
ばあちゃんは一瞬怖くなり、
「あっもういいよ」と言ってしまいました。
その感触は、長い指だけど、
大きくてゴツゴツした手の様な感じだったそうです。
‥‥以上、多々矛盾点もあるかと思いますが、
昨年の夏にわたしがばあちゃんから、
あらためて聞いた話しの、概要です。
私はこの話しを、7年ほど前に娘S子と訪れた時、
ばあちゃんがしきりと騒いでいたにも関わらず、
まったく信じていませんでした。
昨年、母屋に帰郷していた従姉妹が
「でるかい?」と
ばあちゃんに聞いてきたことがきっかけで、
じっくり聞いてみよう、と思いました。
7年前のその時は、
トントンさんは現れていたのです。
私が唯一聞いたのは、
寝室でばあちゃんの問いかけに、
畳の、枕の上の方をトントン、と叩く音です。
あまりにもリアルだったので、
わたしは、横にいるS子がしていると思い、
気にも止めませんでした。
ばあちゃんいわく、その期間、
「あんたが疑ってたから、
トントンさんにはあまり構わずにいた」
とのことでした。
昨年で、娘のS子も、21歳になりました。
7年前行ってから昨年までは、
娘も学校のクラブなどで忙しく、
一度もばあちゃん宅を訪れることはありませんでした。
この不思議なトントンさんの存在は、
何だったのでしょうか?
座敷童?
妖怪?
霊?
昔から、目に見えないふしぎな現象が起きた時、
人はその様に名づけ納得してきたのかな? と思います。
トントンさんは、ばあちゃんとS子が
楽しく遊んでいたから、
ただ仲間に入りたくて、
一緒に遊びたくて現れた何か、です。
7年前の夏、私とS子がばあちゃんちから帰った時、
ばあちゃんはトントンさんに言いました。
「怖いから、もう出ないでね」
「トン」
それっきりだそうです。
おしまい。
最後に今一度、全て実話です。
「おしまい。」の文字を見ても、
夢のなかにいるような気分が続いていました。
約7年前まで、長野県でくらすお母さまのところへ
孫娘が遊びに来ると、音などを使って現れる、
「トントンさん」。
理由や因果関係は、
いただいたメールからはわかりません。
でも、こんなにはっきりと
連続して続いていたということ、
トントンさんからの応答があったということなど、
気になることがたくさんありました
K子さんからはさらに、
「結んだ紐の写真があるのだけど、送りましょうか?」
と提案があったので、
その画像を、メールで送ってもらうことにしました。
その結ばれた紐が、こちらです。
元は、編んだりしていない、一本の長い腰紐だそうです。
−そして。
いままで、いただいた投稿をご紹介するばかりだった
「ほぼ日の怪談」ですが、
一連のメールを読んだ社内から、提案が上がりました。
「もっとお話を聞いてみてはどうかな。
この、トントンさんのいた場所で。」
会いに行く?
「ほぼ日の怪談」の投稿に対して、
実際に、現場へ行ってみる?
わたしにとって、まさかのことでした。
まだふしぎな気持ちに包まれたまま
投稿者のK子さんに申し入れをしたところ、
お母さまと相談してくださり、
取材することに、同意してくださいました。
そして、
6月の末、暑さを感じはじめたころ、
担当であるわたくし(りか)と、
写真撮影を担当する岡村は、
長野県の上田へ向かいました。
次回より、その時にうかがったお話を、ご紹介します。
もちろん場所は、「トントンさん」が
畳を「トン」と叩き、ハーモニカを吹き、
テーブルの天板を回し、
紐を結んでほおり投げた、そのお宅です。
<明日に続きます。>
(掲載したメールはすべて、一部抜粋、
また内容を変えない範囲で加筆しています。)
「ほぼ日の怪談」本編は、8月より開始。
ただいま投稿を募集しています。
あなたの身の回りであった不思議な事を、
なにか思い出されましたら、
どうぞ、教えてください。
あなたが実際に体験した、
または体験した人から聞いた
不思議な話をメールで、件名を「怪談」として
postman@1101.comまでお送りください。
もちろん、「ほぼ日の怪談」を読んでの感想でも、
結構です。
みなさまからのメールを、こころよりお待ちしております。
2013-07-29-MON
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