ほぼ日には、見習い乗組員として働いていた
「フェザード・シジュ」という名の
おかしな銀色の宇宙鳥がいました。
その鳥が、ある日活動を止めてしまいました。
Twitterの更新も滞り、
「体調が悪くなったのではないか」などと
心配の声もいただきました。はたして何が起こったのか。
これはそれを解明しご報告するコンテンツです。
ほぼ日の見習い勤務鳥シジュがいなくなった原因が、
物理的にも心理的にも労働条件的にも
避けられなかったことが判明しました。
みうらじゅんさんのお話、今回が最終回です。
- みうら
- シジュちゃんじたいは、
そんなに重いものじゃなかったでしょ?
- ほぼ日
- スカスカでした。
- みうら
- 保管の際、倉庫の上に吊っておくとか、
できなかったんですか?
- ほぼ日
- それはやっぱり「目立つ」ということで‥‥。
- みうら
- 目立ってはいけないんですか?
- ほぼ日
- いまの世の中、企業にも
断捨離の流れがあるんです。
- みうら
- ああ、あるでしょうね。
- ほぼ日
- 「捨てちゃいけない」と主張することだけで、
たいへんな罪なんですよ。
- みうら
- 断捨離ってね、ぼくからすると、
やっぱり少しおごった考えなんじゃないかな、
という気がします。
「ものを捨てれば自分は気持ちいいけど、
相手はどうなの?」
ということに気づいていませんよねぇ。
- ほぼ日
- 相手?
- みうら
- ものの気持ちを無視してるでしょ?
断捨離する人ってもしかしたら、
友だちづきあいもなるべく少なく、と
思っているのではないでしょうか。
- ほぼ日
- あ‥‥なんとなくわかる気が。
- みうら
- ものと人間関係は一緒なんです。
それはつまり、
「自分さえよければ」
という考えのあらわれじゃないですか。
- ほぼ日
- ほんとうだ!
- みうら
- ぼくはたいへんな数の
要らないものと暮らしています。
人が来たときに「わぁ!」と喜んでもらうために
置いているのです。
それだけのためにこうして、
家を借りてるわけですよ。
- ほぼ日
- (笑)
- みうら
- それを断捨離をしてしまうと、人に
「こんなのあるよ!」
と、見せることはできなくなります。
断捨離は、
「つまらない家に住んでいる人」のことを
指すのです。
それじゃあ人へのサービスがないですよね。
シジュちゃんだって、
倉庫の奥に入ってたけど、
取り出してきたら、何人かの人は喜んだわけですよ。
- ほぼ日
- そうですね。
- みうら
- そこを忘れてますよ。
喜ぶ人がいるんですよ。
それがたとえ1人でもいいじゃないですか。
1人でも喜ぶ人がいる限り、
シジュちゃんは地球にいるべきですよ。
- ほぼ日
- 力強いお言葉をありがとうございます。
- みうら
- 1人が根底となって何十万人になるんです。
ほぼ日の倉庫ではそんな目に遭うということなら、
これはもう過酷な使命ですけど、
魂さんが、家に持って帰るのが
いいんじゃないでしょうか。
- ほぼ日
- え? それはちょっと‥‥。
- みうら
- 自宅が狭くなるけれども、
それしかないと思います。
魂にはその気持ちこそが大切だと思います。
- ほぼ日
- ‥‥じつは、このところ自分自身も、
断捨離人生を歩みつつありました。
- みうら
- でも、断捨離でいくつか捨てた後だから、
スペースが空いたんじゃないですか?
それはたぶん、シジュちゃんを置くための
断捨離であったと思うんです。
- ほぼ日
- 家にあるなら、夏休みの間も安心だし、
なんだったら自宅から出張に行けますもんね。
- みうら
- そうそう、会社にも寄らなくていいんだから。
たぶん会社もそれを望んでるんじゃないですか?
そうなったら、シジュちゃんの寸法についても
会社は何も言わないと思うんです。
それでなおかつ、倉庫のなかの平等を
訴えていけばいいでしょう。
- ほぼ日
- シジュのテーマはやっぱり平等主義ですね。
- みうら
- そうです。
「平等だな、このキャラは」
という印象を与える発言をしていきましょう。
- ほぼ日
- 「どっちが好きですか?」などと言われたら、
「どっちにもいいところがあるだジュ」
と答える。
- みうら
- 最初は「なんだよ意見ねぇなぁ」とか、
みんなに言われることでしょう。
でも、この先々、10年後、ほぼ日の事務所で
もめごとが発生することもあるでしょう。
そのときシジュちゃんは
「ぼくはね、ずっと黙ってたんだけど」
と、立ちあがって言う。
「ぼくのダンボールの事件を覚えているジュかな」
- ほぼ日
- はっ。
- みうら
- 「悪かった!」
ということになるでしょう。
「業績が悪いから倉庫の奥にあったんだジュ。
でも、それが平等と言えるのかな?」
- ほぼ日
- 「その結果、何が起こっただジュかな」
- みうら
- 「すまなかった」ということになります。
シジュちゃんの平等ささえあれば、
ほぼ日は安泰だし、
みなさんも極楽に行くことができますよ。
- ほぼ日
- 平等主義が極楽行きなんですか?
おもしろ主義も売上主義もだめでしょうか?
- みうら
- 極楽に行けるのは、唯一、平等主義だけなんです。
なぜなら、比較しないからです。
- ほぼ日
- ああ‥‥じゃあもう、安心して平等になります。
- みうら
- ぜんぜん安心されたらいいんじゃないでしょうか。
- ほぼ日
- はぁ、安心しました。
もう極楽です。
‥‥でもここで、不安なことがあります。
もういちど同じ顔つきのシジュちゃんが
作れるかどうかが不安です。
- みうら
- お寺の仏像は、よしんば火災に遭っても、
復活していますよね。
そのときにちょっと顔が違っていても、
みんなは決して「違う」とは言いません。
- ほぼ日
- ああ、そうですね。
- みうら
- 仏像は仏像。
シジュちゃんもシジュちゃんです。
くちばしがなくても、
頭に何かがついていても、同じです。
- ほぼ日
- そうなんですね。
- みうら
- ちょっとくらい前と変わってても
いいじゃないですか。
だって、シジュちゃんは宇宙人でしょ?
- ほぼ日
- はい。宇宙人といえばウルトラマンですが、
ウルトラマンも、
帰ってきたらちょっとずつ変わってると、
町田康さんもおっしゃってました。
- みうら
- そのとおりですよ。
違ってるから、みんな次々と
グッズを買うんじゃないですか。
- ほぼ日
- グッズもバージョン違いでどんどん
出していけばいいですね。
今日はいろんな勇気をいただきました。
再出発できるようにがんばります。
- みうら
- はい。
今回のことは、誰が悪いというわけではなく、
関わる全員が油断していたということです。
このニュースをほぼ日で発表するとき、
「あっ」と思う人もいると思います。
こういうことは、はじめてじゃないと思いますから。
- ほぼ日
- 「捨てちゃった」ということ、
これまであったでしょうね。
- みうら
- この惨劇が、教えてくれた知恵があります。
今後のゆるキャラの全体方針、
「油断しない」
それで決まりです。
- ほぼ日
- 自ら注意深く、おごり高ぶらず。
なぜなら平等主義だから。
みうらじゅんさん、ありがとうございました。
- みうら
- ありがとうございました。
「シジュちゃん宇宙に還る」
すべての顛末のお話を、これで終わります。
終わります。
終わります‥‥‥だジュ。
あれ‥‥、もしかして‥‥‥?
そういえばもうすぐ4月10日です。
4月10日は「シジュの日」ですね。
TOBICHI東京のスケジュールにも、
「シジュの日」という表示が出ています。
も、もしかして‥‥。
詳細は追って
フェザード・シジュのページでお知らせいたします。
ご愛読、ありがとうございました。
(「シジュちゃん、宇宙に還る。」おしまい)
2018-04-03-TUE