藤井亮の豪勢なアイディア。 藤井亮の豪勢なアイディア。
「石田三成CM」や「ミッツ・カールくん」など、
一度観たら頭から離れないアニメーションを
たくさん手がけている映像作家の藤井亮さん。
広告の世界から飛び出した藤井さんに、
糸井重里が映像のお仕事をお願いしました。

藤子・F・不二雄ミュージアムだけで観られる
短編映像『セイカイはのび太?』が上映中です。

糸井と藤井さんが作る『ドラえもん』の世界には
藤子先生を尊敬する気持ちが込められていて、
ふしぎとおもしろが混じり合っていました。

この映像がどうやって生まれたのか、
藤井さんの人となりとともに紹介します。

担当は「ほぼ日」の平野です。
(1)ドラえもんは好きですか?
写真
藤井
よろしくお願いします、藤井です。
──
よろしくお願いします。
藤井さんの名刺に書かれている
「豪勢スタジオ」という屋号、
これって糸井が考えた名前なんですよね。
藤井
あ、そうなんですよ。
糸井さんにつけてもらいました。
ちょうど糸井さんから
藤子・F・不二雄ミュージアムの
お仕事の相談をいただいた頃、
フリーランスになったばかりだったので、
「屋号があったほうがいいね」
という話になったんですよ。
その流れで糸井さんに頼めないかなと
おそるおそる聞いてみたら、
いいよって言ってもらえたので。
ぼくに頼んでくれた人が
豪勢なものを頼んだ気になるって
感じてもらえるような名前です。
──
景気のいい名前ですよね、豪勢スタジオ。
今回は藤子・F・不二雄ミュージアムの
映像の制作をお願いしましたけど、
たぶん糸井の頭の中には、
藤井さんに何かをお願いしてみたいって、
ずっとあったんだと思うんですよね。
糸井からはどんな連絡があったんですか?
藤井
たしか去年の夏ごろでしたかね、
糸井さんから「ドラえもんは好きですか?」
というメールが来たんです。
大好きですって返したら、
「それじゃあちょっとお話をしましょう」
となって、ほぼ日さんで打ち合わせしました。
──
糸井がTwitterで
藤井さんの作る動画を褒めていることは
よく見かけていましたが、
ついにお仕事をお願いできたんですね。
藤井
ぼくがまだフリーになる前に
「ほぼ日で動画作れる?」
と聞いてくださったことはありましたが、
まさかホントに糸井さんが
お仕事をくれるとは思わなかったです(笑)。
──
『セイカイはのび太?』は、
『ドラえもん』の漫画を読んでいて、
藤子・F・不二雄ミュージアムの話に
しっかり着地しているんですよね。
動画で紹介されているような
藤子先生のエピソードは、
ミュージアムで知ったものですか?
藤井
もともと『ドラえもん』は好きでしたが、
今回だいぶいろんな本を読みましたね。
藤子先生関連の本は全部買って読みました。
あとは『ひみつ道具百科』だとか、
『ドラえもん』関係の本はひととおり読んでます。
基本的に、藤子先生の言葉からのみ、
引用しようとしていたので。
──
みんなが大切にしているものだから、
半端に触ると怖いですもんね。
藤井
そこで嘘をつく必要なんかないと思って。
──
できあがった動画としては
『ドラえもん』第46巻という、
実在しない世界を描いていますよね。
漫画で表現するということは、
はじめから決めていたんですか。
藤井
いや、逆に画づくりの表現は決まっていなくて。
藤子先生のエピソードを
ちゃんと入れることは決まっていたんですけど、
表現をどうするかはフワッとしていました。
なんとなく、アニメで作るということしか
決まっていなかったので、
仕上がりがまったく見えていませんでした。
ずっと悩んでいたんですが、
原作の絵をそのまま動かそうって思いついてから、
やっと「これで作れるかも」というふうに思ったんです。
──
架空の「46巻」の表紙の絵って
悩みませんでしたか?
藤井
やっぱり、表紙は難しかったですね。
でもここで奇をてらったらよくないなと思ったので、
のび太とドラえもんが歩いている絵にしました。
藤子先生の帽子とペンでミュージアム感を
出せたらいいなと思って描きました。
写真
──
この映像に出てくるひみつ道具の、
「セイカイ」というのは、
漫画には存在しないものですよね。
藤井
ないです、オリジナルです。
──
公式に許可を得て作っているけれど、
みんなの『ドラえもん』だからこそ、
「俺が作っちゃっていいのかな?」
という怖さはありませんでしたか。
藤井
そうそう、怖いですよね。
本当にやっていいのかなって。
架空の単行本を作った上で、
表紙のドラえもんの絵もぼくが描いているし、
存在しないひみつ道具も作ってるし。
TVアニメや映画のドラえもんと違い、
漫画のテイストをそのままに
藤子先生のタッチを再現して作ることは、
ある意味、贋作を作っているようにも思えて、
本当にいいことなのかなって悩みました。
ファンの人に怒られないようにしなきゃって、
ビクビクしながら作っていました。
写真
──
藤子・F・不二雄ミュージアムで
この動画が観られる「Fシアター」は、
藤子先生のファンを出迎えるような場所ですよね。
「コロ助」「パーマン」「Q太郎」といった
『ドラえもん』以外のキャラクターが
登場するのも最初から考えていたんですか。
藤井
動画の中ではいろんなキャラクターを
出したいなって思っていました。
藤子・F・不二雄ミュージアムって、
「ミュージアム」とは言っているけれど
アミューズメントパークというか
「藤子・F・不二雄テーマパーク」
みたいなところがありますよね。
せっかくなら、
来てくれた人にたのしんでもらいたいので。
あとは、もともとやりたかったこととして、
ディズニーランドとかUSJで
アトラクションの列に並んでいる時に
映像が流れていることがありますよね。
──
アトラクションにちなんだ映像、
ワクワクしますよね。
藤井
あの映像があるおかげで、
空間に対してのリアリティが増してくるというか、
その映画の世界に入った気になるじゃないですか。
その感じを映像で再現できないかなと思っていました。
藤子・F・不二雄ミュージアムって
藤子先生の原画を見に行く場所だと思うので、
ムービーを観ることで
藤子先生の世界に入り込む感じを
表現できたらいいなとは思っていました。
漫画のコマの中に入っていくような様子を
映像にすることで、
その世界に入る手助けになれば嬉しいなと。
──
たとえば、動画の中に出てくる机も、
ミュージアムにある藤子先生の机ですか?
藤井
本物です。
ミュージアムに展示してある机で、
閉館後の夜中に
撮りに行かせてもらいました。
写真
──
それじゃあ本当に、藤子先生の世界に
入り込んでいく感じですね。
藤井さんが映像を作ると聞いて、
ぼくはてっきり『石田三成のCM』だとか、
『サウンドロゴしりとり』といった、
おもしろ動画を想像しちゃったんです。
ところが、できあがったものを見て、
気持ちのいい裏切られ方をしました。
すごくいい話だったんです。
藤井
あ、でももうひとつ、
毛色の違う別案もあったんですけどね。
ちゃんと藤子先生の話をする
『セイカイはのび太?』を
選んでいただきました。
──
藤子・F・不二雄ミュージアムに
遊びに来たお客さん、
みなさん喜んでくれていますよ。
(つづきます)
2020-09-03-THU
『セイカイはのび太?』は、
藤子・F・不二雄ミュージアムの
Fシアターにて上映中!
糸井重里がプロデュースし、
藤井亮さんが監督・企画・アニメーションを手がけた
オリジナル短編映像『セイカイはのび太?』を、
藤子・F・不二雄ミュージアムの
Fシアターにて上映しています。

藤子先生を尊敬する気持ちと、
たっぷりのアイディアを詰め込んだ4分間の映像を
200インチのスクリーンで堪能できます。
落語家の春風亭昇太さんによる
コミカルな語り口もどうぞおたのしみに。

ひみつ道具「セイ貝」から出てくるのは誰かな?
まんがのコマ読みに合わせた映像の動きにも注目です。



この映像のプロデューサー、
糸井重里のコメント
藤子・F・不二雄ミュージアムを訪れて、
最初に椅子に座る場所が「Fシアター」でしょう。

そこで、いったい何が見せられるのか?
こんなにワクワクドキドキする難問は、
ちょっとないですよね?
「ふつうのふりして、ふつうじゃない?」
そんな世界をお見せしますよ。



語りをつとめた
春風亭昇太さんのコメント
「これはそれぞれの役の声優さんに頼めば
いいんじゃないですか?」
って言ったんですよ…でもそうじゃないそうです。

頼まれたのは一つ
「昇太さんが漫画読んでいる時に、
頭の中に浮かんでいる声の感じで読んで下さい」
でした。
つまりこれはアフレコではないんです。

僕はあくまでもガイドみたいなもので、
皆さんが漫画読んでたあの頃を想像しながら見て下さい。
これは、皆さんの頭の中で完成させる作品です。



試写会で映像をご覧になった
吉本ばななさんのコメント
観てるあいだ、
ずーっとニコニコして幸せでした。
きっと創るのに
膨大な時間かかったんだろうなあ。

ただただ感謝です!





藤子・F・不二雄ミュージアムでは
「ドラえもん50周年展」を開催中!
写真
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50周年を記念した展示を
川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアムで開催中。

1階の展示室では、
特別展示「藤子・F・不二雄とドラえもん」。
※2021年1月31日まで(予定)

50年の歩みを貴重な原画と共にご紹介しています。

そして2階の展示室Ⅱでは、
『ドラえもん』の「生活ギャグ」に焦点を当てた、
「ドラえもん50周年展第2期後期 
ゲラゲラ笑える話/ゾ~ッとするこわい話」を開催。
※2020年11月9日まで

子どもの目線を大切にした藤子・F・不二雄先生の描くお話は、
時を経た今でも多くのファンに愛されています。
はらっぱにシアター、カフェやショップ、どこでも
『ドラえもん』はじめ藤子・F・不二雄先生の
キャラクターに会えますよ。

ミュージアムは現在、完全日時指定入館制なので、
混み合うことなくゆっくりとご覧いただけます。



9月2日よりミュージアムショップ限定の
ほぼ日手帳weeksも販売中!