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糸井 | 犬の様子の見方というか 空気の読み方は、 人間の何十倍ですよね。 |
穴澤 | そうですね。下手な人間より 全然空気読みますよね。 |
糸井 | それはよくってそれはいけないんだ、 みたいな、その微妙な違い(笑)。 |
穴澤 | 例えばだれかが‥‥僕が女の子とかと ちょっと軽い言い争いをするとします。 そうするともう空気を読んで、 見えるとこにいないんです。 僕がちょっと怒ってる、 空気とかっていうのをすごく察して。 八つ当たりはしたことないんですけど、 いやなんでしょうね、 僕が怒ってることが。 |
糸井 | いやなんですね。 自分の生命の危機に つながるんでしょうね。 |
穴澤 | 公園とかでも、 何かをするときに見てると、 明らかに自分が死ぬことを 回避するじゃないですか。 人間の子どもに比べたら、 その点は見てて けっこう安心するんですよね。 |
糸井 | 何ていうんだろう、 いい意味で信用してないですよね、 幸せを(笑)。 |
穴澤 | そうです。もちろん見てて ハラハラするんですけど、 すごく危なそうなとことか、 絶対近寄らないですよね、 基本的に犬って。 |
糸井 | 犬の側からすると、 ご主人と自分のあいだっていうのは もう双生児なんでしょうね。 離れて生きてるけども、 この人がいないと大変なことになると 思ってるんでしょうね、きっと。 |
穴澤 | そうでしょうね。もうだって実際に、 ぼくが、こいつの、 「世界」なんでしょうね。たぶん。 |
糸井 | ときどき、変なスイッチが入ると、 この人はその世界が 見えなくなるときがあるんです。 |
穴澤 | でも、3歳ぐらいとかだったら、 そんなもんですよ。 |
糸井 | そうなんですか。 |
穴澤 | 富士丸が落ち着いたのは‥‥ やっともう大丈夫だと思ったのは 3歳半ぐらいかな。 それぐらいまではやっぱり‥‥ 人をかんだりとか そういうことはしないですけども、 やっぱバカだなあっていうことを けっこうしてましたね。 トイレシートを ぐじゃぐじゃにしたりとか。 |
糸井 | ブイヨンはね、そういうことはほとんど 苦労しないで済んじゃったんです。 来たときから、スリッパかむだとか 椅子をかむとかってことが まったくなくて。 |
穴澤 | へぇー、それはいいですね。 |
糸井 | おしっこの失敗もなくて。 だから、しつけ、ほとんど した覚えがないんです。 多分、子犬と長いこと一緒に きょうだいでいたんで、 そこでかみ合ったり いろんなことしてたんだと 思うんですけど。 |
穴澤 | そうでしょうね。 2、3ヶ月まではやっぱり 一緒に置いといたほうがいいって 言いますよね。 |
糸井 | みたいですね。だからそれは 感謝してますね、 その前の暮らしにね。 |
穴澤 | 「Say Hello!」ですね。 |
糸井 | そうです、そうです。 あれはもうね、あの写真の枚数を 見ればわかるとおり、 イワサキユキオさんは、 もう付きっ切りでいたんでしょうね。 |
穴澤 | すごいですよね。 |
糸井 | あんな人はいない。 |
穴澤 | だって、こんなに動く犬種なのに、 あんなにバッチリ撮ってて。 |
糸井 | 普通ありえないです(笑)。 |
穴澤 | ねえ。また上手ですし、写真も。 |
糸井 | 明るいところで撮ってますよね。 ストロボ使わずにね。 |
穴澤 | あ、そうなんですか! |
糸井 | ほとんど使ってないんじゃないですか。 |
穴澤 | いやー、うまいですよ。 |
糸井 | イワサキさんのおかげで、 ペットショップから来た犬と違う 苦労のなさはすごくありましたね。 |
穴澤 | 多分そうでしょうね。 ペットショップの犬とかって、 きょうだいから すぐ引き離されることもあるって 聞きますし。 |
糸井 | そうですね。富士丸のブログに 犬の引き取り手を探すバナーが、 あるじゃないですか。 |
穴澤 | 「いつでも里親募集中」ですね。はい。 ペットショップで20何万とか30万とかで 売られてる犬がいる一方で、 毎日普通に子犬とかが殺されたりしてる 現状をけっこうイビツだと 感じるんですよね。 僕としては単純に冷静に、 僕ができることをしたいというのと、 本当に知らない人が けっこういると思うんです。 「犬を飼う」イコール 「ペットショップ」という 考え方がある。 でも里親募集では 普通に子犬がたくさん出てるので、 連絡して見に行ってあげると、 その20何万かは、かからないわけです。 20何万かけようと思ったら、 何年ぶんもの育てる費用に充てられる。 |
糸井 | ああいう「お分けします」っていう ところには、不純なものは 入っていないんですか。 |
穴澤 | そんなに変なのはないですよ。 というか、あれで稼ごう、 というふうにはなっていないので。 普通に「もらってください」 というだけなんで。 ただ、あの中には、 家庭の事情で飼えなくなりました、 という人が募集をしたりするんです。 僕が「富士丸と暮らせなくなったので、 すごい大きい大人の犬ですけど、 だれかもらってください」 って書いているようなことなんです。 それはものすごく僕としては、 「違うんじゃないの?」 と思うところではありますけど。 |
糸井 | そうかそうか。受け入れ先が 安定してくると、 そういう人が現れるわけだ。 でも、それは言ってられないですね。 引き取り手があるんで 安心して捨てる人が 増えるんじゃないか、 みたいなことまで考えたら、 キリがないですね。 |
穴澤 | そうですね。 |
糸井 | イギリスなんかは 犬屋がないんですって? ヨーロッパっていうのは基本的に。 |
穴澤 | いわゆるブリーダーから 直なんですよね。 |
糸井 | そのほうが仕組みとしては 安心ですよね。 |
穴澤 | そうですね。で、もう お腹にいる時代から予約して、 みたいな制度もあるっていうので、 それはそれで全然 いいことだと思うんです。 例えば、僕は大きい犬が好きですが、 それは好き嫌いの問題ですよね。 ただ単に、それとは別に 「雑種はかわいいよー」 というのがけっこうあって。 もちろんこの犬種が好きだ、 という人を批判するつもりは まったくないんですけど。 |
糸井 | 富士丸くんは、それの典型ですよね。 シベリアン・ハスキーと コリーのミックスですもんね。 |
穴澤 | そうなんです。 |
糸井 | 可能性がゼロではないですからね。 |
穴澤 | 富士丸をかわいいっていうんだったら、 もし犬を飼ってるんだったら、 自分ちの犬かわいがって、と。 |
ウー、ウー‥‥(おもちゃを探す) | |
糸井 | ブイヨン。富士丸くんはね、 あんまり嬉しくないと思う、その行為。 |
穴澤 | いや、大丈夫ですよ。 富士丸、全然自分のおもちゃとか 人に取られても平気なんです。 |
糸井 | いい子だね。 |
穴澤 | おっ。新しいの探してきたね。 |
糸井 | 最初のを破壊しちゃって‥‥。 |
穴澤 | 全然いいですよ。 破壊するものなんですよ、それは。 |
糸井 | 破壊しちゃいけないものは しないんですけど、 していいものはしますね。 |
穴澤 | すごいいいことだと思います、全然。 どうぞどうぞ。 (おもちゃを渡す) |
糸井 | あ、それはね、壊れます、完全に。 |
穴澤 | 全然壊していいんですよ。 おもちゃは壊れるためにあるんです。 いいですよ、全然。 |
<続きます> | |
2007-02-13-TUE |