第4回 「すてきなおじさま」を探して
|
糸井 |
モテるモテないの話にもどると、
僕の男の見方の中に、
「モテたい髪形」というジャンルがあるんですよ。
トシとっても髪の毛フサフサで、白髪か白髪まじり。
それもこれ見よがしの長髪だったりして。
流れでいえば、
五木寛之、筑紫哲也、鳥越俊太郎なんかそうですね。 |
呉 |
それは嵐山光三郎も指摘している。
白髪、長髪、進歩的文化人がセットになってるのね。 |
糸井 |
それでパイプでもくわえた日にゃあ(笑)。
「すてきなおじさま」系とも言えるね。 |
清水 |
「おじさん改造講座」をやってるとき、
すてきなおじさまになるにはどうしたらいいか
っていう質問はいちばん多くて、
みなさん、今おっしゃた白髪、長髪あたりを
目指しているらしいんです。 |
糸井 |
そして、そのジャンルの中に収まろう収まろうとして、
みんなが「すてきなおじさま」マジックにかかっていく。 |
呉 |
強迫観念みたいに……。
「すてきなおじさま」系に、
ぜったいゲーハーは入んないんだよ。 |
糸井 |
僕なんか子どもが高校生くらいになると、
明らかにモテたいという気持ちは減ってきたけど、
「すてきなおじさま」系は、いくつになってもモテたい。
だいたい、ロン毛のじじいって、何か企んでるよ(笑)。
俺はあっちに行くのを避けようとして髪を短くしたね。 |
呉 |
それはやっぱり見識だね。
俺は三十代くらいまでは、言論人、文化人のあり方として、
「すてきなおじさま」系の方向に行くのが
いいんじゃないかという意識があったんだよ。
その後、物書きとして、
ある程度、自分の考えがまとまった段階で、
その路線は避けたけどさ。 |
糸井 |
はあ、呉智英先生でさえ。 |
呉 |
恥ずかしながら。(笑) |
糸井 |
「すてきなおじさま」地獄だ。 |
清水 |
でも、ロマンスグレーで長髪でって、
イメージとしてはあまりにワンパターンすぎますよね。 |
糸井 |
老齢化したときの価値観を、
みんなまだ見つけてないんじゃないの。 |
呉 |
橋本治が
「トシとりゃあ、みんなハゲるじゃない。それ自然だよ」
ってアッケランとしてたけど、
たしかにそうで、女の人だって、
ハゲなくてもシワはできる。
でも魅力的な人は、シワがよっていようがいまいが、
魅力的だもんね。 |
糸井 |
みんなが「すてきなおじさま」系に走らないためには、
それ以外のモデルも必要ですね。 |
清水 |
そのためにもハゲを隠そうとしちゃいけませんね。
アナウンサーのハゲさんにも、
ニュースを読んでもらいたい。 |
糸井 |
ハゲを自らウリにするという路線もあるけど、
そのルーツとして柳家金語楼の存在は大きいね。
「ハゲましておめでとう」と言って笑いをとったり。 |
呉 |
手拭いで簡単にできるカツラを考えて、
それをギャグに使うとかね。
俺の場合、ハゲにポジティブイメージもったのは
ショーン・コネリーからだね。
カツラつけてジェームス・ボンドやってた頃じゃなく、
『薔薇の名前』なんかの。 |
清水 |
日本でも竹中直人さん、西村雅彦さんとか、
素敵なハゲさんがいますよね。 |
呉 |
2枚目じゃないけど。 |
糸井 |
でも、女性の「キャーッ」は入る。
「すてき」系に替わるモデルを選ぶなら、
「いなせ」系なんて、いいんじゃない? |
清水 |
ええ。私、おっちゃんが出てくるようなテレビドラマ、
作ってほしいですよ。
サラリーマンっぽくない……。 |
呉 |
職人とかね。
腕1本で家族を食わして、2人いる弟子を
俺が一人前にしてやらなきゃあっていうような。
おっちゃんでも職人でも、
そういう生き方がカッコいい男の姿として
テレビや映画にどんどん出てくれば、
変わってくるとは思う。 |
糸井 |
毛のあるなしで勝負するなってことだね。
(終)
|