明けても暮れてもラーメン
第3回
ウニラーメンと音の出る焼きそば |
糸井 |
カップ麺でも、
最近は評判のラーメン店の味を再現する、
いわゆる「有名店シリーズ」が
たくさん出ていますね。 |
小山 |
私たちとセブン‐イレブンさんとで
共同開発した「名店仕込み」シリーズが
最初でした。
おいしいだけでなく、それぞれに
「ご当店」の背景があって、
イメージが広がる。
そういう切り口で成功しました。
その「ご当店」ブームをさらに一歩進めて、
私はインターネットのバーチャル空間に
架空のラーメン店を作ってしまいました。
「幻の名店」と名づけて。 |
糸井 |
「幻の名店 ほむら」だ。
物語がちゃんとあって、
おやじさんのキャラがいいんだよね。 |
小山 |
「ほむら」は中国で修行した
おやじさんの店ですが、
次は小粋な兄さんが切り盛りする店を
と考えてます。
私ね、意外と
ロールプレイングゲームが好きでして、
今回は町中がラーメン、お金までラーメン、
何してもラーメンという、
ラーメンだらけの街を作ろうと思ってます。 |
山田 |
大好きです、そういうの。
僕自身もお客さまに
「いやぁ、おもしろそうじゃん」
って言っていただけること、
何か新鮮なものがないか、を
いつも考えてますから。
基本はラーメンですけど、
僕がプロデューサー的な役割をしながら、
違うジャンルの方たちと
コラボレーションして
できることはないかとか。 |
糸井 |
「こんな不思議なものを作って失敗した」
というのもあるでしょ。 |
山田 |
世に出さなかったものは山ほどあります。
たとえばラーメンとウニの組み合わせ。
あったかいスープの上に生のウニをのせたら、
これが生臭くて食べられなかった(笑)。
でも、「なんだ、これ」と思っても、
負けたくない性格なので、
絶対に失敗のままでは終わらせない。
じゃあ、生臭くなくするためには
どうすればいいんだろうと考えるだけです。 |
糸井 |
失敗したのではなくて、
「まだ途中なんだ」と。 |
山田 |
そうです。今はまだできないだけ。 |
糸井 |
小山さんも、
そういうものは無数にあるでしょうね。 |
小山 |
音がするカップ焼きそばを
作ったことがあります。
ジュジュジュバチバチと
焼く音を出してしまえというので、
炭酸ガスを封じ込めた
砂糖の結晶を入れまして。
お湯をかけると、熱で糖分が溶けて、
炭酸ガスが出る時に音がする。 |
糸井 |
口に入れるとパチパチ音がする
お菓子がありましたよね。 |
小山 |
「絶対にいけるぞ!」と思いましたが、
あまり売れなくて(笑)、今は終売してます。 |
山田 |
もう、ですか。 |
小山 |
ええ。コンビニエンスストアでは、
売上げが“茶筒型”と言って、
1ヵ月から2ヵ月くらいの間に
一気に商品が出て一気になくなるんですよ。
コスト管理も徹底していて、
たとえば1週間に10食しか売れないものは
すぐカットだとか
厳密に決められているので、
それ以下だと、ポンと切られてしまう。
長続きするような切り口で開発しても、
年間で残る商品は2つか3つくらいですね。
即席麺を買う男女比で言えば、
7対3か8対2で男性のほうが多い。
年齢層では20代、30代が多いですけれども、
3年くらい前から40代が2倍くらい
上がってきました。 |
糸井 |
おっ、それは大きいなあ。 |
小山 |
高価格麺が登場してきた時から
グンと上がってるんですよ。
40代は、私もそうですけど、
チキンラーメン、カップヌードル世代です。
即席麺からちょっと遠ざかっていた
その人たちが、
高価格麺で戻ってこられた形になっています。
今後、高齢化社会にもなってきますので、
そうすると年齢の範囲は
もっと広がるんじゃないかと推測しています。 |
山田 |
さきほど出た「具多」も高価格麺ですね。 |
小山 |
あれは具に驚きがある
というコンセプトで出しました。 |
山田 |
驚いたのは、具の袋だけを別にお湯で温めて、
あとでカップに入れるんですよ。
普通のカップ麺より、もうひと手間かかる。 |
小山 |
即席麺じゃない、
と憤慨なさる向きもありますが(笑)、
外に出なければ食べられないようなものが、
家でそんなに難しくなく
食べられることは評価されていますね。 |
糸井 |
ほら、家で手軽だから
インスタントコーヒーを入れる一方で、
僕ら、エソプレッソ入れてミルク温めてと、
面倒なこともやっている。
あれと同じ現象じゃないかな。 |
小山 |
ニーズも二極分化していると思いますね。
カップヌードルのように簡単で安価なものと、
できるだけ本物に近く、
ちょっと手間をかけても
満足していただけるものとに。
そうすると、こちらもさらに
切磋琢磨できますので、
即席麺の世界はより広がっていきます。 |
糸井 |
僕自身の中にも、
いわゆるスローフードがいいと思う部分と、
一方でインスタントのこういうものがほしい
というのと、両方があるもの。 |
小山 |
1日の中でも朝、昼、晩、
それから間食だとか、
それぞれ違った
食べ方をしていると思うんですよ。
私なんか、休日のお昼はほとんど即席麺です。 |
山田 |
家でも?! |
小山 |
家でもです。だけど夜は料理するとか。
今、単身赴任中で、
ゆうべは大根の煮っころがしを作って、
一人で食べてました。
家族のもとに帰ると、
子どもに「フランス料理作ったる」と、
朝から素材を買い出しに行って料理したりね。 |
山田 |
料理は僕もよくしますよ。
ほとんど外食で、
家で食べる機会はあまりないですが、
1ヵ月に1回でも2回でも
女房と2人でごはんを食べる時には、
基本的に僕が作りますから。 |
糸井 |
お二人とも、ほんとに「食」でいっぱいでね。 |
山田 |
食べることが生きがいですから。 |
|
(つづく) |