第5回
秋の収穫まで、たのしみましょう。

糸井
去年はぼくらだけでしたが
ことしは、全国の人たちがいっせいに、
自分ちの庭やベランダで
福島のお米を育てるわけですよね。
藤田
どんなことになるのか、たのしみです。

私らの現地の「リアル田んぼ」の状況も、
Facebookかなんかを使って
「いま、藤田の田んぼはこんな感じです。
 あなたの田んぼは、どうですか?」
みたいに
全国の人と情報共有できたら、おもしろそう。
糸井
いいですね。Facebookに行けば
「藤田さんが、いてくれるぞ」と思ったら
はじめての人でも
「わたしにも育てられるかな?」って
過剰に不安にならずにトライできると思う。
藤田
田植え時期だとか、稲刈りの時期だとか、
私らの田んぼに
遊びに来ていただいたって、いいですし。
糸井
あの、自分ちで稲を育ててたら
「あいさつ」が変わると思うんですよ。
藤田
というと?
糸井
これまでは「雨ですねえ‥‥」って
うんざりしながら言ってたかもしれないけど
これからは
「いやー、雨ですねえ。
 でも、この雨が降ってくれるおかげで、
 うちの稲がね!」みたいな。
藤田
なるほど(笑)。

ぼくも、よく言うんですけれど、
「みなさん、
 夏は夜が寝苦しい寝苦しいって言いますが
 寝苦しい夜があるからこそ、
 キュウリがおいしく育つんですよ」って。
糸井
ああ、そうかあ。
藤田
ですから、これからは寝苦しいなと思ったら、
おいしいキュウリ、おいしいキュウリと‥‥。
糸井
はい、心で念じます(笑)。
藤田
やはり、自宅に稲があると
「季節といっしょに暮らしている」ことを
感じられると思うんですよ。

春に芽が出て、暑くなったら青々と育って
秋には黄金色になり、頭を垂れて‥‥。
糸井
これから稲を育てはじめる全国の人たちに、
藤田さんが「これだけは守ってね」
ということがあるとすれば
やはり「陽当り」と「水」ですかね。
藤田
そうでしょうね。そのふたつがあれば。

でも、水はともかく、
陽当りって、
都会のマンションのベランダでは
丸一日ってわけにも、いかないでしょうけど。
──
うちのベランダ、午後2時を過ぎると
じょじょに日陰になってくるんですけど
それでも、お米、実りましたよ。
糸井
あ、そうなんだ。
──
一日中、陽当りのある場所にくらべれば
「実り」はよくなかったかもしれないですが
うちの乗組員が育てていた稲で
「実らなかった」ケースはなかったはずです。
糸井
それは、ぜひ知ってほしい情報ですね。
でも、午前中の光って、大事なのかな?
藤田
あ、朝日は大事ですよ。

朝日が当たるか当たらないかって、
稲にとっては、すごく大きいです。
糸井
そうなんだ。
藤田
私、お米じゃないんですけど、
以前、ちょっと大きめの家庭用プランターで
野菜をつくっていたとき
朝日が当たらない場所に置いていたんです。
糸井
ええ。
藤田
でも、10時くらいからは
ずっと当たりっぱなしになっていたんで、
大丈夫だろうと思ってたら、
朝日の当たってるプランターの野菜とは
育ち方が、ぜんぜん違って。

あれは、びっくりしました。
糸井
ホルモンみたいなのもあるんですかね?
植物にも。
──
朝ってことで言うと。
稲の花も、出穂(しゅっすい)した朝の
「午前9時から3時」間くらいの間しか
咲かないんですよね、たしか。
藤田
そう‥‥だいぶ詳しくなりましたね(笑)。
糸井
ぼくら、けっこうまじめなんですよ(笑)。
藤田
でも、こういう情報を
みんなとリアルタイムでやりとりできたら、
本当に、たのしいだろうなあ。

「稲の花、今朝、咲きました!」
「うちはまだです~」‥‥みたいな感じで。
糸井
それを見てる、また別の地域の農家の人が、
なんか意見をくれたりとか。
藤田
「こっちのほうじゃ、そんなことしねぇよ」
とかって言ってきてくれたら
それこそ、私ら的には楽しくてしゃあない。
糸井
風の問題とかも、ありますよね?
藤田
台風のときなんかは倒れちゃいますから
風の当たらない場所に
避難させたほうがいいと思うんですけど
適度な風って、けっこう大事。

風通しが悪いと、湿気がたまって、
病原菌が発生しやすくなったりするので。
糸井
へえ、そうなんですか。
んー、こういう話、もっと聞きたいなあ。

あ‥‥ラジオやる?
藤田
ラジオ?
糸井
藤田さんがラジオ宣教師みたいに出てきて、
「最近の稲は、いかがですか?」と(笑)。
──
はい、おもしろそうですね。

田植えとか、真夏とか、稲刈りのときとか、
稲の生長段階にあわせて
藤田さんが、いろいろ教えてくれるという。
糸井
で、藤田さんの話がおもしろかったら
ぜひ「イーネ!」ボタンを押してもらおう。
藤田
「イーネ!」ボタン‥‥いいですね(笑)。
糸井
なにせ、今回の「ちいさな田んぼ」を
買ってくださった人とは
秋までの、長いお付き合いになると思うんで、
そういう、
長距離走をたのしめるような「仕掛け」を
いろいろ考えていきましょうか。
藤田
んー‥‥ワクワクしてきました(笑)。

秋の収穫まで
全国で育ててくれている人たちと一緒に
お米づくりをたのしむプロジェクト。
糸井
はい、よろしくお願いします。
藤田
こちらこそ、よろしくお願いします。
ラジオでも何でもやりますよ!(笑)

<おわります>

2015-03-30-MON

copyright HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN