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今日の里親会に参加しているワンちゃんたちに
スタッフのみなさんがおやつをあげているのを
拝見していて驚いたんですが、
それぞれ、その子専用の食べ物を用意されているんですね。 |
オリバー |
そうですね。
一匹ずつの特別なケアを、できるだけしています。 |
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―― |
いま、アークのシェルターに保護されている
動物たちの数は、どのくらいなんでしょう。 |
オリバー |
犬が200匹くらい、猫が150匹くらいですね。
一時期は全部で500匹くらいいたことがあるけれど、
スペースの問題もあるし、
あまり数が多すぎると、目が行き届かなくて
かわいそうなことになりますから。 |
―― |
今日、ここに来ている子は、
ミニチュアダックスフント、キャバリアと‥‥
小型の犬が多いですか? |
オリバー |
最初はアークに来る犬たちも、
雑種の中型犬が多かったんです。
でもここ数年は、小型犬が人気でしょ?
人気の犬種は、ブリーダーがたくさん繁殖させて、
子どもを産めなくなった犬を捨てるんです。
それで最近は、アークに来る犬たちも
小型犬がかなり増えてます。 |
―― |
あぁ‥‥。 |
オリバー |
最近も、ダックスなどの小型犬12匹を
ブリーダーから保護しました。
去年の12月には、チワワとダックスで50匹。
1カ月の間にです。
子どもを産めるだけ産んで捨てられた犬たちは、
もう若くはないし、いろんな健康上の問題があります。
たとえば、皮膚病とか乳腺の病気、歯石とか。
それに、筋肉もない。
たぶんブリーダーのところでは、
ほとんどケージに入れられていて、運動不足ですね。 |
―― |
なるほど。 |
オリバー |
残念ながら、日本には
ブリーディングのことをちゃんとわかってやっている
ブリーダーはかなり少ないと思います。
趣味でやってるブリーダーというか、
犬を飼っていて、自分で子どもを増やそうと思ったとか、
お金儲けのために流行りの犬種を
手あたり次第に繁殖させるとか、
そういうブリーダーは、
ブリーディングのことをほとんど知らないです。
遺伝病とか、いろいろありますけど、
それらを知らずにやっている。
そもそも、日本にはブリーディングに関して
基準になるものがないんです。 |
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―― |
外国には基準があるということですね。
それは、どういった内容なんですか?
たとえばイギリスでは。 |
オリバー |
イギリスの場合はね、
まず、2歳になるまでは、子どもを生ませることはできません。
それから、1匹の犬が一生のうちに
子どもを生むのは6回だけ。
そして、子犬は社会化するまで里子にはだせないです。
日本のペットショップには、生後1カ月の子犬もいるでしょう?
でも里親のもとにだすのは、2カ月から3カ月がベストですね。 |
―― |
個人の人が、自分の飼っている犬や猫を
アークに預けるということもありますか? |
オリバー |
あります。
いろんな事情があるでしょう?
飼い主の人が亡くなったとか、
介護施設に入らなきゃいけなくなったとか、
離婚とか、倒産とか、
人の事情はかわりますからね。
外国でも、それはいっしょです。
でも、イギリスの場合でいうと、
自分で飼い続けられなくなっても、シェルターがあるんです。
シェルターがいくつもあるから、
どこかは受け入れることができる。
日本の場合、シェルターがないから、
保健所に連れていくか、捨てるしかない。
犬にとっても人間にとっても、
チャンスはゼロですね。
飼えなくなったらどうする? 日本では。 |
―― |
ほんとうに。 |
オリバー |
でも最近は、日本でも殺処分される犬や猫の数は
少し減ってるんですよ。
でもまだ‥‥もうちょっと。
がんばらないといけない。 |
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―― |
阪神淡路大震災のときも、
飼っていた犬や猫を飼い続けられなくなった
被災した人たちがたくさんいたと聞いています。
そのとき、アークのシェルターで
600匹を超える犬や猫を保護されたとうかがいました。 |
オリバー |
あのときは、アークにとっても
一番たいへんなときでした。
90年にアークを設立して、震災が起きたのが95年。
それまで少しずつ、少しずつ大きくなっていたものが、
急に、全部が3倍になったんです。
動物、ボランティア、スタッフ‥‥
動物の数も人間の数も、一気に3倍になりました。 |
―― |
そうすると、200匹のキャパのシェルターに
600匹が。 |
オリバー |
あのときは特別でしたから、
みんなものすごく、一生懸命にやりました。
何年か経つと、以前と同じに戻りましたね。
シェルターのバランスはすごく大切と思います。
スペースの問題と、世話する人の数と、お金のこと。
そのバランスがくずれたら、悲惨になる。
そうなったら、結局は
動物がかわいそうなことになりますから。
アークには、いまでも毎日相談の電話があります。
朝から晩まで、あるんです。
ほんとは全部助けたい。
でも、全部はできない。
アークには常に順番待ちのリストがあります。 |
―― |
順番待ち。 |
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オリバー |
もちろん、緊急のケースはあります。
たとえば、直接アークに犬や猫を捨てに来る人がいます。
それから、保健所に入っている犬はリミットがあります。
たとえば、「来週木曜日まで」とか。
この場合、その木曜日までに何とかしないといけないから、
リストの上にいきます。
虐待のケースも、リストの上にいきますね。
でも、そのバランスはすごくむずかしい。 |
―― |
そうして保護した犬や猫は、
アークのシェルターでからだと心の傷を癒して‥‥ |
オリバー |
外見の傷はね、治りやすいんです。
でも、心の傷は治りにくい。
彼らがこれまでどういう経験をしてきたか、
わからないことが多いですから。
外国の場合は、
飼い主がシェルターに連れてきますから、
話が聞けるんです。
でも、日本のように捨てられた犬は、
どういう経験をしてきたのかわからない。
たとえば、人をこわがる、
とくに男の人をこわがるとか、かなり多いです。
ほとんどの子が、スタッフにはすぐ慣れます。
でも、誰にでもフレンドリーに、というのは
むずかしい。ちょっと時間がかかりますね。 |
―― |
きょう、この里親会に参加している子たちは、
心とからだの傷を克服して
ここに来ることができたんですね。 |
オリバー |
そう。こういう経験は、犬たちにとってもいいんです。
シェルターにはたくさんの犬がいますから、
いろんなストレスがあるんですね。
里親が見つかってふつうの家庭に入ったら、
犬たちは変わります。
みんな、ずっとよくなりますよ。 |
―― |
新しい家族を見つけることができれば。 |
オリバー |
そう、新しい家族を見つけること。
それがアークの目的ですね。
いまアークにいる犬や猫たちが出ていかないと、
増える一方。
そういうバランスはすごく大事です。 |
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―― |
新しい家族、里親にもらわれていくのは、
どのくらいの割合ですか? |
オリバー |
犬は、毎年220から240匹くらい入ってきて、
リホーム(里親にもらわれること)が、
毎年190から200匹くらい。
猫は、毎年140匹くらい入ってきて、
リホームは100匹ちょっとくらいですね。
アークの場合、犬に比べて猫の里親希望者は多くないので、
引き取れる数も猫のほうが少ないんです。
猫は、野良猫を個人で保護する人もいるし、
世話をする人もいるし、
あえてアークに猫を求めに来る必要がないんですね。
でも犬は、狂犬病予防法でどんどん
殺処分されてしまうので、
野良犬自体の数が減っていますから。
そのほかに、安楽死もあります。
がんとか、治らない病気にかかっている場合で、
犬の場合で、それが毎年50匹くらい。
残念だけど、しかたがないです。
年をとっているとか病気があるとか、
入ってくるのには、差別がないですから。
線引きはしません。
できるだけの治療をして、治らない場合、
苦しみが長くなりそうなら、安楽死を考えます。 |
―― |
スタッフの方たちは、
何人ぐらいでやってらっしゃるんですか? |
オリバー |
大阪のスタッフの数は約30名ですね。
獣医がひとり、看護師が3人。
事務関係の人が5人。
経理とか、イベントとかボランティア担当とか。
あと、修理をするとか、
レスキューや病院に行くときに運ぶ男性が3名。
それから、トリマーがいまはひとり。
犬は、えさをやるとか散歩に行くだけじゃなくて、
全体のこと、ブラッシング、シャンプー、
耳掃除、爪切り、全部しないとね。
東京は事務所だけで、スタッフは4名。
東京にはシェルターがないので、
動物たちはフォスターファミリーに一時預かりしてもらって、
譲渡会を開いて里親を探します。 |
―― |
今回、こちらのジョージさんでおこなわれたような
里親会はひんぱんに開かれているんですか? |
オリバー |
東京のほうではそういう機会も増えてきましたね。
でも、ジョージは特別。 |
―― |
そうですか。 |
オリバー |
動物を売ってないでしょう。
フィロソフィーがすごく好きです。
それから、デザインセンスがすごくいい。
アークにスペースを貸してくれて、
すごくありがたいですね。 |
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―― |
里親会や譲渡会に参加する以外にも、
里親になりたい人が申し込む方法はありますか? |
オリバー |
アークのシェルターに来てもらうことが
できます。
事前の調査書がありますからそれを書いてもらって、
あとは面接ですね。
結婚といっしょですから、
できるだけ、家族全員に会いたいんです。
これは商売じゃないですから、
その日、その場に決めなくてもいい。
いっぺん家に帰ってじっくり考えて、
決めてもらってもかまわないんです。 |
―― |
これだけたくさんの動物をケアするのに
どれだけお金と人手がかかるかと思うんですが、
アークさんの運営はすべて、
一般からの寄付によってまかなわれていると
うかがいました。 |
オリバー |
100パーセント、個人の寄付です。 |
―― |
人手のほうは、さきほどうかがった専従のスタッフのほかに、
ボランティアのスタッフも常時募集されていますね。 |
オリバー |
そうですね。 |
―― |
ボランティアのスタッフは、ふだん
何人くらいいらっしゃるんですか? |
オリバー |
常時30人くらいのボランティアスタッフがいます。
イギリスに「DOG TRUST」という
広い、大きな施設をもつシェルターがあるんです。
全国に17箇所くらいあって、
そこにはボランティアで働く人が400人ほどいます。
年配の人が多いですよ。
60代、70歳くらいの人はまだ元気でしょう。
子どもが大きくなって、時間の余裕もあって。
ほんとはそういう年齢の人が、
一番ボランティアの可能性があると思うんだけど。 |
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―― |
なるほど。 |
オリバー |
イギリスは、ボランティアの歴史は長いですからね。
ほとんどの人はなにかしてる。
子どもの頃は、クリスマスのときが
家族がいちばん集まるときなんです。
わたしの家族、母や親戚は、
近所のひとり暮らしのお年寄りをいつも家に招いてました。
ひとりで過ごすのは寂しいですからね。 |
―― |
そういうのはやはり‥‥ |
オリバー |
宗教じゃないと思いますよ(笑)。
わたしは宗教にあまり興味ない。
宗教的なことじゃないかって
よく聞かれるけど、
わたしはぜんぜんそうじゃないです。 |
―― |
では最後に。
おそらくインタビューを受けるたびに
何度も聞かれていることだと思いますが、
オリバーさんは、なぜ日本で
アークをはじめられたんですか? |
オリバー |
わたしが日本に来たときは、
ほとんどふつうの外国人と同じです。
英語を教えるとか、そういう仕事でね。
もともとわたしは、小さいときから
動物がすごく好きでした。
子どものときは、馬まで飼ってましたから(笑)。
だから、日本で暮らしはじめるときも、
田舎に農家の家を買って、
また犬や猫を飼おうと思ったんです。 |
|
―― |
はい。 |
オリバー |
最初の犬は、当時、西宮にあった日本動物福祉協会の
救援センターから紹介されたグレイト・ディン。
大きな犬でした。
捨てられた動物の問題は身近にいっぱいありましたから、
なんとかしたいと思ったんです。
保護した猫とか犬とかアヒルとか、
最初は全部自分で、飼ってました。
勤め先の大学に行く前に、えさをやって散歩をして、
少しずつ、友だちとかボランティアで
手伝ってくれる人がでてきましたけど、
もう個人でできる範囲を超えてしまって。
わたしの給料は全部、犬のえさや治療費などで
消えていったんです。
それで少し、ほかの人たちにも協力してもらおうと思って、
個人の活動から団体へと、シフトチェンジしたんです。
そうやってアークがスタートしてから、
同じ考えの人とか、どんどん人が集まってきました。 |
―― |
活動の規模が広がっていったんですね。 |
オリバー |
そう。最初はほとんど友だちでしたから、
仕事が終わってから、食事をして、お酒を飲んで。
いまはスタッフはスタッフ。
アークの規模が少し大きくなって
スタッフが増えて、人の管理がむずかしいですね。
自分の役割が変わってきましたから、しかたがない。
それがいちばんむずかしいと思う。
動物の世話は、朝から晩までやってても、それはたのしみ。
でも、人間の問題は‥‥どこでもいっしょよね?(笑) |
―― |
そうかもしれません(笑)。 |
オリバー |
わたしは、小さい頃から
不自由したことはありませんでした。
お金持ちなわけじゃない。
でも、車を欲しいと思えば買うことができるし、家もある。
ぜいたくは好きじゃないですから、じゅうぶんです。
だから、社会に返す。
受け取るだけじゃなくて社会に返すことは
大事だと思う。
もちろん、人間のことについても、
いっぱい問題があります。
アフリカとかインドとか、貧しい国の子どもたちの問題も、
いろいろあるでしょう。わかっている。
でも、全部はできない。
わたしは、動物が好きで、
動物のことはよくわかるから、
彼らのかわりに声を出すんです。
みんな、すっごくかわいいですからね。 |
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※「スティックグッドドッグ」のカバーは完売いたしました。
次回は、2月1日から販売予定です。 |