めずらしく、広告の話。GO三浦崇宏さんと糸井重里。
ほぼ日に載るものとしては、
ちょっとめずらしい対談をご紹介します。

コロナウィルス感染症に関する
緊急事態宣言発令前の2020年2月、
「あらゆる変化と挑戦にコミットする」
をミッションに掲げる広告会社
The Breakthrough Company GOの
若き代表・三浦崇宏さんが、
糸井重里に会いに来てくださいました。
「広告」という共通点はあっても、
年齢、スタンス、選ぶ表現など、
ずいぶん違いの多いふたり。

もし会ったら、どんな話になるんだろう?
そんな思いからおこなわれた対談は、
三浦さんが持ち前の熱い口調で
糸井に広告や会社の話を聞いていく、
元気なおしゃべりになりました。
07 夢いっぱいのジャイアン。
写真
三浦
ほぼ日は、上場するまで
何年ですか?
糸井
準備は10年近くやってましたよ。
「上場しないこともあると思います」
と言いながら、証券会社の人と
付き合ってたんです。
「レールが引かれたからそのまま行く」
というのは嫌だから。
三浦
わかります、そうですよね。
糸井
自分たちでも納得して、
「さあ、ここからは行くぞ」と思ってからは
2年ぐらいやってたかな。
しなかったほうがよかった理由は、
まだぼくにはちょっとわからないですね。



三浦さんのところのGOもきっと、
そういうことになるんじゃないですか。
写真
三浦
そこはもうずっと悩んでます。
そういう方向もあるのか、ないのか。
「したほうがいいんだろうな」とか、
「どういう意味があるんだっけ」とか。



「変化と挑戦」ってこともあるんですけど、
ぼくはやっぱり
クリエイターという商売に
夢を与えたいなと思っているので。
ちょっとおこがましいんですけど。



「コンサルタントや銀行員とはまた違う
カッコいい職業があるよ」
って広めたいなと思うんで。
そうするとやっぱり上場なのかなとか。



でも、
「会社が自分のものじゃなくなることが
はたしていいんだっけ?」
とかはよく話してますね。
糸井
上場しようがするまいが、
「自分のもの」みたいな所有の感覚は、
そのうちなくなりますよ。
自分が思ったように動けるものじゃないから。
三浦
正直、もういまでもそうです(笑)。
社長というのがこんなに
社員に気をつかわなきゃいけない立場だとは、
わかってなかったです。
糸井
それたぶん今後、いま思ってる
8倍ぐらい気を遣いますよ(笑)。
いまの状態で言ってるようじゃ。
三浦
ああ‥‥きっとそうですよね。
これから先ですね。



いまぼく、もう会社でいちばん
ちっちゃくなっているんです。
それでも「偉そうだ」って
言われるんだから、度しがたいです。
糸井
やっぱり偉そうなんじゃない?(笑)
写真
三浦
そうなんでしょうねえ‥‥。
糸井
吹くね(笑)。
三浦
いま経営者3年目ですけど、
この間も社員と、もうひとりの役員と、
投資家の方と、
「最近どうですか」みたいな話をしてたんです。



そのときにぼくが
「ぼく自身、やっぱり経営者としての
自覚が出てきたんで、
いろいろ考えるようになりました」
という話をしてたんです。



「ただ、自分のクリエイターとしての
姿勢を核にはじまった会社なんで、
自分がいまここまでちいさくなってることが、
はたして会社にとっていいことなのかどうか
悩んでるんです」
みたいなことを言ったら、
隣にいたもう一人の役員に
「バカかおまえ。誰ひとりおまえのこと、
ちっちゃくなってると思ってないぞ」
って。
糸井
(笑)そうだろうね、ぼくもそう思うわ。
三浦
ちっちゃくやってるつもりなんですけど、
もっとなんでしょうね。
糸井
それ、ジャイアンのセリフだよ(笑)。
三浦
そうなんでしょうねえ‥‥(笑)。
写真
糸井
ジャイアンにインタビューしたら、
「こうやってのび太とかに気を遣ってるのが
もうバカらしいんですよ。
さあ、一曲歌いましょう!」みたいな。
三浦
糸井さんは、いつから気を遣うように
なりましたか?
糸井
最初の、アシスタントが1人だったときから、
ずっと気を遣ってますよ。
「その人が楽しくいられますように」って。
三浦
そういうふうに生きていくしかないですね。
経営者である以上は。
糸井
つまり会社って、自分にできないことを
みんなにやってもらってるってことだから。
奥さんにも気を遣うように、
一緒にやってくために必要なものですよ。



まあ、だからみんなキャバクラに
行ったりするのかもね。
「気を遣われたい!」とかって(笑)。
写真
三浦
でもぼく、たぶんキャバクラ行っても
サービスしちゃうんですよね。
がんばっておもしろい話をして。
ぼく、キャバクラってほんと行かないんですけど。
お酒が飲めないから、楽しくないんですよ。
糸井
ぼくも飲めないんですよ。
三浦
あ、お酒飲めないんですか。
じゃあどうしてるんですか?
糸井
あ、いや、そもそも
キャバクラに行く機会がないけど(笑)。



でも大昔に行ったときは、
それはそれでおもしろかったよ。
年の離れた人がそこから帰らない
というだけで、すごいものだなあと。
三浦
ぼく「なにしてるんだろう?」っていう
気分になっちゃうんですよね。
なんで俺、目の前にいるのが
きれいな女性ってだけで、
わざわざ自己紹介して、
おもしろい話で場を盛り上げようと
してんだろうなって。
糸井
その女の子たちも「自分の環境」だからさ。
環境をおもしろくするんだと思って(笑)。
三浦
受け入れなきゃいけないんですかね。
ほんっとに苦手なんですよ、キャバクラ(笑)。
「なんだろう、これ」
って思っちゃうんですよね‥‥。
写真
糸井
そこもジャイアンなんじゃない?
三浦
そうでしょうねえ。
気を遣っちゃうんですよねえ。
気を遣うジャイアン。
糸井
ジャイアンも気遣いますよ。
ほんとにやっていこうと思ったら。
漫画ではそんなに描かれてないけど、
ほんとにジャイアンやるのって、大変ですよ。
三浦
いや、そうなんですよ。
リサイタルも人集めなきゃいけないし。
たぶん「ちょっと下手だ」ってことぐらい
自分で気がついてますからね。
「下手かもしんないな」と思いながら、
歌ってますからね。
糸井
ネットで強気の三浦さんが
会社の人と一緒にインタビューを
受けてるみたいな記事があったよね。
あれとか見てると、
まだまだこれからいろんなことが
起こるんだろうなあと思っておもしろい。
三浦
(笑)いやもう、ぼく、
未熟が服着て歩いてるようなもんですから。
糸井
いやあ、未熟っていうか、
「夢でいっぱい」に見えますよ。
写真
三浦
あ、そうですか。
糸井
うん、夢でいっぱいに見えますよ。
よくなることはもう、
絶対に必要十分条件でっていう。
そう思って会社をやってるんだろうなと
思えるから、おもしろいですよ。
三浦
そうですね、不安ですけど、
夢はいっぱいですね。
ぼく、あきれるほど夢だらけですね。
糸井
‥‥こんなところかな?(笑)
田中
(ほぼ日)
はい。今日はおふたりとも
本当にありがとうございました。
三浦
大丈夫ですか?
撮れ高、ありました?
田中
(ほぼ日)
もちろんです(笑)。
いつもは出ないような話題が
たくさん聞けて面白かったです。
三浦
糸井さん、今日は本当に
ありがとうございました。
糸井
いえいえ、こちらこそ。
ありがとうね。
(おしまいです。

お読みいただき、ありがとうございました!)
2020-06-23-TUE
対談内で登場する、
GO三浦崇宏さんの最初の本
写真
『言語化力』

三浦崇宏 著

(2020年、SBクリエイティブ)



GOの三浦さんが、これまで考えたり
学んだりしてきた
「言葉をうまく使うための方法」を、
自らのエピソードをたっぷり交えつつ
紹介している一冊です。



ただ、メインは方法論でありつつも、
あちこちに見え隠れする
三浦さんのキャラクターが
魅力的な本でもあります。



熱くて、押しが強めで、夢いっぱい。
乱暴さと繊細さの両方が感じられます。
途中途中で「名言」として紹介される
さまざまな言葉には、
歴史的な偉人のものもありますが、
三浦さんが敬愛する
日本人ラッパーの歌詞があったり、
元恋人のセリフが混じっていたり‥‥。



メインテーマ「だけじゃない」部分まで
おもしろい本で、この感じが好きな人は
確実にいると思います。
ピンときたら、ぜひ読んでみてください。