ほぼ日に載るものとしては、
ちょっとめずらしい対談をご紹介します。
コロナウィルス感染症に関する
緊急事態宣言発令前の2020年2月、
「あらゆる変化と挑戦にコミットする」
をミッションに掲げる広告会社
The Breakthrough Company GOの
若き代表・三浦崇宏さんが、
糸井重里に会いに来てくださいました。
「広告」という共通点はあっても、
年齢、スタンス、選ぶ表現など、
ずいぶん違いの多いふたり。
もし会ったら、どんな話になるんだろう?
そんな思いからおこなわれた対談は、
三浦さんが持ち前の熱い口調で
糸井に広告や会社の話を聞いていく、
元気なおしゃべりになりました。
- 三浦
- ほぼ日は、上場するまで
何年ですか?
- 糸井
- 準備は10年近くやってましたよ。
「上場しないこともあると思います」
と言いながら、証券会社の人と
付き合ってたんです。
「レールが引かれたからそのまま行く」
というのは嫌だから。
- 三浦
- わかります、そうですよね。
- 糸井
- 自分たちでも納得して、
「さあ、ここからは行くぞ」と思ってからは
2年ぐらいやってたかな。
しなかったほうがよかった理由は、
まだぼくにはちょっとわからないですね。
三浦さんのところのGOもきっと、
そういうことになるんじゃないですか。
- 三浦
- そこはもうずっと悩んでます。
そういう方向もあるのか、ないのか。
「したほうがいいんだろうな」とか、
「どういう意味があるんだっけ」とか。
「変化と挑戦」ってこともあるんですけど、
ぼくはやっぱり
クリエイターという商売に
夢を与えたいなと思っているので。
ちょっとおこがましいんですけど。
「コンサルタントや銀行員とはまた違う
カッコいい職業があるよ」
って広めたいなと思うんで。
そうするとやっぱり上場なのかなとか。
でも、
「会社が自分のものじゃなくなることが
はたしていいんだっけ?」
とかはよく話してますね。
- 糸井
- 上場しようがするまいが、
「自分のもの」みたいな所有の感覚は、
そのうちなくなりますよ。
自分が思ったように動けるものじゃないから。
- 三浦
- 正直、もういまでもそうです(笑)。
社長というのがこんなに
社員に気をつかわなきゃいけない立場だとは、
わかってなかったです。
- 糸井
- それたぶん今後、いま思ってる
8倍ぐらい気を遣いますよ(笑)。
いまの状態で言ってるようじゃ。
- 三浦
- ああ‥‥きっとそうですよね。
これから先ですね。
いまぼく、もう会社でいちばん
ちっちゃくなっているんです。
それでも「偉そうだ」って
言われるんだから、度しがたいです。
- 糸井
- やっぱり偉そうなんじゃない?(笑)
- 三浦
- そうなんでしょうねえ‥‥。
- 糸井
- 吹くね(笑)。
- 三浦
- いま経営者3年目ですけど、
この間も社員と、もうひとりの役員と、
投資家の方と、
「最近どうですか」みたいな話をしてたんです。
そのときにぼくが
「ぼく自身、やっぱり経営者としての
自覚が出てきたんで、
いろいろ考えるようになりました」
という話をしてたんです。
「ただ、自分のクリエイターとしての
姿勢を核にはじまった会社なんで、
自分がいまここまでちいさくなってることが、
はたして会社にとっていいことなのかどうか
悩んでるんです」
みたいなことを言ったら、
隣にいたもう一人の役員に
「バカかおまえ。誰ひとりおまえのこと、
ちっちゃくなってると思ってないぞ」
って。
- 糸井
- (笑)そうだろうね、ぼくもそう思うわ。
- 三浦
- ちっちゃくやってるつもりなんですけど、
もっとなんでしょうね。
- 糸井
- それ、ジャイアンのセリフだよ(笑)。
- 三浦
- そうなんでしょうねえ‥‥(笑)。
- 糸井
- ジャイアンにインタビューしたら、
「こうやってのび太とかに気を遣ってるのが
もうバカらしいんですよ。
さあ、一曲歌いましょう!」みたいな。
- 三浦
- 糸井さんは、いつから気を遣うように
なりましたか?
- 糸井
- 最初の、アシスタントが1人だったときから、
ずっと気を遣ってますよ。
「その人が楽しくいられますように」って。
- 三浦
- そういうふうに生きていくしかないですね。
経営者である以上は。
- 糸井
- つまり会社って、自分にできないことを
みんなにやってもらってるってことだから。
奥さんにも気を遣うように、
一緒にやってくために必要なものですよ。
まあ、だからみんなキャバクラに
行ったりするのかもね。
「気を遣われたい!」とかって(笑)。
- 三浦
- でもぼく、たぶんキャバクラ行っても
サービスしちゃうんですよね。
がんばっておもしろい話をして。
ぼく、キャバクラってほんと行かないんですけど。
お酒が飲めないから、楽しくないんですよ。
- 糸井
- ぼくも飲めないんですよ。
- 三浦
- あ、お酒飲めないんですか。
じゃあどうしてるんですか?
- 糸井
- あ、いや、そもそも
キャバクラに行く機会がないけど(笑)。
でも大昔に行ったときは、
それはそれでおもしろかったよ。
年の離れた人がそこから帰らない
というだけで、すごいものだなあと。
- 三浦
- ぼく「なにしてるんだろう?」っていう
気分になっちゃうんですよね。
なんで俺、目の前にいるのが
きれいな女性ってだけで、
わざわざ自己紹介して、
おもしろい話で場を盛り上げようと
してんだろうなって。
- 糸井
- その女の子たちも「自分の環境」だからさ。
環境をおもしろくするんだと思って(笑)。
- 三浦
- 受け入れなきゃいけないんですかね。
ほんっとに苦手なんですよ、キャバクラ(笑)。
「なんだろう、これ」
って思っちゃうんですよね‥‥。
- 糸井
- そこもジャイアンなんじゃない?
- 三浦
- そうでしょうねえ。
気を遣っちゃうんですよねえ。
気を遣うジャイアン。
- 糸井
- ジャイアンも気遣いますよ。
ほんとにやっていこうと思ったら。
漫画ではそんなに描かれてないけど、
ほんとにジャイアンやるのって、大変ですよ。
- 三浦
- いや、そうなんですよ。
リサイタルも人集めなきゃいけないし。
たぶん「ちょっと下手だ」ってことぐらい
自分で気がついてますからね。
「下手かもしんないな」と思いながら、
歌ってますからね。
- 糸井
- ネットで強気の三浦さんが
会社の人と一緒にインタビューを
受けてるみたいな記事があったよね。
あれとか見てると、
まだまだこれからいろんなことが
起こるんだろうなあと思っておもしろい。
- 三浦
- (笑)いやもう、ぼく、
未熟が服着て歩いてるようなもんですから。
- 糸井
- いやあ、未熟っていうか、
「夢でいっぱい」に見えますよ。
- 三浦
- あ、そうですか。
- 糸井
- うん、夢でいっぱいに見えますよ。
よくなることはもう、
絶対に必要十分条件でっていう。
そう思って会社をやってるんだろうなと
思えるから、おもしろいですよ。
- 三浦
- そうですね、不安ですけど、
夢はいっぱいですね。
ぼく、あきれるほど夢だらけですね。
- 糸井
- ‥‥こんなところかな?(笑)
- 田中
(ほぼ日)
- はい。今日はおふたりとも
本当にありがとうございました。
- 三浦
- 大丈夫ですか?
撮れ高、ありました?
- 田中
(ほぼ日)
- もちろんです(笑)。
いつもは出ないような話題が
たくさん聞けて面白かったです。
- 三浦
- 糸井さん、今日は本当に
ありがとうございました。
- 糸井
- いえいえ、こちらこそ。
ありがとうね。
(おしまいです。
お読みいただき、ありがとうございました!)
2020-06-23-TUE
対談内で登場する、
GO三浦崇宏さんの最初の本
『言語化力』
三浦崇宏 著
(2020年、SBクリエイティブ)
GOの三浦さんが、これまで考えたり
学んだりしてきた
「言葉をうまく使うための方法」を、
自らのエピソードをたっぷり交えつつ
紹介している一冊です。
ただ、メインは方法論でありつつも、
あちこちに見え隠れする
三浦さんのキャラクターが
魅力的な本でもあります。
熱くて、押しが強めで、夢いっぱい。
乱暴さと繊細さの両方が感じられます。
途中途中で「名言」として紹介される
さまざまな言葉には、
歴史的な偉人のものもありますが、
三浦さんが敬愛する
日本人ラッパーの歌詞があったり、
元恋人のセリフが混じっていたり‥‥。
メインテーマ「だけじゃない」部分まで
おもしろい本で、この感じが好きな人は
確実にいると思います。
ピンときたら、ぜひ読んでみてください。
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN