とんでもない、原丈人さん。 次の時代のヒントは、この人のなかに?  第3部 「XVD」と「吉本隆明」を組み合わせ、 「スピルリナ計画」の難題を解決し、 「世界一の鉄道博物館」を建てるという話

第4回 あとから、みんなが

去年(2007年)の秋くらいだったかな?

原さんと初めてお会いして、それ以来、
「とんでもない話」を
いろいろとお聞きしてきたんですけど‥‥。

ええ(笑)。
今だから白状しますけれどね‥‥
正直なところ、
はじめは気が乗らなかったんですよ。
わたしと会うの?
だって、ベンチャーキャピタリストという
肩書からして、はやい話が
「アメリカで、アメリカ型の経済法則の下で
 活躍しているお金持ちでしょ?」‥‥って、
原さんのことを知らない
大勢の人と同じような先入観があったんです。
よく誤解されるんです。

だから
ベンチャーキャピタルなどという職業だと
あまり言いたくないのですよ。
単に「事業家」のほうが
わかりやすいように思っています。

で、会って話してみたら、ぜんぜん違った。

とくに、経済に対する考えかたなんて
アメリカ型の株主資本主義の思想とは正反対でしたし。

そうですね。
それ以来、原さんのやってらっしゃることに
ずっと興味を持ち続けてきたんですけど、
それってたぶん、
原さんのことを「うまく整理できないから」なんです。
整理できない。

だって、細かい部分を掘り下げていったら
いくらでも豊かに湧いてくるし、
逆に、大きな物語を語らせたら、どこまでも大きい。

ミクロとマクロのあいだの往復運動を
しょっちゅうやってる人なんです、原さんって。

そう‥‥ですかね。

ふつうの人には、ちょっと、できないです。

ぼくらはまず「あいうえお」から覚えたり、
「ドッグとは犬である」とか、
そんなところからしか、始まれないからね。

うーん。
なんといったらいいのか‥‥
あなたのような人は、そんなにはいない!(笑)
じゃ‥‥コツコツやろうかな(笑)。
で、いないおかげで「おもしろい」んですけど、
いないおかげで
「わかってもらわれにくい」ともいえるんです。
それは、そうかもしれない。

はっきり言ってしまって恐縮ですが、
経済誌などの専門的なメディアに出ている
原さんのインタビュー記事を読むかぎり、
「原さんのおもしろさ」とか
「原さんの考えのスケールの大きさ」が
じゅうぶんには、
伝わりきってないなぁという気がします。

とくに、ぼくら「ふつうの人」に対して。

そうでしょうか。
テレビなんかには、あまりお出にならない?

そうですね、テレビについてはですね、
1997年だったかな、
ある討論番組に出たことがあるんですよ。

そのとき、大学の教授なんかも一緒だったんですが、
当時はまだ「社外取締役」という概念が通じなくて。

え、その大学の先生にも?
「社外の人が、なんで取締役なんだ?」と。
‥‥たったの10年前ですよね。
そのとき、わたしは、当時の世界第2位、
IT関係ではマイクロソフトの次に大きかった
ボーランドという会社の社外役員でね。
ああ‥‥たしか、あのビル・ゲイツが
恐れをなしていたとかいう会社ですね。
その会社のCEOを解任してるんです、わたし。
社外取締役として。
ほう。
でも、そんな話をしてみても、
「外部からやってきた、一介の取締役が、
 なんで社長を解任できるんだ?」と。

純粋に、フシギだったんでしょうね。

当時の日本じゃ、
そんなこと、身のまわりで起きないから。

まったく、わかってもらえなかった。

で、日本のマスコミってこんなもんかと
思っちゃったのかも。

まぁ、それは無理もない気がしますけどね。

ましてや「会社は株主のものである」という
主流の経済学者の主張とか、
「そうじゃないんだ」という原さんの反論なんて、
雲をつかむような話だったでしょうし。

この先、アメリカの金融資本主義が
破綻したりすれば、
今よりもっと、
わかってもらえるのかもしれないけどね。

※この対談は2008年6月に行われました。

たぶん、何よりわからないのは、
原さんという人の「存在と動機」だと思う。
というと?
この人はいったい、どういう立場の人で、
なんで、こんなにいろいろ難しそうなことにばかり
チャレンジしてるんだ? ‥‥って。
ああ(笑)。

で、その原さんの「存在と動機」って、
こうやって、何日もかけて知ろうとしないかぎり、
わからないと思うんです、なかなか。

それこそ「鉄道模型」あたりから始めないと。

そんなことするの、糸井さんだけだから(笑)。
まぁ、そうなんでしょうけど(笑)。
わたしの原動力はね、「おもしろいから」。
ええ。
ゼロからつくりあげていくことが、おもしろい。
鉄道模型の話から聞いてればスッとわかります。

もちろん、困難もあるんだけど、
でも、
バングラデシュも、スピルリナも、ぜんぶ同じ。

ゼロからつくりあげていくことの
おもしろさ、なんです。

つまり「レールを敷いてきた」んですよ。
レール?

うん。

ついて来られるようにしてるんです。
あとから、みんなが。

<続きます!>
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2008-10-23-THU