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ほぼ日 |
さて、どうでしょう、
タナカカツキさんは
どんな柄のハラマキがほしいですか? |
タナカ |
うん。
ぼくね、ひとつ、
これはほんまにつくりたいと思ってるのが、
大木(たいぼく)って、触るとあたたかいでしょ。 |
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ほぼ日 |
大木。
はい、ぬくもりを感じますよね。 |
タナカ |
なにかこう、
エネルギーをいただけるような、ね。 |
ほぼ日 |
ええ。 |
タナカ |
やっぱり人間は、
「木みたいな存在」っていうのが
到達点としてあるじゃないですか。 |
ほぼ日 |
‥‥それはどういう? |
タナカ |
巨木のようになりたい。 |
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ほぼ日 |
巨木に。 |
タナカ |
木肌。
やっぱ、木目。 |
ほぼ日 |
木目‥‥?
木目のハラマキということですか。 |
タナカ |
そうそう。
ハラマキで、
自分が完全な「樹」になるような。 |
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ほぼ日 |
「木」っていうのは、
「樹」のほうですね、「大樹」の「樹」。 |
タナカ |
ええ、大樹です。 |
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ほぼ日 |
そういえば今日の洋服もグリーンですね。 |
タナカ |
そうなの。
グリーン、緑、自然、樹。 |
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ほぼ日 |
はい。 |
タナカ |
やっぱり年齢を重ねるごとに
人間は樹に近寄ってるじゃないですか。 |
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ほぼ日 |
樹に。 |
タナカ |
年輪という言い方もするしね。 |
ほぼ日 |
はい、はい。 |
タナカ |
しわくちゃになってきて、枝っぽくなってくる。 |
ほぼ日 |
ああ‥‥。 |
タナカ |
やせてカリカリになって、
杖を持ったりすると、
もう、どこまでが杖だろう。 |
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ほぼ日 |
境目がわからない。 |
タナカ |
杖なのか、枝なのか。 |
ほぼ日 |
ああー。 |
タナカ |
動きもね、樹に向かってるんですよ。
どんどんすくなくなってきて。
やっぱね、樹はほーんま、憧れなんですよね。 |
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ほぼ日 |
憧れですか。 |
タナカ |
そこを目指すべく、
毎日、規則正しい生活をすることから
やってるんですよ、ぼくは。 |
ほぼ日 |
最近はそうなんですね。 |
タナカ |
そうなんです。 |
ほぼ日 |
夜更かしとかしない? |
タナカ |
結婚して子どもが生まれて
自動的にそうなったんですけど、
やはりいいもんだなあと思ってね。 |
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ほぼ日 |
規則正しくて静かな生活が。 |
タナカ |
そう。いいもんだなあと。
ほんで、そうやって生活してると
いろいろわかることがあるんです。 |
ほぼ日 |
それは、どういう? |
タナカ |
昔はね、
「何か刺激的なことが起こんねえかなあ」
「今日もいろんな出会いがあって、
思いがけないことが起こんねえかなあ」
と思って出かけてたわけじゃないですか。
自分の知らないところに行ったりね。
とにかく新しいことをしたいと。
「繰り返しは悪だ」みたいな。 |
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ほぼ日 |
刺激を求めて。 |
タナカ |
青春てそうやと思うんですよ。
そやけど、年相応に、
もう刺激は要らなくなってきたんですよね。 |
ほぼ日 |
刺激は要らない。 |
タナカ |
「刺激? つまんねえなあ」って。 |
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ほぼ日 |
(笑) |
タナカ |
ただね、周りが変化していく姿は
すごくたのしいんですよ。
自分が毎日同じことをやって
あちこち動かなくなると、
周りがよく見えるようになるの。 |
ほぼ日 |
へえー。 |
タナカ |
だから、定点観測。
定点観測できるようになったんです。
いつもと同じ時間に起きて、
「あ、今日は昨日より明るい」とか。 |
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ほぼ日 |
ああー、はい。 |
タナカ |
「あ、緑が色づいた」とかね。 |
ほぼ日 |
なるほど。 |
タナカ |
自分が止まってるから、
めっちゃ周りが動いてることがわかって。
そんで、
「この感じは樹だ」
と思ったんです。ええ。 |
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ほぼ日 |
そうですかぁ。
いや、最初は、
どんなおもしろいお話になるんだろうと
うかがっていたんですが、
どうやら、その、本気なようで。 |
タナカ |
本気です。
樹になりたい。
樹に近寄っていきたいんです、ぼくは。 |
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(つづきます) |