- 糸井
- 犬にとっての一番の存在は、
やっぱり松本さんのお母さん?
- 松本
- お母さんです。
もう母には絶対服従です。
- 糸井
- そもそも犬を「飼おう」と言ったのは?
- 松本
- それも母です。
はじめは私が猫を拾ってきたんです。
その猫がまだちっちゃくて
かわいい仔猫だったから、
それを見ていた母が
無性に「仔犬」がほしくなったみたいで。
- 糸井
- 仔猫を見て、仔犬が飼いたくなった(笑)。
- 松本
- 母は犬派なんです。
私が仔猫をかわいがってるのを見て
「だったら、私も飼いますけど」
って対抗心を(笑)。
- 糸井
- マンガのなかのお母さんは、
たまに出てくるだけですよね。
でも、この家のルールとか、
そこに流れる空気をつくっているのは、
やっぱりお母さんなんだろうなあ。
それは読んでいて感じます。
- 松本
- そうかもしれないですね。
私は「犬は家族」と思うタイプなんですが、
母は「犬は犬、人は人」みたいに、
序列をしっかり守る人なんです。
犬にとってもそのほうが
快適だという説もあるそうで。
だから家では母が一番。
私は犬にも猫にもなめられっぱなしです。
- 糸井
- 犬が「家族」になったのって、
そんなに昔のことじゃないですからね。
- 松本
- たぶんそうですよね。
私が子どものときは、
外で犬を飼うのが当たり前でした。
犬にもあまり自我がなかった気がするし。
反対に最近の犬は
すごく自我があるように感じますね。
- 糸井
- その自我というのは、
きっと、人間が設定したんでしょうね。
- 松本
- あぁ、人間が。そうですね。
- 糸井
- このマンガのこの犬は、
その自我があるなしのところを
ユラユラしてますよね。
- 松本
- そうです、そうです。
- 糸井
- 大きくなっても名前で呼ばれてないし、
本人もずっと「ぼく、犬です」って言ってる。
- 松本
- はい。
- 糸井
- 犬は自分の一人称を「犬」と言うけど、
不思議と猫は「猫は‥‥」とは言わないね。
- 松本
- 言わないですね。
猫は「概念」みたいな感じなのかな。
- 糸井
- 「概念」がいる(笑)。
- 松本
- ただ「生きている」というか(笑)。
- 糸井
- このマンガにとっては、
そのちがいもおもしろいですよね。
それに犬はよく笑うでしょう。
こんなに笑顔を描かれた犬って、
世界的にも初めてじゃない?
- 松本
- えぇ、どうだろう(笑)?
でも、ほんとによく笑うんです。
猫はそうでもないんですけど。
- 松本
- 糸井さんとこのブイコちゃんも
よく笑うコですよね。
- 糸井
- よく笑ってますね。
いまね、ブイコとぼくとの関係は
「かまれたい」なんです。
- 松本
- 「かまれたい」?
- 糸井
- いまブイコは、ぼくが口を開けると、
ぼくの口の中に顔を入れようとする。
- 松本
- すごい(笑)。
- 糸井
- それをうちのカミさんが
「見てられない‥‥」って(笑)。
- 一同
- (笑)
- 松本
- 糸井さんの口の中に入るとき、
ブイコちゃんの歯はどうなるんですか?
- 糸井
- 向こうの歯は、まず、ものすごく出します。
- 松本
- あぁ、イーってやってる。
- 糸井
- はじめは「かみあい」みたいに見えるんだけど、
やってることは「なめあい」なんですよね。
でもね、それをずっと
つづけていいのかがわかんなくて。
そろそろやめたほうがいいのかなぁ。
- 松本
- でも、なくなったらちょっと寂しいですね。
- 糸井
- そうなんですよね。
ぼくが口を開きさえすれば、
ブイコはすぐに飛んできますからね。
- 松本
- あははは。かわいいなぁー。
2019-07-13-SAT