- 糸井
- そろそろ時間のようなので、
きょうはこのくらいにしましょうか。
- 松本
- どうもありがとうございました。
- 糸井
- いやぁ、おもしろかったです。
ありがとうございました。
- 松本
- そうだ、糸井さん。
- 糸井
- はい?
- 松本
- 対談の内容とは関係ない話なんですが、
糸井さんにお会いしたら、
ずっと言いたいことがあったんです。
- 糸井
- なんでしょう?
- 松本
- 私、1998年の「少年ジャンプ」の
赤塚賞に応募したときに、
最終候補の何点かに入ったんですが、
そこで糸井さんが私のマンガに
コメントをつけてくれていて‥‥。
- 糸井
- え‥‥、えぇぇーー!!
ゲフッ、ゲフンッ!
おどろいて咳が出ちゃった。
- 松本
- その頃、糸井さん、
赤塚賞の審査委員をやられてましたよね。
- 糸井
- ‥‥はい。
- 松本
- それから21年後に、
まさかこうして糸井さんにマンガを
読んでもらえるなんて(笑)。
- 一同
- わぁーーー(拍手)!
- 糸井
- そんとき、いくつだったの?
- 松本
- たしか、中学三年生でした。
- 糸井
- はーーー!
- 松本
- そのとき糸井さんからは
「もっとアイデアを出してください」という
コメントをいただきました。
- 糸井
- はぁぁ、そうでしたか。
いや、自分で言うのもヘンだけど、
それ、ちゃんとしたコメントですね。
- 松本
- そうなんですか。
- 糸井
- 赤塚賞の審査ってけっこう大変で、
すでにアシスタントをやってる人や、
絵をほめられてる人の応募が多いんです。
だから絵はすごく描けてるんだけど、
いちばん足りないのが「アイデア」で。
- 松本
- あぁ‥‥。
- 糸井
- どの人にも当てはまることなんだけど、
「そんなに絵が描けるんだったら、
もっとアイデアを出そうよ」
というきもちがあったんだと思います。
- 松本
- 赤塚賞の審査って、
全部ちゃんと読むんですか。
- 糸井
- ある程度、編集部が選んだものが届くんですが、
ぼくはちゃんと見てましたよ。
- 松本
- すごい量なんですよね。
- 糸井
- すごい量でしたね。
ぼくは「いい人を落としたくない」という
きもちがすごく強かったんです。
本職の広告の審査員のときも、
ぼくが推薦しなかったら落選してた人が、
そのあと才能を認められて、
すごい人になったというのがあります。
それはぼくのちょっとした自慢(笑)。
- 松本
- へぇーー。
- 糸井
- でも、中学生がいるとは思わなかったなー。
もしかしたら編集の人が
「この子は中学生です」とか
言ったかもしれないけどね。
- 松本
- すごく下手くそだったんで。
- 糸井
- そこまで残ってるのがすごいよ。
そもそも赤塚賞の応募するのって、
女の子はかなり少ないですよ。
- 松本
- なので男の子の名前で応募したんです。
- 糸井
- はーー。
- 松本
- 年もひとつ上にサバを読んで、
ウソばっかりついてました(笑)。
高校生の男の子にふんして送ってました。
- 糸井
- もう、そのこと自体がすごいね。
なんでそんなこと考えられるんだろう。
なんか、猫みたいだね(笑)。
- 松本
- たくさん策を講じて(笑)。
まあ、マンガは下手だったんですけど。
- 糸井
- 審査員が見るところまで行くのは、
めちゃくちゃ大変なことですよ。
じゃあ、そこまで行ったということは、
編集者がついたんですよね、きっと。
- 松本
- そのときはビビっちゃって、
「無理です、無理です」って言って
断っちゃったんです。
「まだ学生なんで、マンガとか描けないです」って。
なんで応募したって感じですよね(笑)。
- 糸井
- サバを読んでまで応募したのに。
- 松本
- ほんとそうですよね(笑)。
当時の雑誌を持ってこようと思ったんですけど、
手に持つだけでバラバラになりそうだったので、
スマホで写真をとってきたんです。
- 糸井
- 見せて、見せて。
- 松本
- ええっと、あぁ、これです。
- 糸井
- えぇ、どれどれ。
ああー、ほんとだ。ぼくのコメントだ。
- 松本
- これをまさかこうやって
見せる日が来るなんて(笑)。
- 糸井
- 作風はちょっと和田ラヂヲさんみたい。
- 松本
- あぁ、そうです。
この頃くらいからすごくハマってました。
- 糸井
- ラヂヲさんも観察の人だもんね。
いやぁー、すごい。
ありがとうございました。
松本さんの他のマンガも
ちゃんと見させてもらいますね。
ぼくは知らなさすぎたから。
- 松本
- でも、このマンガから
入ってもらえたのは、
私としてもうれしいです。
いちばん素が出てるマンガなので。
- 糸井
- そうでしたか。
いやー、びっくりしました。
教えてくれてありがとうございました。
これからもよろしくお願いします。
- 松本
- はい、ありがとうございました。
犬猫エピソードは引きつづき募集中です。
みなさんのご応募、お待ちしております!)
2019-07-19-FRI