- 糸井
- (猫を飼ってる乗組員Sに)
猫派の人はどう思うの、これを読んで。
- 乗組員S
- 私はこのマンガ、
完全に「猫かわいいね」という
話だと思っていました。
犬は引き立て役で、
「結局は猫好きのためのマンガだよね」
みたいなことを言ったら、
みんなから「全然ちがう」って
全否定されました(笑)。
- 糸井
- あのさ、そんなヤツいないよ(笑)。
- 松本
- あははは。
- 糸井
- でも、そっちの犬派の乗組員なんて、
猫のページなんか読んでないと思うよ。
- 乗組員R
- そんなことないです(笑)!
もちろん猫もかわいいんですけど、
私は犬が大好きなので、
犬の絵はなめるように見てます。
- 松本
- うれしいです。
- 乗組員R
- ひで吉さんの絵は、
犬の表情をすこしずつ描きわけたりして、
ほんとに全部かわいいんです。
見てるだけで幸せになります。
「はぁぁ、かわいいなぁ」って(笑)。
- 松本
- ありがとうございます。
私もそういう気持ちで描いてます(笑)。
- 乗組員R
- ネタはいつもメモしてるんですか?
毎週きちんとマンガを更新されてるから、
けっこう描きためているのかなって‥‥。
- 松本
- ネタは気づいた瞬間に
メモをするようにしてます。
いつもその週にあったことを土曜日に描いて、
日曜日の午前中にアップするんです。
- 糸井
- へぇーー。
そういうの、まじめにやるんだね。
- 松本
- はい、まじめに。ふふふふ。
- 糸井
- その安定した川の流れが、
このマンガを描かせてるんですね。
それは、いい性格でしたね。
- 松本
- 私、それくらいしかできないので。
おもしろいネタを描くとか、
バズることはできないけど、
毎週描くことなら自分でもできる。
- 糸井
- それは、ぼくが「今日のダーリン」の
原稿を毎日書いてる理由と似てますね。
- 松本
- いえいえ。毎日はすごいと思います。
- 糸井
- 毎日眠いですからね。
毎日ネタないって思ってるし(笑)。
- 松本
- いつもおもしろいし、かわらないし。
ほんとすごいです。
- 糸井
- それからきょうお会いして、
やっぱり意外だったのは、
作者の感じがぼくが思っていたような人とは
ちがったところかな。
- 松本
- ちがいましたか。
- 糸井
- 最初にも言いましたが、
ぼくはもっとベテランの人だと思ってました。
このマンガに出てくる作者は
けっこう無邪気なタイプだけど、
ほんとうはベテランなんじゃないかと思ってた。
作者の存在を消してるところも、
うまいなあと感心してたんです。
- 松本
- あぁ、そうですね。
作者の要素は入れてないです。
- 糸井
- ものすごく自分を消してますよね。
- 松本
- それはけっこう意識してます。
犬や猫のことでも、
読んでて気が散らないように、
いろいろ削ってるような気がします。
- 糸井
- そのなかでも、
いちばん削ってるのは作者だと思うな。
- 松本
- そうですね。
- 糸井
- その辺、いま思えばプロじゃなきゃ
できない仕事なんですよね。
ササッと描いて急に人気になった人は、
自分がもっと出ちゃう気がする。
- 松本
- ああ、なるほど。
- 糸井
- いまから先のことを言うのもヘンですが、
いくら描いてもお客さんは待ってますから。
- 松本
- ありがたいです。
- 糸井
- うしろ姿1枚でも待ってますので、
いつでも描いてくださいね。
- 松本
- ありがとうございます。
いまのところネタは尽きないので、
ひきつづき描きます。
- 糸井
- それをはっきり言う人って、
あんまりいないですよね。
「ネタを探すのが大変です」って、
だいたいの人は言うと思う。
- 松本
- そうなると思っていたんですけど、
案外そうならなくて。
- 糸井
- これだけ描いていると、
やっぱり自分自身もかわってくると思う。
作者自身もおもしろいものに
なっていくんじゃないかなあ。
- 松本
- ひとまず自分は、
いまのライブ感がたのしくて
描いてるような気がします。
先週あったことをマンガにすると、
みんなが「うちも同じ」とか、
すぐに反応してくれるので。
その一体感がたのしくて。
- 糸井
- ふつうの人は
「あの頃はこんなことをしてた」
というのが写真で残るんだけど、
漫画家はマンガで残るんだね。
- 松本
- ほんと、そうですね。
ここに描いてあることは、
全部実際にあったことなので、
読み返すとそのときのことを
思い出しちゃいます。
2019-07-18-THU