ピサロのチラシや
看板に使われているのは、
泥まみれの渡辺謙さんの顔の超アップ。
インパクトあるなあ‥‥とは思っていたのですが、
実際に舞台を観て、
あのビジュアルに納得しました。
渡辺謙さんの”顔力”の強さ!
(私はそれほどステージに近い席ではなかったのですが、
それでも伝わってくるんですよ、
あの迫力はなんでしょうか)
『ピサロ』という作品は、
荒くれ者のスペイン将軍・ピサロが
インカ帝国を征服する話です。
いまから35年前(!)の1985年、
パルコ劇場でこの作品が上演されたとき、
ピサロを演じたのは山崎努さん。
そして、ピサロに捕らえられる
インカ帝国の若き王、アタワルパを演じたのが
渡辺謙さんでした。
35年たって、渡辺謙さんがピサロに。
そして今回アタワルパを演じたのは
宮沢氷魚さん。
しなやかで美しい身体、威厳のある話し方。
敵であったはずの粗野なピサロが
しだいにこの高貴なアタワルパに
魅入られていくのです。
これまでたくさんの経験をしてきたはずの
年上のピサロが、
スペインの人から見れば
荒唐無稽なことばかり言っている
この若き王に夢中になるーー。
そのようすが自然に受け入れられるのは、
ピサロのまっすぐさ、アタワルパの気高さが
見えるからだと思います。
まったく違う文化に遭遇したとき、
どう受け止めるのか?
信仰とは?
生きるとは?
そして、受け継ぐこととは‥‥?
新しい劇場のオープニングにふさわしい名作、
35年後、もしかしたら
宮沢氷魚さんのピサロが
観られるのかもしれません。
パルコ劇場は
サーモグラフィでの体温計測、
手指の消毒も徹底されていて、
安心して観劇することができました。
中庭ができていて、
休憩時間には外の空気が吸えるのも
これまでにない開放感があってよかったですよ。