私の手元に、神保町の古本市で買った
江戸時代の本が二冊並んでいます。
まだ始めたての、私のささやかなコレクション。
このコレクションの使い道について、ふと考えてみます。
友人に見せたり、
詳しい人にその価値を聞いてみたり、
やっぱり自分で開いて眺めてみたり‥‥。
そんな感じでしょうか。なかなか楽しい行為です。
私の薄いお財布が許してくれるコレクションでさえ、
毎日をちょっとだけ楽しくしてくれる力があります。
それが王様のようなえらい人のコレクションともなれば‥‥
見せる友人の人数は段違い。
見る人々を楽しくする効果も
とんでもなく大きなものになるのだと思います。
「ボストン美術館展 芸術×力」は、
アメリカ・ボストン美術館から、
古今東西の権力者たちが手にしていた
美術品が集まる展覧会です。
4/16から東京都美術館で開催される予定でしたが、
新型ウイルスの影響により、
残念ながら中止となってしまいました。
作品に間近でお目にかかることが
できなくなってしまったのは無念ですが、
展覧会公式サイトで
一部の作品を画像で見ることができます。
こうした情報を手がかりに、
実際に開催されていたらどんな展覧会だったのか、
想像を膨らませてみようと思います。
さあ、会場に入ります‥‥。
最初のチャプターで目を引くのは、
赤みがかった岩に彫られた、男の上半身。
古代エジプトの王、ラムセス2世の像です。
もとは高さ3mほどの全身像だったと
考えられているそうで、
どっしりとした面構えとあいまって
彼の威厳が伝わってくるようです。すばらしい‥‥。
さて、展覧会を半分ほど進んできました。
会場のスポットライトに照らされて
緑色に光るものが目に飛び込んできます。
あれは、アメリカの大富豪、
マージョリー・メリウェザー・ポストのために
仕立てられた宝石のブローチ。
十七世紀のインドで彫られた植物文様が、
宝石のきらびやかな輝きにエレガントさを加えています。
そして、ボストン美術館といえば日本美術の殿堂。
今回も日本の名品が海を渡ってやってきました。
中でも私の一押しは『吉備大臣入唐絵巻』。
それがいま、目の前に‥‥。
12世紀末(平安時代後期~鎌倉時代初期)に
描かれた絵巻であり、
日本にあれば国宝間違いなしの逸品です。
唐に渡った吉備真備が、
先に唐で亡くなった阿倍仲麻呂の霊に助けられて
難題を解決していくという
痛快なストーリーが描かれています。
画面のポップさがまた面白い。
二人が空を飛ぶシーンには
漫画みたいなおかしさがあります。
古い美術といえば縁遠い印象を持ちがちですが、
こんなふうに「単純に面白い」絵巻もあるのです。
幻の国宝、すばらしい‥‥。
と、妄想が止まらなくなるので、このあたりで。
考えるだけでわくわくしてくる、
ボストン美術館の傑作たち。
またいつか、海を越えて日本にやってきてくれる日を、
首を長くしてお待ちしております。
All photographs © Museum of Fine Arts, Boston