この展覧会のサブタイトルについている
「ときに川は橋となる」。
最初にみたとき、
どういうことだろう?
と答えを見つけられないでいました。
もう一度読んでみてください。
「ときに川は橋となる」。
橋は川を渡るためのもの、じゃないのか‥‥。
‥‥ときをさかのぼり、
私が人生でオラファー・エリアソンの作品を
体験したことがあるのは
おそらく3回です。
森美術館の展覧会「シンプルなかたち」で出会った
「丸い虹」は、
ゆらりゆらりと動く輪に光があたって
虹が生み出されていきます。
日食や月食をおもわせるようなうつくしさでした。
ふたつめは、金沢21世紀美術館のそとにある
「カラー・アクティビティ・ハウス」。
赤青黄の三原色がうずまきになっていて
どこから、どちらを見るか、
いつ、どんな天気のときに見るかで
全く違った色や風景にであいます。
最後に、群馬県渋川市にあるハラ・ミュージアム・アークの
「Sunspace for Shibukawa」。
なかに丸いプリズムレンズがあって、
太陽光がレンズを通して虹になっていきます。
一日のあらゆる時間、季節によって
見えるものが変わっていきます。
こうして思い返してみると、
オラファー・エリアソンの作品は
でんと構えて待っているというより
見方によって変化するものばかりです。
きまった正解があるわけではなく、
「この体験を通じてなにかを感じてくれたら、
考えてくれたらうれしいな」
とオラファーさんに言われているような気がします。
そして私は残念ながら、
オラファー・エリアソンの作品を
まとめて見た記憶がありません。
日本での個展は約10年ぶりになるそうです。
すでに東京都現代美術館には会場ができあがっているので
展示作品をいくつかご紹介します。
(あぁ、はやく訪れたい‥‥!)
ひとつの光が真ん中に、
そのまわりをもう一つの光がまわるのに伴って
壁や床、天井に反射した
キラキラも動いていきます。
まるで太陽とそのまわりを回る恒星のよう。
美術館の外に設置された
ソーラーパネルからエネルギーを得て
この作品はかがやいています。
お庭にホースで水やりをしたとき、
ふとした拍子に虹が見えると「ラッキー!」と
うれしくなりますよね。
でもいつのまにか見えなくなってたりします。
ここではその虹の世界にひたることができます。
ビューティーというタイトルどおり
きっとうつくしいことでしょう‥‥。
じぶんの目で、見たいです。
最後に、この展覧会のタイトルにもなっている新作
「ときに川は橋となる」です。
真ん中に水が張ってあり、
立つ波が上部のスクリーンに映されています。
規則性を感じさせない光です。
波と波が関係しあって偶然が重なっていきます。
「頭の中で知っていることは、
必ずしも行動に結びつきません。
体を通じての実感や個人的な体験こそが
行動につながっていく。」
環境問題を作品のテーマにもしている
オラファー・エリアソンのことばです。
二酸化炭素がこれだけたくさん出ていて、
何度気温が上昇していてたいへんです。
解決するにはこうしましょう。
と言われるより、
「じぶんで考えてみてね」
「見方を変えると今まで見えなかったものが見えるよ」
ときっかけを与えてくれるアーティスト。
オラファーの作品を見ていると
「私にも何かできるかも。
いや、何でもできるのかも。」
という気持ちになります。
そうか。
もしかしたら、
川を橋にすることだって、できるのかも。