私の好きな美術館の一つ、
サントリー美術館さんがリニューアルオープンしました!
ここを訪れるたびに「日本人でよかったなぁ」と思います。
ふだんの生活の中に美しさをみつけて楽しむ。
ずっと、ずっと昔から日本人が持っているセンスは
とってもステキだと思うことができるからです。
今回の展覧会でもサントリー美術館さんが大切にしている
「生活の中の美」を存分に楽しむことができました。
簪や、櫛、着物、徳利や盃など、生活を彩った品々と、
当時の人々の様子を描いた絵画が中心です。
さらにその中に、屏風の世界の再現展示のコーナーや、
現代作家さんとのコラボした展示など、
サントリー美術館で、はじめてみる試みが多くありました。
ところどころ登場する現代の作家さんの作品には、
その展示方法に驚かされました。
古典の作品も現代作家さんの作品も
同じウィンドウに、肩を並べて展示されていたからです。
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左:厩圖 山口晃 平成13年(2001)
高橋龍太郎コレクション
右:重要文化財 泰西王侯騎馬図屛風
桃山~江戸時代初期 17世紀初期
サントリー美術館
ついつい、古いものの方が価値のあるもの。
と決めつけて見てしまいますが、
今回の展示では時間ということに優越はありませんでした。
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左:今様遊楽圖 山口晃
平成12年(2000) 高橋龍太郎コレクション
右:正月風俗図屛風
江戸時代 17世紀 サントリー美術館
時代や作者で作品の価値が決まることは知っています。
けれど、作品鑑賞の一番大切なことは、
いろんな価値基準に縛られるのではなくて、
その作品そのものと自分がむきあうことだ。
と遠い昔に思ったことを思い出しました。
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誰が袖図屛風 六曲一双のうち左隻 江戸時代 17世紀
サントリー美術館
古くからある「誰が袖図」の手法で描かれた
(※誰が袖図とは、衣桁(いこう)や屏風に掛けられた着物を画面に配置した作品のことです)
山本太郎さんの「誰ヶ裾屛風」には、
平成時代の誰かの持ち物が描かれています。
その中は、自分が好きなブランドのカバンだと
思われるものが描かれていたこともあって、
この絵の主人公は、もしかしたら自分と似たような
暮らしをしている人なのかもしれないと思いました。
私と似た暮らしが描かれている作品を見ることを通して、
江戸期の屏風に描かれた人たちの暮らしも、
その当時は、なんてことない日々の一場面だったことを
想像することができました。
この展覧会での、私のイチオシの一品は
「銀太刀形変り簪」
江戸時代に作られた女性用の髪飾りで、
名前の通りに刀の形をしています。
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江戸時代 19世紀 サントリー美術館
必殺仕事人みたいでかっこいい!
これは、どんな人が使っていたんでしょう。
どんな人であっても、初めてこれを手にした瞬間は、
きっと、とてもいい顔をしたと思うのです。
何気げない日々に彩りを加える小さな工夫。
とてもさりげない、そのひと工夫ができるステキな人
だったような気がします。
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菊唐草蒔絵化粧具揃
江戸時代 18世紀前半 サントリー美術館
ほかにも展示室を彩る品々は、
むかし誰かが実際に使っていたものが並んでいます。
古典と現代の作品を行ったり来たりして見ることで、
私が、いま身につけている服や、アクセサリーも
数百年後に、美術品として美術館に展示される
可能性はゼロではないかも! と思えてきます。
あの簪の持ち主のように、日々を楽しむ心をもって、
身につけるものはいいものを持ちたいし、
その一つ一つを大切にしたい。と思います。
そして、あわよくば、
私の手にした物が、立派な美術館の、立派な展示ケースに
堂々と飾られる未来が来てほしい。
そんなことを考えて、一人ワクワクしました。