ほぼ日カルチャん

エキソニモ UN-DEAD-LINK アン・デッド・リンク インターネットアートへの再接続

ミュージアム

0107

「見えないものを見る」おもしろさを、ぜひ。

ゴッド

0107

エキソニモは、現在ニューヨークを拠点として活動する
千房けん輔と赤岩やえによる日本のアート・ユニット。
90年代からインターネットを軸に活動を始め、
さまざまな手法で実験的な作品を多く手掛がけています。
もし同時代にインターネットに親しんできた人であれば、
その作品を見たり触ったりしたことがあるかもしれません。

東京都写真美術館で行われている今回の展示では
ブラウザ、展示、映像、インスタレーションなどで
展開される作品が彼ら自身によってまとめられ、
多くの過去作と最新作を連続して見ることができます。
用意されたインターネット会場では、
オンライン作品と、
本展のために作成された年表が鑑賞できます。
「おお‥」「うひゃー」「ふふ」「‥マジか」
と思わず口に出してしまうような
独特の視点あふれる作品が、ギュッと集まりました。
おそらくこれらの作品を一気に見ることができる機会は、
この先なかなかありません。
インターネットやメディアアートが好き、
な人だったらもちろんのこと、
はじめてエキソニモを知る、という人にも
きっと何か新しい感覚を得ることができるので
おすすめします。ぜひ行ってほしいです。

たとえばこんな作品があります。

Natural Process (2004)

Googleのトップページをそっくり描いた
絵画作品《A Web Page》を展示室に設置。
会場に来た人たちの様子を含めて作品を撮影し、
その様子をWeb中継。
ネット上のかたちのないはずのものが
現実空間に絵画として存在し、
そしてまたそれを撮影した映像がネットに流れていく。

断末魔ウス (2007)

叩かれ、削られ、水没し、破壊されるマウス。
その断末の様子が
デスクトップ上のカーソルによって再現される。
マウスは二度と元に戻らないが、
カーソルはその動きを再現し続ける。

Spiritual Computing Series - 祈 (2009)

2つの光学式マウスを祈る手のように重ねると、
マウスの光が相互に干渉し、
画面上のカーソルが勝手に動き出す。
可視化される「祈り」のキセキ。

そして今年の作品《UN-DEAD-LINK 2020》。
ウイルスによって感染者や死者の数を見ることが
日常になったいま、そんな自分と世界との関係を
見つめなおすような気持ちになる作品です。
インターネット上でも展開され、
会場のQRコードから
スマートフォンなどでアクセスできます。

見終わったあと、
アホのような感想をぽろっと声に出してました。
「おもしろいな‥。」

この文章はこれを読んでいるあなたに
ぜひこの展示に行っていただきたい、という
おすすめのための文章なので、
どうにかしてこのおもしろさの理由を
なんとか言葉にしなければ意味がない、わけですが、
いったいぜんたいどうしたもんでしょうか。
なんでこの展示はおもしろいんだろう。
その理由をおもいきって言うならば、
エキソニモの作品を通してぼくたちは
「見えないものを見る」ことになります。
だからおもしろいのです。

目には見えない、
あるいは見てはいたけど知覚していなかった、
見ないことにしていた、存在や現象。
それらが
ほんとうは「あった」ことに気づかされ
あらためて考える時、
すこしこわいようでたしかにたのしい、
不思議な感覚をおぼえます。
ほんとうは「あった」こと。
ほんとうは「いる」もの。
ほんとうは「知っていた」こと。
ほんとうは「見ないようにしていた」こと。
ほんとうは、
ほんとうは、
ほんとうは。
ああおもしろい‥!

見ていく作品の制作年が今に近づけば近づくほど、
すんなり自分に入っていくような気がしました。
それはきっとアーティストが
その時代ごとの自分の感覚を
ていねいに作品に反映させているからでしょう。

「リアル」と「バーチャル」という言葉で、
あるいは「実」と「虚」という言葉で
とりあえず分けることにしていた世界も
その境界が曖昧になっています。
リアルで、実で、バーチャルで、虚。
それぞれが個別に成立しつつ、
ときに相互に関係しあい、補助しあって存在します。
そんな世界に立つじぶんが
いま何を見て、何を見ていないか
思わず気づかされてしまう作品たち。

恵比寿にある東京都写真美術館は、
写真と映像専門の公立美術館です。
おもに地下一階で開催されているエキソニモ展の他にも、
見ごたえのある展示が同時開催されていて、
それらを同時に観ることができる
少しお得なセット券もあります。
会期は2020年10月11日(日)まで。

あ、そうそう、エキソニモの作品は
前述のようにインターネット会場、
および2階ロビーにもあります。
地下一階を見終えたら、
ぜひ2階にも上がってみてください。

《The Kiss》 (2019)

基本情報

エキソニモ UN-DEAD-LINK アン・デッド・リンク インターネットアートへの再接続

会期:8月18日(火)〜10月11日(日)
休館日:毎週月曜日(月曜日が祝日・振替休日の場合は開館し、翌平日閉館)
会場:東京都写真美術館
時間:10:00〜18:00
観覧料:一般700円、大学・専門学生560円、中高生・65歳以上350円

展覧会の公式サイトはこちら
インターネット会場はこちら