ほぼ日カルチャん

宮島達男 クロニクル 1995−2020

ミュージアム

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感覚が広がっていくような。

もとじ

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個展というかたちで
現代美術作家・宮島達男さんの作品を
こんなに大きな会場で
まとめてたくさんの作品をみる機会は
私には初めてのことでした。

海外での活躍もめざましい宮島達男さん、
首都圏の大規模な個展としては
12年ぶりの開催なのだそうです。
今回の展覧会では
国内でまだ見られていない作品も
数々ならんでいました。

早速いくつかご紹介します。
同行した光井さんが見つめるのは、
点滅するデジタル数字の集合体‥‥。

▲Innumerable Life/Buddha MMD-03

ニューヨークで昨年はじめて発表した作品。
ちいさなLEDが2500個並び、
それぞれの数字が
それぞれのリズムで点滅しています。

▲Time Train to Auschwitz

ミニチュアの鉄道模型の中に
小さなLEDが仕込んであります。
電車に詰め込まれてアウシュビッツに行った歴史を
思いながら作られたそうです。

▲地の天 The Sky of the Ground

1996年の千葉市美術館開館記念展で発表された
美術館のコレクションです。
青色LEDが実用化されて間もない1995年に、
はじめて作った青色LEDの作品。
宇宙と地上を結ぶイメージなのだそうです。
ちなみに、この作品をつくっているさなかに
恩師の榎倉康二さんが亡くなったため、
追悼の意味も込めた思い出の作品なのだそう。

30年以上前に秋葉原の電気街で
ストップウォッチのキットを見てからずっと
デジタル・カウンターを使った作品を
作り続けている宮島達男さん。
宮島さんがこの展覧会のオープニングで、
数字についてこのようなことを
おっしゃっていました。

「共用語である英語が話せたとて
地球にいるすべての人とは意思疎通ができない。
数字は世界でさまざまな人種、民族、文化圏の
おおかたの人が理解してくれます。

25年、30年、ずっと同じ数字を使っていて
飽きないかとも言われるが、
日本人として日本語を使うようなものです。
ぼくにとっては数字が表現のツールなので
それを使って何を伝えようかを考えています」

▲HITEN-no.11  2020年の最新作。

1から9までさまざまに動く数字は生を感じさせ、
0は表示されずに闇が死をあらわす。
それがずっと繰り返されています。
そのデジタル・カウンターの動きを眺めながら
見る人がそれぞれに
思い浮かべることがあるのではと思います。

宮島達男さんの作品を、
わたしはなぜ好きなのか‥‥。
それは、
「感じたり考えたりすることへの自由を感じるから」
なのかもしれません。

宮島さん自身は何かを伝えたい
と思って作ったのだろうけれど、
明確には答えが描かれていません。
わたしは、どう感じてもいいし考えてもいい。
QがあってAがあるという構造でなく
ストーリーもはっきりしていません。
とても自由で、束縛されない。
作品と向き合っているつもりが
いつのまにか自分と向き合うことになっている。
‥‥うまくいえませんが、
そういう、感覚が広がっていく体験をできることが
わたしにとっての魅力なのだと思います。

家に帰ったら常に子どもが見るアニメが流れていて
考えたり感じる時間もない、とか、
夏から急に寒くなって
何だか体調がよくないな、とか、
ささいな生活のすべては
生と死のあいだにあること、
生命の大切さと
どうやって生きていこうかと考えることの大切さを
思わせてくれます。

▲Counter Window

美術館の内と外を結んでいます。
窓に透かされていく数字、これ動いていくのです。
すごい。

人が何かを思って作ったものに対して
自分が何かを感じることのおもしろさ。
それが同じであってもたとえ違ったとしてもいい、
いまここで感じたり考えたことが
この先に変わってもいい。

▲Floating Time

生命のカウントを見て今、自分が何を思うか
向き合いに行ってみませんか?

基本情報

宮島達男 クロニクル 1995−2020

会期:2020年9月19日(土)〜 12月13日(日)
※休室日は以下のとおりです。
10月5日(月)10月19日(月)
11月2日(月)11月16(月)
12月7日(月)

会場:千葉市美術館

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