個展というかたちで
現代美術作家・宮島達男さんの作品を
こんなに大きな会場で
まとめてたくさんの作品をみる機会は
私には初めてのことでした。
海外での活躍もめざましい宮島達男さん、
首都圏の大規模な個展としては
12年ぶりの開催なのだそうです。
今回の展覧会では
国内でまだ見られていない作品も
数々ならんでいました。
早速いくつかご紹介します。
同行した光井さんが見つめるのは、
点滅するデジタル数字の集合体‥‥。
ニューヨークで昨年はじめて発表した作品。
ちいさなLEDが2500個並び、
それぞれの数字が
それぞれのリズムで点滅しています。
ミニチュアの鉄道模型の中に
小さなLEDが仕込んであります。
電車に詰め込まれてアウシュビッツに行った歴史を
思いながら作られたそうです。
1996年の千葉市美術館開館記念展で発表された
美術館のコレクションです。
青色LEDが実用化されて間もない1995年に、
はじめて作った青色LEDの作品。
宇宙と地上を結ぶイメージなのだそうです。
ちなみに、この作品をつくっているさなかに
恩師の榎倉康二さんが亡くなったため、
追悼の意味も込めた思い出の作品なのだそう。
30年以上前に秋葉原の電気街で
ストップウォッチのキットを見てからずっと
デジタル・カウンターを使った作品を
作り続けている宮島達男さん。
宮島さんがこの展覧会のオープニングで、
数字についてこのようなことを
おっしゃっていました。
「共用語である英語が話せたとて
地球にいるすべての人とは意思疎通ができない。
数字は世界でさまざまな人種、民族、文化圏の
おおかたの人が理解してくれます。
25年、30年、ずっと同じ数字を使っていて
飽きないかとも言われるが、
日本人として日本語を使うようなものです。
ぼくにとっては数字が表現のツールなので
それを使って何を伝えようかを考えています」
1から9までさまざまに動く数字は生を感じさせ、
0は表示されずに闇が死をあらわす。
それがずっと繰り返されています。
そのデジタル・カウンターの動きを眺めながら
見る人がそれぞれに
思い浮かべることがあるのではと思います。
宮島達男さんの作品を、
わたしはなぜ好きなのか‥‥。
それは、
「感じたり考えたりすることへの自由を感じるから」
なのかもしれません。
宮島さん自身は何かを伝えたい
と思って作ったのだろうけれど、
明確には答えが描かれていません。
わたしは、どう感じてもいいし考えてもいい。
QがあってAがあるという構造でなく
ストーリーもはっきりしていません。
とても自由で、束縛されない。
作品と向き合っているつもりが
いつのまにか自分と向き合うことになっている。
‥‥うまくいえませんが、
そういう、感覚が広がっていく体験をできることが
わたしにとっての魅力なのだと思います。
家に帰ったら常に子どもが見るアニメが流れていて
考えたり感じる時間もない、とか、
夏から急に寒くなって
何だか体調がよくないな、とか、
ささいな生活のすべては
生と死のあいだにあること、
生命の大切さと
どうやって生きていこうかと考えることの大切さを
思わせてくれます。
美術館の内と外を結んでいます。
窓に透かされていく数字、これ動いていくのです。
すごい。
人が何かを思って作ったものに対して
自分が何かを感じることのおもしろさ。
それが同じであってもたとえ違ったとしてもいい、
いまここで感じたり考えたことが
この先に変わってもいい。
生命のカウントを見て今、自分が何を思うか
向き合いに行ってみませんか?