東京国立博物館の方とお話ししているとき、
「東博に5Gのアンテナが設置された」
という情報を耳にしました。
5G?
3Gが4Gになって、その次の?
世界が変わるほど通信が速くなるという、あの?
博物館で5Gが使えるようになって、
いったい何ができるようになるの‥‥(モヤモヤ)?
ひとりでモヤモヤ想像していても
モヤモヤはぜったいに晴れないぞ、
ということで体験しに行ってきました。
目の前に現れたのは、
東京国立博物館所蔵の国宝、
『聖徳太子絵伝』の複製画です。
かつては法隆寺の絵殿の内壁に
はめこまれていたものなのだそう。
ぜんぶで10面あるこの絵伝の中には、
聖徳太子の生涯についてのエピソードが
58も描かれています。
実物の作品は約千年もの長い年月を経て
かなり傷んでいて、
一年に一ヶ月ほどしか展示されません。
展示されたとしても、ケース越しでは
何が描いてあるのかはっきりと見えないのです。
そんな「聖徳太子絵伝」を前に案内され、
館の方から手渡されたのは、
このかっこいいサングラス(?)。
ふつうのメガネよりはちょっと重たいですが、
ちょっと重いくらいで普通にかけられます。
このメガネで見てみたいところを探しました。
ものすごくぼんやりしています。
これは‥‥人? 動物‥‥?
メガネをかけて
絵が浮き上がって現れたのは、
くっきり、はっきりとした線画の聖徳太子!
馬に乗った聖徳太子が
ふわりと富士山を飛び越えていきます。
このメガネでは、
作品に描かれた15のエピソードを
アニメーションでみることができます。
メガネの耳の付近からは
同時に解説もきこえてくるので
まるでひとつの物語を見ているようです。
いくつかの物語を堪能してメガネを外すと、
さらにもうひとつ、スマホの端末を手渡されました。
それを複製画にかざすと、
画面に同じ部分が出てきます。
ふむふむ、なるほど、ARだ。
すごいのはここからでした。
画面をピンチしてアップしてみます。
勢いよく、
いつも自分のスマホでやっているように
人差しゆびと親ゆびをスーッと広げて、
気軽にピンチアップしてみたら‥‥
ええ?! こ、これは!
きれい!
すごくきれいです!!
そして早い!
薄暗かった絵伝の世界が、
色鮮やかに、明るく、
あっという間に目の前に開けました。
この絵の部分、実物はわたしの指の先ほどしかない
ほんとうに小さな部分なのです。
画像は1面あたり18億画素(ちょっとよくわからない)
という高精細っぷり。
8K映像で撮影されています。
そのデータが大容量であろうことは
わたしにも想像できます。
そんな大容量データを手元のスマホで
ストレスなく拡大したり縮小したりするために、
5Gの通信環境を活用した、ということなのだそうです。
通信が遅くて容量が小さくては
操作に時間がかかってしかたがないのですね。
さらにアップにしてみました。
一瞬です。
自分の手の中で絵に触れているような、
紙の質感を指が感じているような、
そんな錯覚におちいるくらいのリアルさです。
傷んで絵の具が剥離した作品の表面を手の中で見て、
「ああ、これ以上、剥離してくれるな」と、
つい願ってしまいました。
上の画像は、聖徳太子が
厩(うまや)の前で生まれたことから
「厩戸皇子」と呼ばれる所以となった
エピソードを描いた部分です。
女性は聖徳太子のお母さん、
抱かれているのが小さな聖徳太子です。
あれ? このしくみ、
もしかして家でも体験できるのでは‥‥?
はい、スマホでアニメーションがみられます!
東博まで行けない人に向けて
スマホでたのしめるおうちコンテンツも
用意されていました。
ただ、わたしのおすすめはやっぱり
「目の前に実寸大の複製画がある」
状態での体験です。
しかも、実寸大の複製画が
法隆寺の絵殿内と同じように配置されているので
作品とじぶんが一体になったように、
その世界に没入できます。
なんてったって5G、速いです!
この絵伝のおもしろさ、
文化財を守っていくことの大切さを、
もっとたくさんの人に伝えたい!
東京国立博物館、文化財活用センター、KDDIが
総力をあげてつくりあげたこのプロジェクトには
そんな想いが詰まっています。
たくさんをいっぺんに観ることが多い昨今、
ひとつの作品にどっぷり浸かる機会も
なかなかないなぁと思いました。
10月25日(日)までなので、
ぜひお早めに足をお運びください。