2020年12月に発売された
Mr.Childrenの20枚目のオリジナルアルバム『SOUNDTRACKS』。
その音を初めて聴いたとき、
「わ、なんなん、この音‥‥!」
と、とにかくその音にびっくりしたんです。
家のスピーカーの性能が、
知らない間にあがったのか? と思うほどに。
このアルバムのレコーディングが行われたのは、
ロンドンとLA。
「海外レコーディングってだけで、こんなに
奥行きがあって、色気のある音になるの!?」と、
どんなレコーディングだったのか、
とても気になっていました。
そんなアルバムのレコーディング風景を、
メンバーと長きにわたり交流のある
写真家・薮田修身さんが捉えたインスタレーション、
『THERE WILL BE NO MIRACLES HERE』が
PARCO MUSEUM TOKYOで開催されています。
今回のインスタレーションは、
2019年7月から2020年3月まで行われた
レコーディングの様子を撮影した膨大な量の写真を、
スライドショーのように切り替えて見せていくもの。
(時間にすると、4時間超のボリューム!)
来場者それぞれが、
自らの音楽デバイスから流れてくる音楽を
イヤホンやヘッドホンで聴きながら鑑賞します。
(『SOUNDTRACKS』はもちろん、
それぞれ自由に好きな音楽を聴きます)
さて、位置について‥‥、
わたしのイヤホンから最初に流れてきた曲は、
アルバムの6曲目「Documentary film」。
それがすでに空間に合っていて、
もうその時点で、グッときて泣きそうに‥‥。
(いや、大好きな曲だからというのもありますが)
鳴らすべき音を探る真剣な表情、
すぐそこで声が聴こえてきそうな歌入れの様子、
ほかのメンバーのレコーディングを覗き見する姿、
レコーディングスタッフに感謝を伝える笑顔、
などなど。
音楽が生まれる瞬間の、
凛としていてエネルギーに満ちた時間のなかにいる
メンバーの姿がどうしようもなくリアルで、
そのときの空気や香りまでもが
写真から感じられるようでした。
それを見ていると、
「あぁ、だからこの音になったんだなぁ」と、
妙に納得できるような感じがあって、
改めてこのアルバムが大好きになりました。
そして、
遠い国のスタジオの様子を見ながら
なぜか渋谷にいるわたしの日常がグッと浮かび上がる、
そんな不思議な感覚に。
ちょうど1年前の“今日”を写した写真もあり、
それを見ながら
「1年前はいまがこんなふうになっているなんて
思ってもみなかったなぁ」と思ったことで、
いまここにある日常とスタジオの距離が
縮まったのかもしれません。
そしてそのことで、このとき生まれた音楽が
ちゃんとわたしたちの元に届けられたこと、
その音楽が日常のなかで流れている喜びを、
改めて確認するような体験となりました。
4時間のインスタレーション、
わたしが見たのはアルバム1枚半(約1時間半)。
その時間は、
音楽を生み出す人たちへの敬意が
体に染み入るような、しあわせな時間でした。
帰りには、薮田さんが
「古本屋でこの写真集を見つけたときに、
写真に写っている彼らの音楽を聴いてみたいと
思ってもらえるように、100年残すつもりで作った」
という写真集を手に、家路へ。
次は、どんな表情でどんな音楽を奏でてくれるのか。
とにかく、迷いなく
次の作品をたのしみに待っていられるなぁと
思えたインスタレーション。
こんな状況ではありますが、
音楽を聴きながら‥‥ということで
会話もなく、静かに鑑賞できるので、
もしよければ足を運んでいただければと思います。