21_21 DESIGN SIGHTで開催されている
トランスレーションズ展 −「わかりあえなさ」をわかりあおう
に行ってきました。
“トランスレーション=翻訳” を
テーマとした展覧会です。
「翻訳」ということばで、
ぱっと最初に思いつくのは、
「日本語から英語」といったように
ある言語をちがう言語に
変換することではないでしょうか?
わたしはそうでした。
ですが、ここでいう「翻訳」とは、
もっと広い意味でとらえたものです。
展覧会ディレクターを務める、
ドミニク・チェンさんの
「翻訳はコミュニケーションのデザインである」
という考えにもとづいて、
「翻訳」を「互いに異なる背景をもつ、
『わかりあえない』もの同士が
意思疎通を図るためのプロセス」と捉え、
言語間を超えて、アートやデザイン、
からだ全体を使う表現、
人間だけでなく、動物や微生物との対話など、
さまざまな「翻訳」のカタチを展示し、
その可能性をいろんな角度から探っていくものです。
会場では、大きく分けて、
7つのセクションで構成されていました。
「ことばの海をおよぐ」
「伝えかたをさぐる」
「体でつたえる」
「文化がまざる」
「昔とすごす」
「モノとのあいだ」
「異種とむきあう」
会場に入ると、まずはじめに出会うのが、
「ことばの海をおよぐ」の「トランス・ポート」。
国際空港の入り口のように、
さまざまな声が飛び交う「PORT(港)」を
イメージしたイントロダクションです。
ここでは、ドミニク・チェンさんによる
ディレクターズ・メッセージや、
日本語、英語、仏語、中国語で組み合わされた
ビデオレターが読みあげられていて、
これから出会う作品への期待が高まり、
展覧会の世界観にぐっと惹き込まれていきました。
また、作品ごとにキャプションカードが用意されていて、
それを手にとって、会場をまわることができるのですが、
これがちょっとしたアトラクション感があってたのしいです。
マップを見ながら、夢中で集めてしまったほど‥‥!
つぎに進んでいくと出会うのは、
この展覧会のために制作されたという
「ファウンド・イン・トランスレーション」
という作品です。
AIによる自動翻訳を用いた体験型の作品で
中央にあるマイクに向かって話しかけると、
そのことばが、多言語機械翻訳によって
「翻訳」されてモニターに映し出されます。
結果だけでなく、機械が言葉を発見していく、
その過程までも楽しめます。
自分の発したことばが、
壁一面にいろんな言語で表示される貴重な体験を
ぜひ、会場で楽しんでみてくださいね。
つぎへと進むと、
それぞれのセクションが三角形の柱で
ゆるくくぎられた空間が広がっていました。
三角形の面によって色が違うので、
見る角度によって色や印象が変わったり、
会場そのものも楽しめます。
そのなかでとくに目を引いたのは、
エラ・フランシス・サンダースさんによる作品。
ここでは、世界中の翻訳できない表現を集めた
「翻訳できない世界のことば」という本から、
よりすぐりのイラストが展示されています。
「世界にはこんな表現があるんだ!」という驚きと、
なかには、「わかるー!」と共感できるのものや、
わたしたちにとって、お馴染みのことばもありました。
すてきなイラストとことばが
くるくるとまわるように展示されていて、
とっても癒やされる、そんな空間でした。
ぜひ、みなさんもお気に入りを見つけてみてくださいね。
そして、わたしがこの展覧会の作品のなかで
一番惹かれたのは、「見えないスポーツ図鑑」です。
当初は、目の見えない人とともにスポーツを
観戦する方法を探る研究から始まったそうです。
その後、視覚障害の有無に関わらず、
アスリートの感覚や競技のエッセンスを
誰でも追体験できるよう言語や視覚以外の方法で
スポーツを観戦する
ふたつの方法を編み出したのだとか。
ここでは、実際にわたしたちの
身のまわりにあるものを使ってスポーツの動きを
「翻訳」する試みを見ることができます。
メイキングや解説もとてもわかりやすく、
どうにかそれを表現しようとする
研究者さんたちの熱にやられました‥‥!
実際に使われた道具が展示されていたりと
映像と見比べられたのもよかったです。
ふだんの目で見る観戦とは違う、
スポーツのまったく新しい姿を発見できますよ。
まだまだ、ご紹介しきれていない
魅力的な作品が他にもたくさんあります。
あとは、実際にみなさんの目で見て触れて、
体感していただきたいです。
ひとりでじっくりと浸るのもよいですし、
誰かと行くと、より楽しめそう! と思いました。
展示のあとはぜひ、ほぼ日カルチャんへ。
感想をたくさんお話しましょう!