陶芸がこんなにも
自由で楽しく、美しい芸術だということを
恥ずかしながら、
今まで知りませんでした。
渋谷PARCO2階、
OIL by 美術手帖さんで開催中の
「仮想世代陶芸 Virtual generation pottery」に行きました。
1990年代前後に生まれた若手陶芸家、
宮下サトシさん、
酒井智也さん、
乙うたろうさん、
3人の展覧会です。
酒井智也さんの作品が、強烈に印象に残っています。
幾何学的な形と、鮮やかな色彩が美しい作品たちです。
形でしょうか? 色でしょうか?
妙な親近感がすぐに湧いてきて、
理由はわかりませんが、とても心地が良く
お部屋に置いて毎日眺めたいなぁと
なんの気なしに考えていました。
鑑賞後に酒井さんが
展覧会に向けたメッセージを読むと、
漠然と感じたことの理由が、少しだけ分かりました。
そのメッセージがこちらです。
『インターネットや SNS などの情報革命により、
私たちは日々情報を浴び続けている。
多くの情報のなかで、
自分自身を形成してきた重要な記憶でさえ、
無意識の底に消えていってしまう。
私はロクロでの制作を通して、
余分な情報から自身を切り離し、
瞑想するように自己と向き合うことができる。
そして、頭の中でカオスのように存在している
情報や記憶を整理するように制作をしていく。』
『私の作品は、過去に見た
景色、情報、アニメ、映画、
様々なイメージが多層的に潜んでいる。
それらのイメージはすべての人と共通する部分があり、
作品を観ることで無意識下に消えてしまった
重要な記憶を呼び覚ますきっかけになればと思う。』
私が感じた親近感は、
酒井さんが作品に潜ませた様々なイメージが
私の中のどこかにも、あったからなのかもしれません。
私も日々の生活の中で、
情報の多さに困惑することがあります。
酒井さんがおっしゃるように
私の重要な記憶も、無意識のうちに日々の情報に
埋もれて消えてしまったかもしれません。
作品の心地よさと、
毎日見たいという気持ちは
直感的に、
「これは重要な記憶を呼び覚ましてくれるものだ」
と伝わってきたからかもしれないと考えついて、
なんだか嬉しくなりました。
さいごに、
宮下サトシさん、
酒井智也さん、
乙うたろうさん、
の作品はそれぞれ
全く異なるアプローチで
制作されていて違った魅力がありました。
しかし3人には、共通点があるそうです。
それは、制作のモチベーションが、
幼少期からのアニメ、マンガなどの
「仮想世界」への興味だということ。
そしてそれを表現するものが、
陶器という素材、形態でなければならないということ。
どの作品も、ポップな美しさに溢れていて、
とても独創的です。
そして作家さんの手によって形になり、
生み出されたものが発する
エネルギーが、ビシビシと伝わってくる展示でした。