私が大学生だった頃。
ある本に載っていた作品をみて
そこから漂う「ただならぬ色気」に、
しばらく目が離せませんでした。
作者の名前は「小村雪岱」
こむらせったい、と読みます。
いま、日本橋の三井記念美術館で
その作品の本物が観られると知り、
わくわくしながら展覧会に向かいました。
大正から昭和初期という
ずいぶん前に活躍した作家さんですが、
大胆さと繊細さが絶妙なバランスで
同居しているその表現は、
いま見ても、とても新鮮に感じられました。
もともとは日本画家だった雪岱ですが、
生涯で手掛けた仕事は実にさまざま!
人気作家の本の装幀や‥‥
小説の挿絵。
舞台装置のデザインまで!
たったひとりが生み出したとは思えないほど、
仕事のジャンルは多岐に渡り、
今でいうアートディレクターの先駆けのような
存在でもあったそうです。
展覧会では、そんな雪岱の作品を
140点近くみることができました。
寄ってみても、離れてみてもおもしろい。
緊張感がありつつも、心地よい抜け感も感じる。
そして、なにより引かれた線の美しさ!
画面のすみずみまで注がれた美意識に
くらっときながら展示会場を歩いていました。
たとえばこの作品。
「男と女がお互いを見ている」
そんな、どこにでもあるようなシーンなのに、
雪岱が描くとこんなにかっこいい‥‥!
会場では、
雪岱が影響を受けた、鈴木春信の浮世絵や
雪岱に影響を受けた、現代芸術家の作品も
観ることができ、
受け継がれていくスタイルを
感じることができました。
大正、昭和、平成、令和と、
時代が変わっても新しく感じられる雪岱の美意識を
その目でたっぷりと味わってください!