ある美術館の学芸員さんに、
東京オペラシティアートギャラリーの
「ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展」を
おすすめしていただいたので、
新宿まで行ってみました。
6月20日(日)までの会期が「4日」延びて、
6月24日(木)までになっているものの、
閉幕まであと数日しかありません。
それでも、
このおもしろい収蔵品展のこと、
お伝えしたいと思います。
まず、この展覧会、
成り立ちがおもしろいです。
イギリスのアーティスト、
ライアン・ガンダーの個展を
もともとここで開催する予定だったのですが、
コロナによるイギリスのロックダウンで、
開催が延期になりました。
本人から「何か自分にできることはないか」
というお申し出で、
個展に合わせて予定していた
「ガンダーが選ぶ収蔵品展」を
全館で行うことになったそうです。
いつも下の階が入り口になっていることが多い
オペラシティアートギャラリーですが、
今回は上の階からスタートします。
入るなり、目に飛び込んできたのは、
壁一面の黒い枠線。
えっ。
コロナの影響で、ときいていたけれど、
もしかして作品がない‥‥?
と一瞬思いましたが違いました。
反対側の壁に、
この枠線とキャプションに呼応するように、
収蔵品が展示されています。
これだと反転して見えますが、
もっとわかりやすく撮ると、こうです。
李禹煥、ジョアン・ミロ、白髪一雄、吉原治良‥‥。
そうそうたる作品がキャプションなしで並びます。
誰の何なのか観たいときは反対の壁を。
お客さんはみんなぐるぐると
展示室を回転するように、
いろんな見方をしていました。
作品はモノクロばかり。
複数の作家のモノクロ作品だけを
同時にたくさん観たことがなく、
だんだん不思議な気持ちになってきます。
モノクロだけで表現される豊かさを感じ、
ふわふわした気持ちで、
下の階に降りました。
2つ目の会場の入り口には、
こんなものが。
ペンライト!
暗がりの展示室で、
自ら作品を照らしながら進みます。
そうすると、あることに気づきます。
暗い中で見える作品は
「モノクロ」に近いのですが、
光を当てることで、
ふわっと色が現れるのです。
どんな絵なんだろうと思いながら、
自分で光を当てて、
色を浮かび上がらせる。
まるで魔法使いにでもなったような気持ちです。
会場全体が薄暗くて
はっきり見えるわけではないので、
「自分と作品」だけの世界にいるようです。
次はどんな作品と出会えるのだろうと、
これがたのしくてたのしくて、
ずーっとやっていました。
「自分と作品」の関係が
いつもより濃くなったような気がして、
あぁ、また他の展覧会でも
こんなふうな心持ちで観たいと思いました。
満足した気持ちで会場を出ると、
最初に見たはずのこのビジュアルが目に留まります。
Colours of the imagination
色を想像する
このグレーの文字が見えてなかった!
本当に良い展覧会でした。