画家の今井麗さん。
コアラのぬいぐるみやソフトトイが配置された
ちょっと不思議でかわいい静物画を描かれる方だと、
お名前は存じ上げていました。
いつか作品を観てみたいなと思いつつ、
ずっと機会を逃していましたが、
やっと、展覧会に行くことができました。
その展覧会は、
PARCO MUSEUM TOKYOで開催されています。
今井麗さんの画集『MELODY』の発売を記念した展覧会です。
会場であるパルコミュージアムの前へ行くと、
真っ黄色の空間が目に飛び込んできて、
その奥にくまのぬいぐるみの絵がちらっと見えます。
これは、入らずにはいられない! と思わせる
独特の雰囲気がありました。
会場に入ってみて、
すごくまぶしいなと思いました。
その黄色い空間のせいもあるかもしれません。
ですが、絵そのものからも、
光を感じさせるパワーがありました。
今井さんがモチーフとして選んでいるのは
切り分けられたフルーツや、
溶けかかったバターが乗ったトーストなど、
朝を連想させる景色が多かったです。
また一方で、
今井さんが趣味で収集されているというぬいぐるみや、
海外映画のキャラクターのソフトトイなどを
「ぬいぐるみごっこ」の最中のように配置した
静物画のようで、風景画のような作品も特徴的です。
フルーツの絵も、ぬいぐるみの絵も、
どちらも共通しているのは「家」のなかでの出来事だということ。
そして気づいたのは、今回の展示作品のほとんどは
この1年で制作された新作ばかりで構成されているということです。
家の中にいつづけることを余儀なくされたこの1年、
朝起きて、食べるものを用意して、
それを毎朝毎朝くり返した、
そんな私自身の経験にも重ねてしまいました。
劇的な出来事が起こるわけでもなく、淡々と生活を営んでいく、
たったそれだけのことが、実は尊かったんだということは
私のみならず、たくさんの人がこの1年で気づいたことだと思います。
今井さんの作品は、
毎日の日常で、平凡すぎて見過ごしてしまうような一瞬を切り取っています。
カットされてお皿に盛られたイチジク、
窓から差し込む陽光をライトに
堂々と立っているくまのぬいぐるみ、
どの絵も、キラッキラにまぶしかったです。
日々の生活ってこんなにも美しかったんだということを
久しぶりに思い出しました。
展示室に入って最初に浮かんだ「光」という印象は
今井さんの作品すべてに共通して感じました。
今回の展覧会のきっかけになった作品集『MELODY』も
とてもすばらしい作品集でした。
巻末には、今井さんご自身による作品解説も収録されていて
それもとても良くて、全ページ読んでしまいました。
この作品集は、会場で先行販売しています。
会期は少し短く、7/ 18までです。
ぜひ、かわいく構成された展覧会場で
今井さんの作品を直に観ていただけたらと思います。