ほぼ日カルチャん

GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?

ミュージアム

0179

人間って、こういうことができるんだと目眩がしてくる。

イトイ

0179

小さなころに、画用紙を前にして絵を描いたことがある。
そりゃ、あるよ、だれだってあるだろう。
男の子だったらクルマだったり飛行機だったりを描くし、
女の子は、大きな目の少女と家とお花を描いたりする。
他にも、いろんな描くものがあるはずだけれど、
子どものころの絵は、スタンプのように似たものになる。

さて、あなたも、わたしも大人になった。
画用紙があって、絵の具でもクレヨンでも、画材がある。
なんでも好きなものを描けばいい。
近くにあった花瓶のようすや、コップや猫を描くのかな。
外に出かけて、緑の目立つ景色を描くのだろうか。
あるいは、同居している人だとか、じぶんの顔を描く?
つまりは、絵で見たような絵を描くことになりそうだ。
そうでなければ、かつて練習したことのある
アニメやマンガの主人公などの絵を描くこともあるな。
だいたいは、どこかにあったような、
つまりは絵で見たような絵を描くことになるだろう。

絵を描くといっても、なにを描くかさえも思いつかない。
それが、だいたいの人たちにとっての絵を描くことだ。
つまり、残念ながら、あなたもわたしも、
なにを、どう描いていいのかさえわからないのである。
それは、もしかしたらペンと原稿用紙を前にして、
「ウソでもホントでも、好きなことを書いてごらん」と
言われたときと、同じようなものなのかもしれない。
どんなデタラメでもいいとしても、
もともと書きたいことがあるわけじゃなかったし、
どんなふうに書いていいのかもわからないのだ。

ここまで、ぼくが書いてきたこと、同意してくれるかな?
人は、好きなものを描いてよいとしても、描けやしない。
ああしてやろうも、こうしてやろうも思いつかない。
それを、ちゃんとわかった上で、東京都現代美術館に行く。
『GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?』
という展覧会をやっている。

見たこともないような絵があって、
たくさんの絵の描き方があって、
それが洪水のように会場から溢れ出しているのだ。
人間って、こういうことができるんだと目眩がしてくる。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
渋谷パルコ8階と4階のほうは、もっと大丈夫な感じですよ。

※2021年7月17日の「今日のダーリン」より

基本情報

GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?

会場:東京都現代美術館
企画展示室1F/3F
会期:2021年7月17日(土)~10月17日(日)
時間:10:00~18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日
(7/26、8/2、8/9、8/30、9/20は開館)、8/10、9/21

公式サイトはこちら