工芸品を見たり、集めたり、
使ったりすることが、私は好きです。
似ているように見えても、
産地や作り手によって表情がまったく変わってくるところ、
ほころびができても繕う技術があるところ、
とことん人の手による手間がかかっているところが好きです。
けれど、日本に古くからある豊かな暮らしや
手仕事にまつわる言葉、
「伝統工芸」や「郷土品」、
そして「民藝」などの違いについて、
くわしく知っているわけではありませんでした。
とくに、「民藝」‥‥?
「民藝」と言えば柳宗悦さん‥‥?
それくらいしか知らないのに、
なぜだか惹かれてしまう存在です。
そんな「民藝」という言葉がうまれておよそ100年、
その歴史的流れをくわしく掘り下げた展覧会
「民藝の100年」が東京国立近代美術館で開催中です。
展覧会で知ったばかりの、にわかな知識で恐縮なのですが、
まず、民藝とは、
「民衆的工芸」を略した言葉なのだそうです。
思想家の柳宗悦、陶芸家の河井寬次郎、濱田庄司の
三人が提唱した運動で、
1920年代、近代化が進む日本のなかで
日本各地の手仕事、
とりわけ日用雑器の価値が失われていくことを危惧し、
生活のなかにある美を再認識、紹介していったのだそう。
(勉強したばかりのことを書いています)
この運動がはじまった当初の主な活動は、
「旅」だったとか。
日本各地を巡って、その土地でうまれた生活用具を
発掘、蒐集(しゅうしゅう)する、
それはさぞかし、たのしい発見と出会いの
連続だったのだろうなあと思います。
「旅」はまさしく、
私が民藝品を好きな理由に通じていると思います。
旅の道中での思い出、現地の土や釉薬を使った焼き物、
工房や窯元の人とのおしゃべり、
ひとつひとつのエピソードがまるっと投影されて
世界でたった一点の私のものになります。
それは、その「土地」と「私」が結びつく瞬間です。
そういう出会いがたまらなく好きで、
民藝品集めがやめられないのです。
古いものであるはずなのに、
なぜか現代の生活にもフィットしてしまう、
何十年も前に作られているのに
今でも壊れず使うことができる。
柳宗悦が「用の美」と表現したように、
使いやすさや、壊れにくさ、
長く使えることに重きをおき、
生活のなかでいつまでも馴染むことを
第一に作られている、
それでいてすごく美しいのが
民藝の魅力のひとつです。
そして、作り手の方が現代にもいて
今でも製法が受け継がれているのも素晴らしいところです。
都会に富が集中するなか
いかに農村を活性化させるか、というのも
民藝の課題だったそうで、
柳たちは農民たちに工芸品を作らせ
副業をあたえたそうです。
遠い地方にいる職人さんや、
農民の方がつくった手仕事が
めぐりめぐって
都会にいる私たちのもとにやってくる。
「民藝」を日々の営みのなかに取り入れることが、
だれかの生活につながっている。
自分で買い求めたくて
現地まで足を伸ばしてしまう、
すてきな循環だなあと思います。
郷土を感じられる民藝品が好きで
民藝展をとても楽しみにしていましたが、
美術館を出たあと 民藝の奥深さをもっと知って、
さらに興味が湧いてしまいました。
民藝のことを知ると、柳宗悦だけでなく
たくさんの陶芸家や染織家の名前を知ることになり
今度はそういう工芸家、職人ひとりひとりのことを
知りたくなってしまいました。
これは沼です‥‥。
ずっと気になっていたけれど
行く機会を逃し続けている日本民藝館も、
これを機に行ってみようと思います。
日本各地に残っている郷土品や
受け継がれてきた手仕事が
これからもずっと残りますように。
「民藝の100年」は
2022年の2月まで開催予定です。