ほぼ日カルチャん

永遠の門 ゴッホの見た未来

映画

0009

切なくて美しいゴッホが見ていた世界。

ヒロセ

0009

監督のジュリアン・シュナーベルは、
1980年代から90年代に大好きだった画家です。

そのシュナーベルが、
1996年に「バスキア」で映画監督デビューすると、
2007年の「潜水服は蝶の夢を見る」で
映画監督としても世界的な成功を収めます。
この「永遠の門」は、
画家シュナーベルが、
画家ゴッホを描いた映画ということで、
特に興味をそそられました。

ゴッホの人生はこれまで数多くの本になり、
映画になり、演劇となって、
残された作品とセットで語り継がれ、
死後とてもポピュラーな画家となりましたが、
この映画はその人生をなぞるような内容にはなっていません。

ゴッホという画家の目に映っていた、
描かずにいられなかった美しい風景を、色彩を、光を、
画家でもあるシュナーベルの解釈によって
実に美しく描いています。

ウィレム・デフォー演じるゴッホが、
南仏の自然の中に嬉々として身を委ねるシーンは、
まるで自分自身がその場の温度や匂いや風を感じながら、
その場に立っているような気さえして、
うっとりしてしまいます。

この美しい映像を観られるというだけでも、
この映画を観る価値はあると思います。

一方、一向に理解してもらえない自分の美や、
周囲の人間から受ける様々なかたちの暴力や、
理不尽な扱いなどによって心が不安定になり、
ゴッホが狂人と化していく過程も、
ゴッホの目線で描かれていますが、
これは実に恐ろしくて不快です。
この、観客を恐ろしく不快な感覚に陥らせる理由は、
それがファンタジーではなく、
フィンセント・ファン・ゴッホという実在した人物が、
実際に体験した「リアル」を描けているからかもしれません。
「潜水服は蝶の夢を見る」を観ているときに感じた、
息がしづらいような苦しさは、
これに比べればエンターテインメントとして描かれているとさえ思えるほどです。

また、手持ちの揺れるカメラワークや、
画面の下半分が滲んでいるフィルターを多用するなどして、
ゴッホの目に見えていた世界を再現しようとしたシーンは
苦手(酔う?)な人もいるかと思いますが、
でも、とにかく切なくて美しい映画なのです。

基本情報

永遠の門 ゴッホの見た未来

2019年11月8日(金)〜
新宿ピカデリー他全国ロードショー

公式サイトはこちら