それは、漫画「ドラえもん」が生まれる
10年も前のお話‥‥。
「漫画家になる」という夢を、
愚直に、真剣に叶えようとしている若い男たちが
集って住む伝説のアパートがありました。
かつて手塚治虫が暮らした
このアパート「トキワ荘」からは、
後に生き続ける漫画をつくった
漫画家がたくさん生まれました。
今から25年前、
1995年の映画「トキワ荘の青春」が
デジタルリマスター版で
今、公開されています。
この映画は、
二十歳やそこらの藤子・F・不二雄が上京して
「トキワ荘」に住んでいた時期のお話です。
とはいえ、映画の主人公は藤子F先生ではなく、
若かりし本木雅弘さんが静かに演じる
トキワ荘の兄貴分的存在、寺田ヒロオ。
なんといっても出演している役者さんが
びっくりのメンバーです。
藤子・F・不二雄は阿部サダヲさん、
安孫子素雄は鈴木卓爾さん、
石森章太郎はさとうこうじさん、
赤塚不二夫は大森嘉之さん
(大森さん、すごく良かった‥‥)、
古田新太さん、生瀬勝久さん、翁華栄さん、
時任三郎さん、桃井かおりさんも登場します。
その漫画家さんたちが駆け出しだった
1950年代の空気がそのまま感じられるような
「空気感のある映画」だと感じました。
漫画家になるという夢に向かって、
進んだり止まったり、
メラメラしたり悩んだりしながら。
ゆっくりゆっくり、
一歩一歩。
「トキワ荘」の時間を
観る人もいっしょに感じることができます。
お金のないときに、
みんないっぺんに郵便で
トキワ荘に届く原稿料のよろこび。
出版社に持ち込んでも持ち込んでも
うまくいかない葛藤。
志をおなじにする仲間のはずなのに
うまくいく人に内心嫉妬する気持ち。
連載が決まったときの高揚感。
住人しか出入りしなかった「トキワ荘」に、
いつしか、
それぞれの連載を担当する出版社の編集者が
通いつめることになってゆきます。
そんな若き漫画家たちの思い出を
静かに、そしてちょっとコミカルに表現している
とっても、とてもとても美しい映画です。
ほぼ日曜日で開催する
「ドラえもん1コマ拡大鑑賞展」を観る前に、
「ドラえもん」や
その時代に生まれたたくさんの漫画や
漫画家さんたちと、
いっしょに時を過ごしてみるのもおすすめです。