堀江貴文さんの、 まじめなおせっかい。  「もっとこうすればいいのに、と思うんです」
堀江貴文さんと糸井重里の対談です。 2013年11月に出版された堀江さんの本、 『ゼロ』について触れながら ふたりの会話は終始なごやかに、かろやかにすすみました。 ライブドアのこと、近鉄バファローズ買収のこと、 ヒッチハイクの経験談(!)などをうかがううちに、 「どうやら堀江さんはおせっかい」 という傾向を糸井が見つけます。 その「おせっかい」は、とてもまじめで、本気で‥‥。 「CAKES」さんとの共同企画で実現した対談。 どうぞ、おたのしみください。
最終回 そのおせっかいは、宇宙へ。
糸井 最近ぼくは「インターネット以後」の人に
固めて会うようになったんですよ。
自分もインターネットの仕事をしてるはずなのに
そのつもりがぜんぜんなかったんです。
ちょっと食わず嫌いだったのかもしれない。
お会いしてみたら、やっぱりおもしろかったです。
堀江 よかったです。
糸井 いま堀江さんが、
いちばんたのしみにやってることってなんですか?
堀江 ロケットですかねぇ。
糸井 ‥‥あの、ロケットの話ってほんとなんですか?
あれだけはおれ、わかんないんですよ。
堀江 えっ、そうですか?
糸井 ロケットって‥‥。
堀江 ぼくはやっぱり、
このちいさな星にへばりついてるのが、
なんかいやで。
糸井 ‥‥ほんっと通じないんです。
なんなんでしょう、これは。
堀江 行ってみればわかるんじゃないですか?
宇宙がもっと身近な存在になると
いろいろイメージしやすくなると思うんですよ。
糸井 うーーん。
堀江 たとえばインターネットも
ぼくが最初に触ったのは17~18年前なんですけど、
そのころにぼくはもう、
いまみたいな世の中になるという
イメージができてたんです。
だからこそ、みんなにすすめていました。
でもイメージが湧かない人は
「そんなもん必要ない」って感じでしたよね。
それと似てるんじゃないかなと思っていて。
糸井 インターネットはね。
うん。
でも宇宙ってのは‥‥。
堀江 宇宙が誰しも行ける場所になったら、
おもしろいことを考えるひとも
たくさん出てくるだろうし、
みんなが活躍する場が広がると思うんですよ。
糸井 ‥‥行きたい人は行けばいいとは思うんですよ。
でも、「自分はいいや」って。
堀江 いいんです、いいんです。
それは「富士山に登りたいか、登りたくないか」
みたいな話じゃないですか。
糸井 はい。
堀江 宇宙が富士山だったとしたら、
ぼくも別に登りたくはないんですよ。
糸井 あ、そうなんですか?
堀江 やっぱり面倒くさいですし、
せいぜい1回くらい行っておけば十分なんです。
行きたい行きたくないは別にして、
宇宙という富士山が
「行ける場所である」ことが重要なんですよ。
糸井 ああー。
堀江 人間が当たり前に行ける場所にするためのこと、
がやりたいんですよ。
糸井 それがやりたいんだ。
堀江 それがやりたいんですよ。
糸井 なるほどねー。
「行けない場所」がそこにある、
という状態がいやなんですね。
堀江 たとえば宇宙から丸い地球を見たら、
ものすごく感動するだろうし、
イマジネーションも刺激されると思うんです。
いまはまだほとんどの人がその体験をしてないから、
伝わってないんですよね。
糸井 そうか‥‥。
無理やり自分の体験に引き寄せるなら、
海でクジラを見たときの感動かな。
ものすごくうれしかったから。
堀江 そうそう、そうなんです。
体験してみたらきっと感動するはずなんですよ。
糸井 なんかこう‥‥
「地図のサイズを変えてみたい」
というおせっかいなんですね。
‥‥でも、
ロケットをつくるとなったら、
それこそ「国家予算」みたいな話になるでしょう。
堀江 それだと持続する可能性がなくなるので。
ぼくらみたいな民間が、
量産をしなきゃいけないと思ってるんです。
ぼくらのロケットは高性能である必要はなくって、
とにかく宇宙に行けさえすればいい。
スペースシャトルがフェラーリだとしたら、
ぼくらがつくるのは宇宙のスーパーカブ。
しかもスマホに入ってるセンサーのような、
そういう「どこででも手に入る部品」でつくる。
それだったら格安のコストで行けるはずだ、
という仮説の上で進めてるんですね。
そうやって事業化に成功すれば、
継続性も出てくるんだと思うんです。
スペースシャトルみたいなものは、
国がストップをかけたらもうおしまいですから。
もちろん、失敗や紆余曲折はあると思いますけど。
糸井 それはもう、けっこう進んでるんですか?
堀江 来年くらいには、
高度100キロに行って戻ってくるくらいの
ロケットはできると思います。
有人ロケットはもうすこし先ですね。
糸井 うーーん‥‥
聞いてるとその気になってくるんだから、
やっぱり本気でやってるんですよね。
そうかぁ。
堀江 いや、ほんとに事業化を考えていますから。
糸井 その計画のおもしろさは、
ぼくらがやっている
「100のツリーハウス」と同じかもしれないですね。
そう考えると理解できます。
堀江 100のツリーハウスですか。
糸井 ぼくら、東北に100個のツリーハウスを
つくろうとしてるんですよ。
そうすれば観光地になるだろうと思って。
堀江 へえー、同じ地域に100個つくるんですか?
糸井 そのつもりだけど、
最終的には範囲が広がってもいいし。
オリエンテーリングみたいに
あちこち回るのも楽しいかもしれないし。
あるいは企業がツリーハウスをつくって、
メディアとして宣伝に使ってくれてもいいだろうし。
ツリーハウスが集まっている場所で
コンサートをやってもいいし。
どっちにしろ、
東北と東京を行ったり来たりすることを
やめないのが大切だと思ってて。
堀江 ぼくの宇宙と、近い考えですよね。
糸井 そうかもしれない。
「行き来できる、ワクワクする場所をつくる」
という意味では。
堀江 「ロケットをつくりたい」っていうと、
スポンサー企業さんもそうだし、
マンガ家さんとか、作家さんとか、
もちろんエンジニアの方々とか、
たくさんのひとがワクワクして集まって、
周りがどんどん盛り上がっていくんですよね。
そこがおもしろい。
糸井 いいですねぇ。
堀江さんのおせっかいは、いよいよ宇宙まで(笑)。
堀江 そうですね、がんばります(笑)。
糸井 ありがとうございました。
ほんとうにおもしろかったです。
堀江 こちらこそたのしかったです。
本を読んでいただいてありがとうございました。

(対談を終わります。
 最後までお読みくださり、ありがとうございました!)
2014-02-03-MON
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