堀江貴文さんの、 まじめなおせっかい。  「もっとこうすればいいのに、と思うんです」
堀江貴文さんと糸井重里の対談です。 2013年11月に出版された堀江さんの本、 『ゼロ』について触れながら ふたりの会話は終始なごやかに、かろやかにすすみました。 ライブドアのこと、近鉄バファローズ買収のこと、 ヒッチハイクの経験談(!)などをうかがううちに、 「どうやら堀江さんはおせっかい」 という傾向を糸井が見つけます。 その「おせっかい」は、とてもまじめで、本気で‥‥。 「CAKES」さんとの共同企画で実現した対談。 どうぞ、おたのしみください。
第7回 刑務所でのこと。
糸井 ツイッターで、試合から逃げないという意味では、
有吉(弘行)さんもそうですよね。
堀江 ああ、はい。
ツイッターのフォロワー数が多いですよね。
糸井 何かいわれたときの受け方がすごく上手。
すばらしいですよ、そこの切れ味は。
堀江 有吉さんのラジオを
刑務所で聴いてたんですけどおもしろかったです。
糸井 刑務所ではラジオも聴けるんですね。
堀江 ええ。
ぼくはでも、だいたいテレビを見てました。
糸井 テレビもOKなんだ。
堀江 決められた時間だけですけど。
平日は夜の6時から9時まで、とか。
あの期間は久しぶりにテレビを見ました。
糸井 それまではあまり見なかった。
堀江 見る暇がなかったんです。
だから、J-POPにも詳しくなりました。
大河ドラマと連続テレビ小説も。
『梅ちゃん先生』とか見てましたね。
糸井 なんだかたのしそうな(笑)。
堀江 たのしかったですよ、テレビは。
糸井 すごいなぁ、やっぱりその、
いやなことを楽しみに変換する能力がすごい。
シャイなわりには拒否をしないですよね。
すべてをまずは、飲み込んじゃう。
堀江 そうですね。
与えられた環境でいかにベストを尽くすかという。
最後には、いちばん嫌だった先輩の受刑者と
仲良くなってましたからね。
糸井 はあー。
それもヒッチハイクの話と似てますよね。
堀江 あ、ほんとですね。
糸井 看守みたいなひととも仲良くなったんですか。
堀江 いや、看守はやっぱり、
ぼくを相手にしてるんでみんな緊張してるんですよ。
糸井 スターだから。
堀江 何かあったらまずいっていう。
ある意味VIP待遇だったのかもしれません。
糸井 事故があったらニュースですもんね。
堀江 でも、ある意味VIPっていうのは、
たいへんなこともあるんです。
「おまえはとにかく特別なんだから、
 偉そうに見えないよう腕組みするな、足を組むな」
最初にそうとう言われました、刑務官に。
で、ずっと言われたとおりにしていました。
糸井 へえー。
堀江 刑務所を出てからも、
ちょっと考えるようになったんですよ。
「いま腕組んでいいのかな?」って。
糸井 じゃあ刑務官の人たちは、
ヒッチハイクの運転手さんとは違ったわけだ。
堀江 そうですね。
‥‥でも、すこしはいるんです。
「なぁ、堀江さ」とか言ってくるひと。
「いま、どの株がいい?」
「俺、ライブドア株、持ってたんだよ」って。
「ちょっと儲けたんだよね」
みたいな話をしてくる刑務官も中にはいましたね。
糸井 はー。
やっぱり不思議な場所なんだねぇ。
堀江 『刑務所わず。』という本を出すんですけど、
それにそういうエピソードを
いろいろ書こうと思っているんです。

※対談のときは編集中でしたが、
 『刑務所わず。』は現在発売中です。

糸井 その看守さんたちに、
おせっかいはしなかったんですか。
堀江 さすがにそれはなかったです(笑)。
ただ、受刑者にはしてました。
糸井 (笑)どんなおせっかいを?
堀江 ある年下の受刑者に、
「おまえはコミュニケーション能力が高いんだから、
 リアルな世界でもぜったい成功できるんだから、
 悪いことするのはもうやめろ」って。
糸井 ああ、
そのひとは堀江さんに会えてよかったよね。
堀江 ほんとうにできるやつなんですよ。
衛生係でいっしょだったやつです。
そもそも衛生係って、なれないですから。
優秀なやつしか配属されない、エリートなんです。
だからあいつは、
ちゃんとすれば成功するんです。
‥‥ということを、本人にいってましたね。
糸井 へええーー。
エリートというのがあること自体も、
ぼくは知りませんでした。
堀江 ‥‥まあ、
エリートだから塀の中の人たちから、
いろいろと嫉まれるんですけど。
糸井 そうか。
上手いことやりやがって、と。
堀江 はい。
ぼくは差し入れの本とかも多かったから
それでも妬まれました。
あとはそう、
給与もあれですよ、
最短で昇進して月5,000円もらってましたから。
6,000円近くまでいってましたから。
糸井 すごいことなんですね。
堀江 すごいことです。
そしてそれも嫉まれるんですよ。
糸井 先輩たちから。
堀江 はい。
糸井 なるほどなぁ。
妬んでくる先輩たちに対応したり、
後輩に本気でおせっかいを言ったり‥‥
そうとう真剣に相手をしないとバレますよね。
堀江 そうなんですよ。
糸井 そこが重要ですよね。
いなしたんじゃ、ダメですよね。
堀江 ダメです。
糸井 やっぱりヒッチハイクで学んだことは、
どこまでも堀江さんの役に立ってますね。
堀江 そうですね(笑)。
糸井 いまうかがった塀の中の話、おもしろかったです。
なんでだろう‥‥
人が社会を語る場合って、
だいたいは、その人にとっての周辺じゃないですか。
あるいは脳だけで知ってる話じゃないですか。
それは、やっぱり狭いですよね。
刑務所の経験をみんなに感じろとは言わないけど、
そういうリアリティは
ものごとを語るときに
つい欠けてしまう部分なんだと思います。
堀江 ええ。
そのリアリティはぼくにとって
ある意味アドバンテージなのかもしれませんし。
糸井 ‥‥アドバンテージですか。
堀江 壮絶な体験をしてきたんだろうな、
というのをみんなが想像してくれるわけですから。
ぼくにとって、終わった話だし。
糸井 きちんと済ませたという自信にもなってますよね。
堀江 1年9ヶ月を無事故で過ごしましたからね。
これは、簡単なようで難しいですから。
糸井 いや、そうだと思いますよ。

(つづきます)
2014-01-31-FRI
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