デイヴィッド (ブライアンに向かって)
糸井さんたちのウェブサイトの
もうひとつの特徴は、
コンテンツを中心に据えていることなんだ。
たとえば、商品についても、
それをどうやってつくっていったか、
なにを考えてそうしたのかっていうのを、
すごく細かく説明している。
ブライアン ああ、なるほど。
たしかに、日本人のお客さんは
そういう説明を好みますね。
アメリカ人はあんまり
そういうことを、気にしないんだけど(笑)。
糸井 簡単にいうと、ぼくらは、
読み物も商品もイベントなんかも、
ぜんぶコンテンツだと思ってるんです。
ブライアン はー、なるほど。
糸井 コンテンツっていうのは、
アイディアのかたまりです。
商品も、記事も、本も、服も、
流通の仕組みも、ビジネスモデルも、
ぼくらは新しく考えたコンテンツとして
立ち上げることができるんです。
新しい商品を練り上げていくときも、
自分たちの力の活かし方としては
ふだんのコンテンツをつくるときと
なんにも変わってないんです。
収益が得られるかどうかっていうのは
別の問題として重要ではあるんだけど、
収益も、読者の数も、それ自体が目的ではない。
その意味では、ぼくらは仕事をすること自体が
大事な方法であり、目的なんです。
ブライアン すごく興味深い考え方です。
糸井 あ、そうだ、篠田さん、
あの、水路のモデル図、出せる?
篠田 出せますよ。
ブライアン ‥‥‥‥これは何?
糸井 水路。
デイヴィッド ‥‥水路?
糸井 ぼくらの仕事の仕組みを
外の人たちに説明するときのために
つくったモデルなんです。
こんなふうにして、
ぼくらのぜんぶのコンテンツは動いてる。
あの、篠田さん、説明をお願いします。
篠田 はい(笑)。
この図を私たちは、
「クリエイティビティの3つの輪」
と呼んでいます。
わたしたちの仕事には、
動機、実行、集合という3つの面があります。
それぞれの面は互いに影響し合い、
私たち全体をとりまく社会ともつながってます。
3つの面と社会が滞ることなく
自由に、スムーズに行き来していることを表すため
全体は水路の形をとっています。
それぞれの面を満たす水はつねに動いています。
ブライアン ふむ。
篠田 商品でも読み物でも、
コンテンツと私たちがよんでるものは
全部同じ仕組みで動いています。
まず起点になるのが、「動機」です。
自分がおもしろいと思う、
心が動く、あるいは、違和感をもつ。
そういうものを発見するところから
すべてのコンテンツはスタートします。
「実行」は、「動機」を形にする仕事。
読み物なら原稿やページデザイン、
商品ならデザインや生産などですね。
外部のプロや企業と一緒に進めることも多いです。
「集合」は、コンテンツをお客さまに渡して、
いっしょに楽しんだり、
やり取りしたりする仕事です。
サイトを毎日更新し、読んでいただく。
注文した商品を受け取って、使っていただく。
メール、最近ではツイッターで
絶え間なく寄せていただくメッセージを読む。
そもそも、お客さんを集める、というのも
「集合」の重要な要素です。
デイヴィッド なるほど。
篠田 私たちの仕事の特長は、
この3つの仕事が互いにしっかりつながり、
しかもひとりよがりにならず
つねに社会に向かって開いている状態で、
各プロジェクトがスピーディーに、
かつ臨機応変に行き来していることです。
たとえば、「集合」の仕事で
お客さまからよい反応があれば
「動機」は強くなります。
もし、私たちの思いと違う反応がくれば、
「動機」のところを見直したり、
「実行」の進め方を変えたりできます。
また、「実行」のところは、
「動機」を漏らさず形にするよう
直結していることがとても大事です。
ですから、私たちの組織では
「動機」を持った人と「実行」する人が
共通する場合が多いです。
非現実的な「動機」を
「実行」に押しつけたりはしませんし、
「実行」が行き詰まりそうなときは
「動機」に立ち戻って優先順位を整理し、
「実行」の規模や手法を変えたりもします。
ブライアン うーん、なるほど。
篠田 この3つの仕事は一般の企業にも
役割としてはあると思いますが、
それぞれが独立し、専門化していることが
多いのではないでしょうか。
そうすることで事業規模が拡大しやすくなるけれど、
「動機」で思い描いたものが途中で失われて
お客様に届きにくくなったり、
はたらく人のやりがいが
保ちにくくなることも多いと思います。
あとは、そうですね、3つの中では
起点になる「動機」が一番大切であり、
同時に、見失いやすいんです。
「実行」や「集合」が目に見えやすい仕事であるぶん、
夢中になってると忘れやすい。
そのことは、よく気をつけています。
‥‥ざっと、そういう感じ、でしょうか?
ブライアン ‥‥‥‥Unusual(変わってる)。
糸井 ‥‥‥‥Unusual(変わってる)?
篠田 まぁ、ね(笑)。
糸井 そうかなぁ(笑)。
ブライアン 少なくとも、日本的じゃないですよね。
糸井 じゃ、どこ的なの(笑)?
ブライアン わかんない(笑)。
なんでしょう、おもしろいですねぇ。
糸井さん、どうしてそんなふうに
考えるようになったんですか?
なにか、変わったことやってました?
ご両親がものすごく変わってたとか?
一同 (笑)
糸井 あはははは。
デイヴィッド グレイトフル・デッドに
10年くっついて回ったとか(笑)?
ブライアン (笑)
糸井 うーん、変わってますかね?
ブライアン 変わってると思いますよ。
だって、多くの日本人が選んでいる、
大きな会社の既存の仕組みのなかでは
働きたくないと思ったわけですよね。
糸井 ぼくは、自分みたいな人が
もっといると思ってたから。
だから、ぼくみたいに働きたくない人が集まって
働ける場所をつくればいいんだと思ったんです。
たとえば、さっき見せてもらいましたけど、
Hubspotには昼寝する場所がありますよね。
朝、すごく眠かったとしても、
会社で昼寝していいんだったら
休まずにちゃんと来ますよね。
逆に、昼寝したらダメだぞって言われたら、
行きたくなくなるかもしれない。
ブライアン はい、はい。
糸井 だから、ブライアンさんも、
ぼくとおんなじことを
考えてるような気がするんだけど。
ブライアン でも、ぼくは、
「自分は変わってる」って思ってるよ(笑)。
デイヴィッド はははは。
糸井 あ、そうなんだ(笑)。
ブライアン おもしろいんじゃなくて、
「おかしい、ちょっとヘン」
だと思うんです。
糸井 ああー、そうですか。そうかぁ。
ぼくは、あんまり自分のことは
変わってるとは思わないなぁ。
デイヴィッドさんはどうですか?
ブライアン デイヴィッドも変わってるよ(笑)。
デイヴィッド そうですね、やっぱりちょっと自分は
ほかの人たちとは違うなぁと思ってる。
たとえば、私は26歳のときに、
ウォールストリートの会社の
日本支店を開設する目的で
ひとりで日本に行ったんですけど。
糸井 あー、ハードだねぇ。
デイヴィッド 当時にしてみれは、それは、
すっごく変わってると言われました。
そんなことやる人は、
ほかに誰もいなかったんです。
糸井 ああー。
デイヴィッド たぶん、どの分野においても、
ある程度の成功をおさめている人は、
ちょっと変わってるんじゃないでしょうか。
みんな、既存の型に
当てはまらない人ばかりだと思う。
糸井 でも、この会社の価値観と
ぼくらがおもしろがってることは、
似ているような気がするんですけど。
ブライアン そうですね。似ているといえば似ている。
‥‥うーん‥‥でも、やっぱり、ぼくは、
(水路のモデル図を示しながら)
こういうふうに思ったことはなかったなぁ。
糸井 なんだか、ぼくらの話ばかりなので、
Hubspotのことも、もっと聞かせてください。
ブライアン もちろん。
To Be Continued......

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2011-07-22-FRI