ブライアン 糸井さんの会社は現在社員が50人ほど
いらっしゃるということですけど、
どういうビジネスで、
何を売ってらっしゃるんですか?
糸井 どこからどう説明しようかな(笑)。
ええと、まず、ぼくは、ひとりで
コピーライターをやっていました。
その仕事がいやになっちゃったのが
そもそものはじまりです。
ブライアン (笑)
糸井 さっきも言いましたけど、
ぼくはずっとひとりで仕事をしていました。
で、自分がおもしろいことを考えられる、
ということについては自信はあるんだけど、
それを実行に移す人がいないんですね。
だとすると自分で場をつくるしかない。
同じ意味で、いつでも自分がなにかを
書いて表現できる媒体がほしくて、
1998年に、ほぼ日刊イトイ新聞という
インターネットのメディアをはじめたんです。
でも、はじめた当初は、
お金を稼ぐ方法はありませんでした。
だから、当時は、ぼくが別の仕事として、
広告をやったり、ゲームをつくったりすることで
なんとかやりくりしていたんです。
どうしたらいいか、
ほんとにわからなかったんですけど、
あるとき、自分たちのユニフォームとして、
Tシャツをつくろうということになったんです。
そしたら、このTシャツを欲しがる人が
ほかにもいるんじゃないか、
って言い出したやつがいた。
で、売ってみたら、思ったより売れたんです。
そう、グレイトフル・デッドのコンサートみたいに。
ブライアン はい(笑)。
糸井 そんなふうにして、Tシャツだけじゃなく、
いろんなものもつくりはじめた。
あれもほしい、これもつくりたいって。
で、読者の数が増えていくと同時に
ぼくたちが自分たちがほしくてつくったものを
ほしがってくれる人も増えていって、
とうとうそれだけで会社が
成り立つようになったんです。
最初のメンバーは3人しかいなかったんですが、
いつの間にか50人の組織になりました。
ほぼ日刊イトイ新聞というウェブサイトにも
いまは1日13万人くらいの人がやって来ていて、
そんななかでぼくらは毎日、
読みものをつくったり、商店を開いたりして
ちょっとした街みたいに
なっているという感じです。
ブライアン それは、ある種のポータルサイトみたいな感じ?
糸井 うーん‥‥ポータルともいえないんですね。
つまり、万人をもれなく受け入れるような、
ポータルサイトとしてのバランスを
まったく取っていませんから。
ぼくの興味、チームの興味で、
「ぼくらはおもしろいんだけど、みんなはどう?」
っていうスタイルですから。
ブライアン ふーむ‥‥。
デイヴィッド 私からも質問していいですか?
糸井さんは、すばらしいコピーライターで、
日々、リアルタイムでお書きになっている
文章もすばらしいと思います。
ところが、あの「今日のダーリン」という文章は
アーカイブを残していないですよね。
ブライアン え? そうなんですか? どうして?
デイヴィッド そうなんだよ。
どうしてそんなことをやるんだろうと思って。
糸井 あー、そうですね。
ほかのコンテンツはだいたい残ってますけど、
ぼくが毎日書いてるものは、残してない。
ブライアン なぜそういうふうにしてるんですか?
糸井 ‥‥‥‥ぼくがそうしたかったから。
一同 (爆笑)
デイヴィッド Nice!
ブライアン Great!!
デイヴィッド つまり、読みたい人は、
今日、読みに来ないとダメだよ、
っていうことですね。
糸井 そうですね。
でも、毎日来てもらうために
そうしてるわけじゃないんですよ。
なんていうか、ぼくはほんとうに
たいしたことを言ってると思ってないから。
ブライアン ふふふふ。
糸井 そんなね、どうしても読むべきだとか、
そういうことって人間には
あんまりないことだと思ってるし。
デイヴィッド でも、「ほぼ日」で売ってるほかの商品でも
「今日のダーリン」と
似ているところがありますね。
たとえば、いつも同じものを
売っているわけではない。
あるときは、こういうコンセプトで、
こういうデザインをして、
これがありますよって売り出すけど、
ずっと同じものが売られるわけではない。
糸井 そうですね。
ブライアン ああ、「ルーララ」に似てるかもしれない‥‥。
あ、「ルーララ」っていう会社があるんです。
すごくユニークな会社なんですけど。
デイヴィッド グレイトフル・デッドの
マーケティングの本の中にも出てきます。
ブライアン コーチとか、イヴ・サンローランとか、
そういう有名ブランドのところに行って、
古くなった季節はずれの商品とかを
安く仕入れてくるんです。
で、毎日11時に新しい商品が
バーンと売り出されるんだけど、
毎日、どんな商品が並ぶかはわからないんです。
在庫も少ないので、すぐ売り切れちゃう。
だから、なにが並ぶかわからないのに、
10時55分にタイマーをセットして
11時を待ち構えているお客さんもいるんです。
これまでのインターネットストアって、
基本的には、いくらでもあります、
なんでもそろってます、っていうものを
提供する場だったと思うんですけど、
ルーララは、有限であることを売りにしている。
糸井さんたちのやり方と、
ちょっと近いような気がします。
糸井 うーん‥‥そうですね‥‥
近いところがあるかもしれないけど、
でも、ぼくらは、それを
狙ってやってるわけではないんですよね。
デイヴィッド なるほど‥‥。
ブライアン セス・ゴーディン
(アメリカのマーケティングの第一人者)
を知ってますか?
糸井 ええ、あの、ツルツル頭の。
一同 (笑)
糸井 少しですが、著書を読んだことがあります。
ブライアン すごく変わった、
おもしろい考え方をする人です。
ブログもすごく人気があって、
たくさんの読者が集まってる。
やっぱり、そこでものを売ったりしていて。
糸井 ああ。うーん。
ブライアン ちょっと似てませんか?
つまり、日本のセス・ゴーディン。
糸井 そんなんじゃないですよ(笑)。
デイヴィッド でも、セス・ゴーディンが売ってるものと
糸井さんたちが売ってるものは
まったく違うよね。
糸井 セス・ゴーディンのやり方は、
「自分になりたい人」に売るんだと思うんです。
つまり、セス・ゴーディンみたいになりたいなぁ!
っていう人がそのブログに集まって、
その人たち向けに商品を売ってる。
そこがぼくらと大きく違うところで、
ぼくは、ぼくになりたい人を
相手にしてるんじゃなくて、
そばにいる人たち、隣人たち、
自分たちとも、まったく違う人たちとも違う、
友だちや隣人たちによろこばれるように、
ときには助けたりできるように、
やっていきたいと思っているんです。
ブライアン ああ‥‥なるほど‥‥うーん‥‥
アメリカで、なにか、
糸井さんたちに似たものが
ないかなぁと思ったんですけど‥‥。
デイヴィッド ないですねぇ。
ブライアン ないねぇ(笑)。
糸井 ああ、そうですか。
あるとおもしろいのにねぇ(笑)。
To Be Continued......

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2011-07-21-THU