糸井 ぼくの考えるヒエラルキーの話をしてもいい?
ブライアン もちろん。
糸井 (ブライアンからマジックを借りて
 壁に組織図を描きながら‥‥)
昔は、てっぺんにボスがいて、
その下にたくさんの人が働いてて、
こういうヒエラルキーがあったでしょ。
ぼくは、これを倒してしまったら、
こういう船のかたちになると思った。
ブライアン
デイヴィッド
糸井 働く人たちはみんな、フラットなところにいる。
で、かつてトップにいた人は、
上にいるんじゃなくて、いちばん前にいる。
それは、いくらフラットな組織だといっても、
みんながそれぞれに助け合うように
かみ合っていかないと仕事にならないから。
だから、全体はフラットだけど、
いちばん前で行き先を見てる人が必要なんです。
ブライアン わかります。
糸井 こういうかたちの、
船のような組織でいたいと思っているので、
ぼくらは、社員ひとりひとりを表すときに、
乗組員(クルー)っていう言い方をしている。
ブライアン おもしろいですねぇ(笑)。
糸井 全部の人が、必ず何か誰かの役に立ってる
ってことがとても大事なんです。
それは、船も同じです。
料理番も、見張り役も、
船が航海するときに、なくてはならない。
しかも、板一枚下は海ですから、
沈むときはみんな同じ危険があります。
会社というものは、船に似ている。
ブライアン ‥‥なぜこれを思いついたんですか?
糸井 うーん、この、古いピラミッド型の構造が、
倒れると思ったんでしょうね。
ブライアン 糸井さんは、
どこか大きい会社に所属して
仕事をされたことがありますか?
糸井 いいえ、ないです。
ぼくはずっとフリーで、一人で仕事してきました。
義務として会社に所属して仕事をすることが
嫌いだったんです。
ほんとはぼく以外のみんなも
そう感じてるんじゃないかと思ったし、
だとしたら、乗りたくて乗る船に乗ろうと思った。
ブライアン おもしろいですねぇ。
私が日本で働いていた1990年代は、
伝統的なピラミッド構造の組織が
ほとんどだったんですが、
それはいまも変わってないんですか。
糸井 そうですね。ほとんどはその構造だと思います。
多くの人はそのピラミッドに所属している。
ブライアン でも、あなたの会社は違った形をしている。
糸井 なんていうのかな、
会社全体で「ひとりの人間」であるような
チームにしたかったんですよ。
そう、だから、ぼくらの会社の具体的な組織図は
人間の内臓のような姿をしているんです。

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ブライアン ‥‥ちょっと説明していただいていいですか?
糸井 はい。
ええと、こういうのは、ぼくよりも
うちのCFOの篠田さんのほうがうまいので、
篠田さん、お願いします。
篠田 はい(笑)。
まず、私たちの会社の組織図が
ひとの内臓をモチーフにしている意味を
少しお話しします。
健康なようすを
「血のめぐりがいい」といったりしますけれど、
組織も同じように
「めぐりがいい」と、うまく動きますよね。
運動や新しい生活をはじめると、
だんだん体も変化していく。
組織も、お客さまや自分たちの動きとともに
自律的に、柔軟にかわっていけるようにしたい。
それから、けがをしたりどこか不調なところがあると
やがて他の部分が頑張って、
そこをカバーしようとする。
同じように組織も、どこかがうまくいってないときも
細かい指示なしに他の役割が自発的にがんばって、
全体として新しいバランスをとるようになったらいい。
そんな組織のイメージをこの図で表しています。
ブライアン なるほど。
篠田 組織図の中心部分に小さな円が連なっているところ、
ここが会社のかじとりをになう経営陣です。
外側に張り出している大きな部分は、
読み物や商品などのコンテンツをつくって
お客さまやお取引先などと接していく役割を
ゆるく配置しています。
その間に、ITなどのサポート役がいる。
役割のあいだが管でつながって
仕事が「めぐる」わけです。
また、ひとと役割の関係を固定しすぎず、
仕事の動きにあわせて
複数の役割をかけもちすることが多いのも
私たちの会社の特徴です。
役割ごとに所属する人を書き出すと、
同じ人が何か所にも出てきます。
ブライアン ‥‥わかりました。なるほど。
すごく、おもしろいですね。
たしかに、あなたの会社は、
私たちの会社とすごく似たところがあります。
糸井 そうなんですよ。
なんか、細かいところも、いろいろ似ていてね。
Hubspotも、席替えするんですって?
ぼくらもやるんですよ、くじ引きで(笑)。
ブライアン へー、おもしろいですね(笑)。
糸井 あー、似てるんだなぁと思って。
あと、会社の作り方が、
モダンなコンクリートじゃなくて、
古い木を使ってたり。
ブライアン そちらもそうなんですか。
糸井 うん。
ぼくらの新しいオフィスは、
壁に古い木の建材を並べてあるんですけど、
それは、ぜんぶ外して使える木材なんです。
いちおう、「東京に木造の社屋を建てるぞ」
っていう夢があって(笑)。
ブライアン おもしろいですねぇ。
糸井 ここのオフィスも、
前に倉庫として使われていたのを、
そのまま活かしているとか。
ブライアン そうなんです。
もともとはソファーの工場だったんですよ。
糸井 それを壊して新しくするんじゃなく、
こういうふうに残す気持ちは、わかるなぁ。
ブライアン (笑)
To Be Continued......

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2011-07-20-WED