糸井 今日、会社を見学させてもらって、
若い人たちが、すごく自由に、
たのしそうに働いている印象を受けました。
Hubspotという会社の文化について、
もう少し教えてもらえますか。
ブライアン Hubspotという会社の文化の根本にあるのは、
「信頼」だと思います。
社長の私は社員をほんとに信頼していて、
社員は、きちんと仕事をするというかたちで、
それに答えてくれている。
ふつうの会社における、会社と社員の関係が
お母さんと子どもみたいに、
「面倒みるからちゃんとやんなさいよ」
っていう感じだとすると、
Hubspotは、横に並んだ同僚っていう感じ。
糸井 管理したり、保護されたり、
っていう関係ではなく、
お互いが信頼し合っている。
ブライアン そうです。たとえば、
Hubspotには有給休暇制度がありません。
そのかわり、いつ休んでもかまわない。
休むのも、休まないのも、自分でできるでしょ、
っていう信頼があるからこそ、そうしている。
家で仕事をしてもいいし、
会社でやってもいいし、
旅先で仕事をしてもかまわない。
糸井 ああ、なるほど。
ブライアン Hubspotには20代の社員が多いので、
そういった、信頼に基づく自由さが、
とくにうまく機能していると思うんです。
アメリカでは、この若い世代は
「Y世代」って呼ばれているんですけど。
糸井 「Y世代」。
ブライアン 一般的に、このY世代っていうのは、
あまりイメージがよくありません。
すぐに仕事を変わるし、まじめにやらないし、
っていうふうに見られています。
私は、せっかく会社をつくるんだったら、
Y世代がおもしろがってくれるような
会社にしたいと思いました。
もちろん、Y世代の人たち全員が
ほんとうに不真面目なわけではありません。
彼らを心から信頼して、
会社がどんどん成長していくんだよ、
という大きな目標を伝えて、
あとは好きにやっていいよというふうにすると、
ものすごく忠誠心をもって
会社のために働いてくれます。
糸井 逆にいうと、いまのアメリカの若い人たちは、
古い会社の枠組みのなかでは
働きたがらないわけですか。
ブライアン そうですね。いまのアメリカでは、
20歳代の会社員は、ひとつの会社に
平均12ヵ月しかいないのが現状です。
糸井 へぇぇ。
ブライアン Y世代の仕事への取り組み方は、
アメリカで映画をつくるときの
やり方に似ています。
つまり、1本の映画をつくるときに、
まずお金を管理しているプロデューサーがいて、
その人が、あちこちからディレクターや
スタッフや俳優を連れてくる。
で、映画を1本つくり終えたらチームは解散。
次の映画も、また同じサイクルを繰り返す。
Y世代も仕事に対して、
同じような考え方を持っているように見えます。
糸井 プロジェクトごとに動いてるんですね。
ブライアン もう、まるで、自分が
フリーのコンサルタントであるかのように、
魅力的なプロジェクトがあるなら行って働くよ、
っていう感覚みたいですね。
糸井 そんなふうに、扱いづらい面もあるのに、
ブライアンさんは若い世代を取り組むことを
重要なことだととらえているようですね。
ブライアン そうですね。
この会社にとっては、やっぱり、
インターネットと共に育った若い世代に、
どんどん働いてもらわなくてはならない。
彼らより上の古い世代だと、
インターネットがあることを前提とした仕事に
根本的なところで、慣れてないんですよ。
糸井 ああ、すごくよくわかります。
ぼくも、慣れてないもの(笑)。
ブライアン 私は、物心がついたころには
すでにインターネットがあった
という若い世代の人たちを、
「デジタルのネイティブスピーカー」
って呼んでるんです。
デジタルということばを、
あとから覚えたんじゃなく、
幼いころから自然と身につけていて、
訛りもなく、しゃべれる世代。
そういう人を採りたいなぁと思ってるんです。
糸井 ブライアンさんご自身は? ネイティブ?
ブライアン ‥‥じつはあんまりネイティブじゃないかも。
たぶん、すごくうまく
しゃべれてはいるんですけど、
ちょっと発音がおかしいときがある、
っていう感じですかね。
糸井 (笑)
ブライアン 自分たちとY世代の差を痛感することのひとつに、
プライバシーに対する考え方があります。
彼らの世代は、自分に社会性が出てきたとき、
もうフェイスブックがあって、
自分の情報っていうものを
早い段階で全部公開してしまっているんですね。
糸井 あー、そうですね。
ブライアン 全部パブリックなんです。
で、私はいま43歳なんですけど、
ある程度親しい人には、
自分の個人的な情報は出すけど、
それ以外の人たちには
やっぱり公開していないんです。
プライベートな情報とパブリックな情報は、
線を引いて区別しているんです。
ところが、若い人たちは、
そこの線引きが、ぜんぜんない。
糸井 うん、うん。
ブライアン 彼らのそういう性質は
この会社の随所に反映されています。
たとえば、Hubspotでは、
会社の情報を全部wikiに載せて
誰でも見られるようにしてあります。
会社のミーティングの議事録なんかも
ウェブに掲載しています。
そう、たとえばこないだの日曜日、
私はまる一日かけて、
「Hubspotが成功した秘密」
というコラムを書いたんです。
そしたら、すぐに31個のコメントがついた。
みんな、うちの社員からです。
糸井 Hubspotが成功した秘密を
知ってしまった社員が31人もいた?
ブライアン いや、そうじゃなくて、反論です。
みんな「違う」って言ってるんですよ。
糸井 えーー(笑)。
ブライアン (モニターを見せながら)
ほら、これを見てください。
これ、全部、コメントです。
どれも、ぼくの元の記事と同じくらい長い。
しかも、マネージャーじゃなくて、
ふつうの社員がこんなに長く書いてる。
糸井 ほんとだ(笑)。
ブライアン こんなふうにして、
あらゆることを透明化しているんです。
いまのところ公開していないのは、
みんなの給料だけかもしれない。
でも、それもちょっと公開を考えてます。
糸井 でも、「全部を公開する」っていう
ルールにしちゃうと、また、
つまらなくなってしまいますからね。
ブライアン あー、そうかもしれない。
糸井 「全部公開するんじゃないんですか?」
なんて言われ出しちゃうと、
公開しているおもしろみが
なくなってしまうというか。
そこは、難しいけど、大事なことですよね。
ブライアン ええ、そう思います。
To Be Continued......

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2011-07-26-TUE