糸井 |
目の感覚がものすごい、と言われていますよね。
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イチロー |
視力はよくないんですけど、
動体視力になると、いいんですよ。
前にテストしたら、
じーっとしているよりも、
動いたときのほうが、
ものをとらえられるという結果が
出たんです。
だから、動いてないといけないんですね。
バッティングでも、
ぼくは最初に動くでしょう?
あれは、そういうことなんです。
ぼくは、「静から動」の動きでは、
力が発揮しづらいんですね。
「動から動」がちょうどいい。
やっぱり、タイプがあると思うんです。
止まってから動いたほうが
いい人もいますし。
だから、こういうことは、
自分で能力を見つけないと
いけないんですよ。
ぼくがそれを見つけたのは、
プロになってからですけど。
ただ、小さい頃から、走っているクルマの
ナンバープレートを見て
それをたし算したりするのが、
ものすごく好きだったから、
そういうのは今思うと、
つながっているのかもしれないです。
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糸井 |
イチローさんへ寄せられた質問は、
ほんとにいろいろあるんですけど、
中でも、なんとか
イチローさんと自分の共通点を見つけたい、
と思っているような問いが、
いっぱいあるんですね。
さっきの
「サボりたい日はありますか?」
みたいなものなんですけど。
ただ、そういうのって、
きっと、イチローさんだって、
同じに決まっていると思うんです。
サボりたい日がない人なんて
いないでしょう。
だったら、すべてのそういう質問を、
「イチローさんは、
どこから人と違っちゃったのか?」
という質問でまとめちゃったら、
済むと思ったんですが……。
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イチロー |
なるほど。
さっきのサボりたい日というので言うと、
もちろんぼくも、
グラウンドに行きたくない日は
たくさんあるんですよ。
そのときには、ちょっと、
職業意識が出てきます。
「仕事だから、しょうがないから」
そう思うんですね。
自分に言い聞かせるんですよ。
それに、
こんなに苦しいのは自分だけか、
と思うことも、たくさんあるんですよ。
「こんなにしんどいのは、オレだけか?
他のヤツらを見ていても、
しんどそうにはとても見えない」
だけど、彼らも同じように
疲れているんですよね。
それを見せるか見せないかの話で。
だからみなさん、ぼくのことは、
疲れていないと思ってるでしょう? |
糸井 |
そうでしょうね。
みんな、お相撲さんは寒くないと
思ってますから。 |
イチロー |
(笑)なるほどね。
ぼくはこういう細い体だから、
割に「疲れているかも」と
思ってくれる人が多いかもしれませんが、
野球のプレーなんかでは、
簡単にやっているように
見られがちなんですよね。
でも、実はそんなことは、ぜんぜんない。
あのヒットを一本打つのに、
どれだけの時間を費やしているか。
あのヒットの一本が、
どれだけうれしいか……。
もちろん、そのそぶりは、見せないですよ。
でも、ヒット一本って、
飛びあがるぐらいにうれしいんですよ、
実は。
二〇〇三年の二〇〇本安打の
ときなんて、涙が出ましたから。
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糸井 |
あぁ……
打てるときもある、
打てないときもある、
という程度の感情ではないんだ。
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イチロー |
とんでもないです。
その一本を打つために、
いろんな投資をするわけですから。
自分の中で。
ヒットを打つことは、
打てば打つほど、むずかしくなるんです。
アメリカに行って、
最初の年に二四二本のヒットを打った。
MVPも取ってしまった。
そしたら、次にマークされる厳しさ
というのは、尋常じゃないんですよね。
これがたとえば、
二割八分で、ヒット一〇六本だったら、
マークもされないですよ。
そのままにしておけばいい、
って話ですから。
だけど、二四二本もヒット打ったときには、
みんな、やっぱりムキになってくる。
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糸井 |
ナメられてたまるか、
って気持ちは、当然あるでしょうね。
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イチロー |
最初の年には、こんなちっちゃな、
日本から来たヤツに、打たれてたまるか、
というのはあったんですよ。
実際、彼らに最初会ったときは、
ちょっと小馬鹿にされているような感じがあった。
日米野球なんかでは、
やたらと褒めるじゃないですか。
でも、褒めた内容の通りのこと、
アイツら、ぜんぜん、
思ってないですからね……。
「アイツをオレのチームの一番でほしい」
ぜんっぜん、思ってなかった(笑)。
とんでもないヤツらですからね。
あれはそういう教育を受けているんですよ。
人はとりあえず褒めておけ、みたいな。
メディアへのマニュアルを
持っているんです。
だから、あんなのは、信用しちゃダメで。
だけど、
聞いている側にとって、ちょっと
聞き苦しいことをヤツらが言い出したら、
それは本音ですよ。
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糸井 |
(笑)なるほど。
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イチロー |
そしてさらにそれを超えれば、
ほんとの評価になる。
そこで称賛されれば、ホンモノですよ。
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(イチローさんの言葉の総集編は、
ここで、いったん、おわりになります。
読んでくださり、ありがとうございました!)
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