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伊賀さんの面接では
採用かどうかの判断をするわけではない、と。
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私は「採用」の権限は持っていませんでした。
ただ「不採用」の権限はありましたが。
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なるほど、なるほど。
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先ほどスフィンクスとおっしゃいましたが、
私が会社を辞めるときに
パートナーが書いてくれた送別の言葉には
「ゲートキーパー」とありました。
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ああ‥‥門番。
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そう、入ってはいけない人を止めて
入ってもいい人に通行証を渡す役割だ、と。
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伊賀さんの著書の『採用基準』という本、
いかにも「採用の基準」について
ことこまかに書いてあるのかと思ったら、
そうじゃなかったんです。
読んだ人はおわかりだと思いますけど、
「入ってからの話」のほうに
より、たくさんの紙幅が割かれていて。
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そうなんです、すみません(笑)。
でも、リーダーシップを基準に採用する、
という意味で、編集者さんが考えてくださった、
よいタイトルだと思っています。
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うまいですよね。
玄関のところで
ほとんどの人を帰さなきゃならない人ですから、
「入れるのって、どういう人ですか」
という質問には、答えにくい部分だと思います。
あの本の中では
「本当の意味でリーダーシップのある人を
採用しました」
ということだったと思うんですけど、
そのあたり、もうすこしおうかがいしても?
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まずリーダーシップのいち要素としては
「決める」こと、
これが、非常に重要だと思っています。
一度でもきちんと自分で
「決める」ことをしたことがあるか、どうか。
いい高校を出て、一流と呼ばれる大学に入り、
マッキンゼーを受けに来ているのに、
「何も決めたことない人」っているんですよ。
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へえー‥‥。
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ご両親とか先生がたが
「成績からして、この学校に行くんだろう」
という学校に行き、
「なんとなく消去法で、この学部を選びました」
「なんとなく誘われて、この部活に入りました」
「みんながいい会社だと言うから、
受けに来ました」みたいな。
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お話半ばですが、わたくし、
そういう人間として、ずっと生きてきました。
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会場:(笑)
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え、そうなんですか?
でも、ご自分でお決めにならなくては
「ほぼ日」、できないですよね?
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僕が「決めること」をしはじめたのは
「ほぼ日」ができてからなんです。
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それまでは、決めてなかったんですか。
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何にも、決めてこなかったですね。
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それは
「意識して、判断しない」ということ?
それとも‥‥。
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ああ、いい質問ですね。
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質問するのが仕事ですので。
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会場:(笑)
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何とかなるに決まってると思ってました。
「文脈」そのものがおもしろければ、
「答え」が出なくても楽しいんです。
つまり「何してるの、俺たち?」という、
あの時間の豊穣さ(笑)。
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ええ(笑)。
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グズグズするのを楽しんじゃうというか。
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でも、それも「そういうふうに、決めて」、
その状況を楽しんでらっしゃったのでは?
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ああ‥‥そうとも言えるのかなあ。
でも、もうひとつだけ言うと
「人間、本当にイヤなことはしないもんだ」
という信念があるんです。
これは、「欲望」に近いんですけど。
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なるほど、そのへんに素直であることって
糸井さんのお仕事にとって
すごく大事なことなんでしょうね、きっと。
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ものすごく大事だと思いますね。
これだけはイヤだ、死んでもやらない、
そういうときの気持ちは
何より強いという自信がありますから。
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ふだんから意識していると
「自分が何が好きで、何が嫌いか」が、
より明確にわかるようになるんです。
反対に、そこを自分にも誤魔化して、
「嫌いなんだけど、まあしょうがないかな」
とか、
「好きなのに
好きだって言うべきじゃないよな」
とかやってると、
自分のことが見えなくなっちゃうんですよ。
感覚が鈍るというか、誤魔化してるうちに、
自分の本心がわからなくなってくるんです。
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そうなっちゃってる人、多くないですか?
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やっぱり、そう思われます?
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今日みたいに「はたらきたい」というテーマで、
たとえば、ぼくみたいな人が
「やめちゃえばいいじゃない」と言いますよね。
そうすると
「才能がある人は、みんなそう言うんだ。
私たちはふつうだから、
やめちゃったら、おしまいなんです」って
そういう反応が、たくさん来ます。
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そう言われたら‥‥どうしようもないですね。
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そう。どうしようもない。
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「あなたの意見なんか聞きたくないです」
と言ってるようなもんですから。
言うべきことが、なくなっちゃいますね。
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でも、その催眠術から解けたときの、
あの人間の自由な‥‥跳ねかた?(笑)
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うん、うん、そうなんですよね。
能力があるからできて、
能力がないからできないんだって
本当に思ってるわけでは、ないんです。
できない理由を
他人とか能力のせいにしてるだけです。
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そう、そう。
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そういうところにハマっちゃうと、
「うちは貧乏だからできない」
「妻が反対するからできない」
「子どもが3人いるから、絶対無理」
みたいな言い訳を次々と‥‥。
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うん。
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そういう、「言い訳探しゲーム」に
なっちゃってるんですよね。
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<つづきます>
2013-09-03-TUE