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もうひとつ挙げるとすれば
「頑固なところと
引くべきところのタイミング」でしょうか。
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両方、わかってないとダメ?
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たとえば、相手の言うことをぜんぶ
「そうですね、そうですね」って言ってたら、
自分の意見なんて
何にも、なくなっちゃうじゃないですか。
「あなたの意見は?」と問われる会社では
それじゃ、ダメですよね。
でも「俺の意見は」ばっかりだと
その人の意見以上のものが、出てきません。
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ええ。
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どこまで主張して、
どこまで受け入れるかというバランスには
それぞれ個性がありますが
少なくとも、
私とキャッチボールをしているときに
「合う」ということ。
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なるほど。
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私なんて、マッキンゼーのなかでは
「やさしい人」の部類です。
入社したら、
私よりもっともっと厳しい人たちと
仕事をするわけですから
主張するところと、
受け入れるところのバランス感覚って
すごく大事だと思います。
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僕、今のはものすごくピンときますね。
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じゃあ、すくなくとも
スフィンクスは通過できますね(笑)。
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キャッチボールって
本当によくできた遊びだと思うんです。
僕、ある球団のファンなんですが‥‥。
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はい(笑)。
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まあ、つまりジャイアンツなんですけど、
うちの子がまだ小学生のころ、
巨人軍のキャンプに連れて行ったときに
桑田真澄投手に
キャッチボールしてもらったことがあるんです。
で、桑田投手が相手だと
小学生でも
上手にキャッチボールできるんですよ。
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会場:へぇー。
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すごいでしょ?
つまり、相手が構えるグラブの位置とか、
どういうふうに動くのかまで考えて
桑田投手は、投げてくれてたんですよね。
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プロって、そういうことなんですね。
話が通じてる、というか‥‥。
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そう、そこの「通じてる感」というのは、
キャリアみたいなもの、ですよね。
もし学生さんでそれができる人がいたら
「ちょっと老けてる人」だよね。
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会場:(笑)
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学生は「上手い」必要はぜんぜんなくて、
変なところに投げちゃっても
「すみません」って言えればそれでいい。
でも、少なくとも
「キャッチボールをしてるんだ」という
感覚は持ってもらわないと。
ひとりで壁打ちしてる人、いますから。
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「相手が人間だ」ってことですもんね。
その意味では、聞いているだけなのに
「この人にしゃべりたい」って
思わせてくれる人は、すごいですよね。
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はい、それはすごいです。
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この人と話すと自分の頭が動き出す、
みたいな感覚って、たまにありますから。
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マッキンゼーの中でも
よく「頭貸して」って言うんですよ。
私も使うんですけど
残業してるときとかに「ごめん、頭貸して」。
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それって、日本だけ?
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たぶん、英語で言う場合には
「ブレストに、付き合ってくれない?」
とかだと思うんですけど。
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僕も同じような経験があって、
『MOTHER』というゲームをつくってるとき、
タイピングをしてもらってたんです。
僕が書いたりしゃべったりした文章を
タイプしてもらうわけですけど
その人が文章を見てクスっと笑ったり、
吹き出したりする。
それが、すごくうれしかったんです。
もう、この人がいないと
やる気が出ないなと思ったくらいで。
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なるほど。
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その人が「いいですね!」なんて
言ってくれたりしたらもう‥‥。
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飛び上がるほど嬉しい、みたいな?
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そういうときのテンションは
次を呼び込むから、いい循環があるんです。
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それってまさに「頭借りてる状態」ですね。
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会社でも「聞いてくれる人」がいなかったら
出てこないことって、たくさんありますし。
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思考をひとりで進めるのって難しいんです。
さっきの「頭を借りる」というのは
誰かとキャッチボールしながら
高みを目指すという、そういうやり方です。
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なるほど、そうか。
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今だって、ただふたりでしゃべってるのと、
みなさんが
目の前で「クスッ」としてくださるのでは
ぜんぜん、ちがうでしょうし。
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みなさん、「頭、借りてます」。
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会場のみなさんの反応を拾いながら
トークが完成する、そういう感覚ですよね。
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<つづきます>
2013-09-05-THU