ばなな | 『LIFE』は、 エッセイもみんなちょっと、 気持ち悪いですよね。 |
糸井 | みんな、妙な本気さがあってね。 |
ばなな | 誰もこう書いてって頼まれてないわけでしょ。 わたしは、もっといい話、 いっぱいあるんですよ。 |
一同 | (笑) |
ばなな | もっとほのぼのした話。 誰が見ても「いいねぇ」みたいな。 |
糸井 | まほちゃんの『カレーライスとカルマ』が 最初に届いたんだよ(笑)。 で、あれにオレ引っ張られてたの、ちょっと。 |
ばなな | ええー。 わたしのせいにする?! |
糸井 | 谷川さんもね、なんかヘン。 あの文章。ヘン(笑)。 |
ばなな | わたしなんかちょっと、怖い。 |
糸井 | 詩人を忘れてるっていうかね。 ちょうどいいところに収めればいいのに ちっとも収めてなくて。 重松さんは、なんかね、 なんか、あの人じゃないんだよ。また。 なんだあれ。 |
ばなな | それはたぶん、 この本の力だなと思いました。 わたしは。 |
糸井 | オレけっこう、 書き出すの腰重かったもん。 |
ほぼ日 | はい、そうでした。 |
糸井 | そうだった。ごめん。 なんで、つらかったかって言うと なんでも「こってり」書けるんだよ。 |
ばなな | それはすごいことですよね。 |
糸井 | どの料理でも「こってり」書けるんだよ。 で、ちょうどいいおいしさっていうのが、 なかなか見つからなくて、 おはぎなら大丈夫だと思って、おはぎにしたの。 いやー、ヘンだったなぁ。 ああ、たしかに。 |
ばなな | だから、変わった本だと思いますよ。 |
糸井 | おおもとは、でも、よしもとばななが カレー書いてきたっていうところからさ(笑)。 |
飯島 | (湯気のたつ大皿を運んできて) 茶碗蒸し風の卵焼きです。 |
ばなな | ああー! うわー。 見たことも聞いたこともない食べ物。 |
糸井 | ね。 |
ばなな | あさりの香りがする。 |
糸井 | あさりって奇跡的なおいしさだからね。 |
ばなな | 特に今の時期! |
糸井 | どうぞ、おとりください。 |
ばなな | いいえお先にどうぞ。 |
糸井 | じゃあ、わたくしがとりましょうか。 |
ばなな | 大丈夫です。 まだ、たけのこごはんを、 いただいております。 (と遠慮し合いながら、 ふたり、それぞれ自分でとりわける) |
糸井 | ‥‥おいしいねぇ。 |
ばなな | これ、おいしい。 |
糸井 | いわゆる、 すごい高級料理の世界ですね。 |
飯島 | ほんとですか。 |
糸井 | 家庭料理なんだけど。 |
飯島 | 茶碗蒸しが好きなんですけど、 蒸すのが手間なときには、 こんなふうにやわらかい 卵焼きにするんです。 |
ばなな | でも、茶碗蒸しの気持ちになる。 |
飯島 | そうなんですよ。 |
ばなな | ふふ、ほんとになる。 |
飯島 | ごはんにかけると、 どんぶりになります。 |
糸井 | 和風の、天津丼になるね。 ぼくはアレルギーでエビ、カニが 食べられないから、 これで天津丼にするのはいい。 |
飯島 | これは、あさりとほたてです。 |
糸井 | このレシピはまだ発表してないよね。 |
飯島 | そうですね。 |
ばなな | おいしい。 |
糸井 | 吉本家はさ、 お姉さん(漫画家のハルノ宵子さん)も 料理上手じゃない? あの人の上手さっていうのも、男っぽいよね。 |
ばなな | うちの姉は味重視ではないの、あんまり。 |
糸井 | そうですかね。 そうかな? |
ばなな | もちろん、おいしいけど、 うちの姉はね、最後のデザイン。 やっぱり絵の人だから。 |
糸井 | だけど、おいしいですよ。 いっぱい食えるね、あの人のもね。 |
ばなな | うん。 通じるものがあるかもしれない。 女系じゃないっていう。 |
糸井 | 男系だね。 飯島さんとあの人と一緒の場所にいたら またおもしろいね。 |
ばなな | あと、量がすごいですよ。 姉の料理は。 一般家庭ではつくりえないような量。 |
糸井 | 手際がよくて、おいしくて、 ぐうの音を出させないっていうか、 抑え込む。 |
飯島 | すごーい。 |
糸井 | すごいよ。 カロリーだなんだっていうのは、もう ぶっ飛ばしちゃうからね。 「そういうこと言ってるやつは、だれ?!」 みたいな。 |
ばなな | 怖いよ、ほんとに怖いよ。 だって、わたし一回、 血糖値が高めだったから、 「ちょっとカロリーは 抑えた感じでいいよ」 とメールで書いたら、 「おまえなんか二度と家に来るな」 ってメールが来て。 こわーい。 |
糸井 | ほら。 |
一同 | (笑) |
飯島 | すごーい。すごいですね、それは。 かっこいいです。 目指します。 |
糸井 | そういう人だよね。 真夏真冬問わず、 半そでだからね。 |
ばなな | 裸足でね。 |
糸井 | まるで、野人の話してるみたいだけど。 そういう人じゃないんだよ。 ちょっとね、飯島さんと、 通じるところがあると思う。 本音度が高いっていうか。 |
ばなな | お料理の道に進む人は、 お店で働いてる人以外は、 たいてい家族とかに出してて、 ものすごく褒められて、 それが、だんだん、プロになっていって、 (かわいらしく)「ねっ」っていう人が、わりと。 飯島さんは「ねっ」っていう 感じじゃないですね。 |
糸井 | なるほど。 「なっ!」って感じ。 |
ばなな | 「おらぁ!」って感じ。 それが、やっぱり、 すごい特徴かなと思って。 |
糸井 | そうですね。 男らしいんだね(笑)。 |
ばなな | でも、おいしい料理をつくる人、 ほんとに、男前ですよね。 「これはしない」っていうの、 はっきりしてる。 |
糸井 | 簡単に「愛情」で食わせないですよね。 |
ばなな | うん、そうですね。 |
糸井 | 「愛情入れないでね」っていうことを、 ぼく、言いたくなるんですよ。 愛情入れるのダメよ。 受け取る人は、 愛情だと取るかもしれないけど、 愛情じゃないよね。 「わかってね」っていうの、 飯島さんには、ないよね。 |
ばなな | そうそう。 「わかってね」とか、 「ねっ」とか、「ほら」みたいなのがない。 もちろん食材とかに対する愛情、 全部含めた愛情はあるんですよね。 |
飯島 | おいしいって思ったにんじんがあったら それだけ買いに、遠くまででも 行っちゃおうっかな、とか。 |
(よ、よしもと家の食卓というのも すごいのですね。 この卵焼きは、家庭料理なのに、 割烹の技というか‥‥、 すごいものでした。 次回につづきます!) |
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN |