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小林 |
あのね、僕、この話、したいなと思って。
稚内にね、犬の調教を
やってる人がいるんですよね。
『南極物語』なんか最初にやってた、
そのときは千葉かなんかで
動物プロダクションやってた人なんですけど。
稚内に敷地を借りて、
いろんなタイプの犬が3、40頭。 |
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糸井 |
はぁ、はぁ、はぁ。 |
小林 |
で、僕がたまたま、犬を使うやつで、
「ちょっと1回見に行ってください」
って言われて、
稚内まで行ったことがあるんですよ。
たまたまですよ。
そこに、狼がいたんですよ。
‥‥惚れてしまいますね、狼って。 |
糸井 |
見たんだ。
いたってどういうこと?
飼ってたの? |
小林 |
その人がね、一緒にいるんですよ。
ダーッと中に、独立した犬舎ですよ。
だから、混じることはないんだけど、
フィールドがあって、小屋があって、
後ろっ側から餌やったりとか、
出入り口を作って。
まぁ、ちょっとした運動ができる所とか
そのくらい全部付いてるんですけど。
それがまぁ、10何個ぐらい並んだ長屋が
何棟かこう、あるんですよ。
で、そこの一番端っこにいたんです。
あのぅ、なんていうんだろう?
こっちがちょっと、なんかね、
働きかけるんですよ。
で、気品といったら、ない!
「これ、飼いたい」とまず言ったんだけど、
調教師が「東京じゃあね」って言われて、
そうだろうなっていう。 |
糸井 |
(笑)「狼の散歩行ってくるわ」って。 |
一同 |
(笑)。 |
小林 |
「狼飼うと、信頼関係ってすごいから、
ちょっとかなわないですよ、他の犬に」
って言われて。 |
糸井 |
へぇー。 |
小林 |
で、しかも僕が近づいていくと、
犬舎の中に入っちゃうんですもん。
もうそこから出てこないんですよね。
人見知りのシャイなこと。
あの狼がですよ。
で、狼なんて、逆に言うと、
威嚇するのかなと思ったら、
うなり声ひとつ出さないんですよ。
それで、ちょっとある距離、
本当にこう、ポッと離れると、
ワーッと出てくる。 |
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糸井 |
はぁ、はぁ。 |
小林 |
盲導犬協会を作った人が、
初めてここの狼に会って
「僕、散歩していいかな」って言うから、
「あ、いいよ」って、
まったく1頭と1人。になったらしいんですよ。
そうしたら、もう全然違うって言ってましたね。
もうピタッと。 |
糸井 |
かっこいい(笑)。 |
小林 |
雰囲気変わるみたいですよ。
僕、それ聞いて、
あ、狼ってかっこいいなと思って。
本当にね、あのぅ、僕らも
たまに人と会ったときに赤面症というか、
ちょっとシャイすぎる人って、
逆に惹かれません、なんか? |
糸井 |
うんうんうん。 |
小林 |
あんまりこう、ポロポロ、
あつかましく喋るやつよりかは。 |
糸井 |
うんうん。 |
小林 |
そういう惹きつけ方の極端なやつを持ってて。
なおかつ、犬の何倍かの大きさあって。 |
糸井 |
でかいんだ? |
小林 |
でかいんです。
で、目の奥のほうがブルーというか、
翡翠のような色の目をしていて。
すっごいきれいなの。気品があって。
それで、なんていうんだろう?
人懐こさとかないんですよね、もう。
見た目はもうすっごい一瞬怖いんだけど、
もう一切もうスーッといなくなっちゃう感じで、 |
糸井 |
もう惚れてるね、言い方が(笑)。 |
一同 |
(笑)。 |
小林 |
もう本当に欲しかったんですよ。 |
糸井 |
ねぇ。
飼ってみたいよね? |
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小林 |
飼ってみたいな。
主従関係できると、
絶対に襲ったりしないですよ。 |
糸井 |
おおもとは、人間がその狼と
ジャッカルを掛け合わせて犬を作ったわけだから、
人間の力っていうのもすごいなと思うんだ。
こいつとやっていこうって思ったわけじゃない、
昔の人間がさ? |
小林 |
うん。 |
糸井 |
そのときの、こっちも
ものすごい動物性があるわけじゃん? |
小林 |
そうですよね。 |
糸井 |
その人間っていうのも、やっぱりすごいよね。
その対峙してるこっち側? |
小林 |
だから、変な話、狼を見ると、
そういう遠い過去みたいなものが。 |
糸井 |
呼び起こされるんだろうね(笑)。
話してても、ワクワクするよね。 |
小林 |
なんで狼を見てワクワクするのか
わからないぐらいワクワクしちゃうんですよ。
犬にない雰囲気が。 |
糸井 |
でも、馬にもそれはあるでしょう?
やっぱり? |
小林 |
もうそれはありますよ、またね。
また違う意味で。 |
糸井 |
ありますよね。 |
小林 |
あのね、仔馬とかのフワフワもいいんだけど、
本当にレースに行って帰ってきたぐらいの、馬って。 |
糸井 |
(調理を終えた飯島さんが着席)
いらっしゃいませ。
飲み屋みたいになってますけど。 |
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小林 |
そう。 |
一同 |
(笑)。 |
飯島 |
馬の話ですか。 |
小林 |
うん。一番、その馬の削った、
余計なものを削った
原型な精神が残ってる感じで。
馬っていうのは、侮れないぐらい怖いし、
噛むし、蹴るし。 |
飯島 |
へぇ〜。 |
小林 |
獰猛です。 |
糸井 |
獰猛なんですよ。 |
小林 |
でも、そういうのって、
飼いならされたらわからないじゃないですか。 |
飯島 |
わかんないです。 |
小林 |
たとえば、仔馬と一緒にすると、
母と子みたいな景色が見えるし。 |
糸井 |
いわさきちひろの世界みたいに(笑)。 |
小林 |
なっちゃうんだけど。 |
糸井 |
違うんだよね。 |
小林 |
レースに帰ってきたりなんかすると、
もうちょっと普通手をつけられないですよ。
目が血走ってるし。 |
飯島 |
へぇ〜。 |
小林 |
そういうのを見たときに、
やっぱり狼と同じように
こう、なんか呼び起こされる。
たぶん野生の馬を手なずけて、
言うこと聞かして、会話して。 |
糸井 |
昔ね? うん。 |
小林 |
で、乗るとかの信頼関係ができる。 |
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糸井 |
『アバター』だ! |
小林 |
ふぅ〜ん。 |
糸井 |
あ、見てない? |
小林 |
見てない。 |
糸井 |
『アバター』見るといいよ。
あれね、ちょっとおもちゃみたいに
思われるかもしれないけどね、
そのへんがね、やっぱり描けてた。
あの、俺が見たときに見返してくる、
襲い掛かってくるやつがおまえの馬だっていうわけよ。
そいつを手なずけることが
おまえの乗り物を作ることなんだっていう。
同じだよ。 |
小林 |
同じ話ですね。 |
糸井 |
だから、戦うんだよ、まずね。
で、勝って、「私は言うこと聞きます」
っていう瞬間ひっくり返るんだよね。
馬、そうなんだろうね、きっとね。 |
小林 |
そうですね。 |
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(つづきます) |