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糸井 |
分(ぶ)ですよね。
自分の背丈ですよね。
背丈が見えなくなってるっていうことですよね。 |
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小林 |
あ、同時にあれじゃないですか?
なんかリスクがなくて──わかった。
僕ら劇団入るとかっていうのも、
何か、捨てるものがあるし、
何か断ち切るとか。 |
糸井 |
そうだね。 |
小林 |
そういうものを背負って、やってるうちに、
訳のわからないことがおぼろげに、形になって、
やっと見えてくる時期って、
1年後とかに、あるじゃないですか。 |
飯島 |
はい。ありますね。 |
小林 |
で、僕が頑張るのはこっちの方向かな?
と思えるようなことを、自分で見つけていく。
形でね。でも、その人たちって、
学生の身分で何もリスクもないし。
それで名刺交換して何か教わるって、
既に教わるっていう態度じゃないですよね。 |
飯島 |
そうですよね。 |
糸井 |
(笑)たださ、そういう中から、
あのぅ、なんていうの?
悪くないホリエモンとかだって
混じってるわけじゃないですか。 |
小林 |
悪くないホリエモン?
なんかホリエモンもずっと見てると、
そんな悪いやつだったのかなって
思いにもなるんですけど。 |
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糸井 |
つまり、僕たちは何かできるはずだ!
って信じてる馬鹿さみたいのが、
走っていくには必要で、
それってあんまり大人だと
やっぱりできないんですよね。 |
小林 |
ああ、はい。 |
糸井 |
それは自分の側に欲しいものですよ。 |
小林 |
今の糸井さんにですか? |
糸井 |
うん。 |
小林 |
それは無理でしょう、もう。 |
糸井 |
もう無理なんですよ。 |
小林 |
要らないでしょう? |
糸井 |
いや、欲しい。 |
小林 |
突き進む? |
糸井 |
うん。欲しいねぇ。 |
小林 |
これ以上まだ何が欲しいの?
そういうの、年寄りの冷や水っていうんだよ。
そのね、年とってから傷つくと、
傷がうずきますよ、それは。 |
糸井 |
そうかね。
ここ打っちゃった、みたいな(笑)? |
小林 |
みたいな。若いときみたいにはさ。 |
糸井 |
だけどさ、会社の子たちが、
年寄りに育てられた子どもみたいに
なってくるんですよ、たぶん。
俺はそれを懸念してるんですよ。 |
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小林 |
年寄りに育てられた子? |
糸井 |
つまり、Aがある、Bがある、
Cがあるっていったときに、
AでもBでもやりゃいいじゃないか、
っていうのが若い子。 |
小林 |
それは糸井さんの知ったこっちゃないでしょう? |
糸井 |
いや、そんなことない。 |
小林 |
でも、それはそこまで責任持てないでしょう? |
糸井 |
いや、持つべきだと思うよ。 |
小林 |
本当ですか? |
糸井 |
けしかけるぐらいにならないと、
どんどん爺むさくなるよ、若い人が。 |
小林 |
山本夏彦さんって、
『室内』っていう雑誌を作ってた方がいらして。
社員のスタッフから見れば。
当然おじいさんですよね、
でも、それはその人たちの問題で、
山本さんの問題じゃないような気がしますけどね。 |
糸井 |
いや、やっぱり運命共同体だからね。 |
小林 |
うーん・・・・。 |
糸井 |
俺がそれ見てたら、
その変なことをさせなかったかもしれないな、
っていうことがおもしろい時っていうのは、
やっぱり一番嬉しいんですよ。わかる? |
小林 |
うん・・・・、うん。 |
糸井 |
俺がいたら、止めたろうなっていうようなことで、
おもしろいじゃないかっていうものが出てくるのが
一番嬉しいんですよ。 |
小林 |
うん、うん、うん。 |
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糸井 |
で、そういうことがどんどん出てきて、
どんどん俺が取り残されていったほうが
おもしろいんですよ。 |
小林 |
うん、うん。 |
糸井 |
そのムードを作るためには、
孫を育てるみたいに、
「ここはこうやって囲いすればいいんだ」
みたいなことを、俺がついやっちゃうのを
やめなきゃならないんですよ。 |
小林 |
あ、そう。だから、
褒めるだけにすればいいじゃないですか。
「お、いいね」(拍手)。
褒め倒して。
「俺はわかんないから、もうやっていいよ」って、
もうそれしかないじゃないですか。
放し飼いにするしか。言ってみりゃ。 |
糸井 |
どうなんだろうね? |
小林 |
かっこいい言い方すれば、
「最後俺がケツ拭いてやるから」
っていうような言い方しか
もうなくなるよね? |
糸井 |
ていうケースもあるよね。
で、やっぱり今ってさ、
AをすればBが角が立つみたいなことって
ものすごくみんな敏感になってるから、
やっぱりどんどんちょうどよく
上手になってますよね。で、それに対して、
「それだとちょっと食いっぱぐれるんだよね」
っていうのは、
俺は言わなきゃいけないんですよ、たぶん。 |
小林 |
ふぅん。 |
糸井 |
で、それはちょっと
自分の中に乱暴な要素が入らないと、
もろともですよね。 |
小林 |
うーん・・・・。 |
糸井 |
だから、薫ちゃんがやってる、
自分が役者としてどうのこうの
っていうのよりももうちょっと
面倒くさいものだとは思うんだけど。 |
小林 |
うーん、うーん。 |
糸井 |
その、男の子成分で乱暴するみたいなことって、
年取ると、「もうそれ散々みんなやってきて
失敗してるんだよ」って言いたくなるような
ことばっかりなんだよ、きっと。 |
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小林 |
うーん。 |
糸井 |
だけど、だからできるみたいなことっていうのは、
ちょっとさかのぼって自分がやったこと見てても
やっぱり、あ、何も知らないからできたんだ、
っていうのはいっぱいあるからね。
だから、そこは自分が年取って
孫みたいに人たちとやっていくときは、
相当、変なジジイになんないと。 |
小林 |
いや、それってさ、そうなんだけど、
本当に知らなかったのかな?
知らない振りしてるんじゃないかな? |
糸井 |
知らなかったことは多い。 |
小林 |
でも、一事が万事っていうところもあって。
それは全部知らないのは当然なんで。
だけど、ものの道理から言うと、
これがこうなってきた、
およそこういう仕上がりが見えるな
っていうようなことも、
またそれは予見できるじゃないですか。 |
糸井 |
あのぅ、あえて言えば、わかんなくっても、
そっち行って大丈夫だよ、
なんとかなるよっていうのはわかるよ。 |
小林 |
うん。 |
糸井 |
だけど、つまり、
懐中電灯も持ってないのに洞窟入ったんですか、
みたいなことは散々やってますよね。 |
小林 |
うーん。 |
糸井 |
で、今だと、懐中電灯要るよねっていうのが
思いついちゃいますよね。
で、そこは、懐中電灯のない時代の自分っていうのが、
今の俺を助けてくれてるわけだから。 |
小林 |
なるほど。うん、うん。 |
糸井 |
結構大きいですよね。 |
小林 |
いいじゃないですか。
もうそんな大きくならなくても。 |
糸井 |
(笑)。 |
|
飯島 |
(笑)。 |
小林 |
もう。それは懐中電灯の話すれば、
劇団なんか、僕らそれこそ
トラックの荷台に隠れて移動してたじゃないですか。 |
糸井 |
はぁ〜。 |
飯島 |
ええ〜? |
小林 |
巡業。今みたいに小劇場の人が
新幹線やバスで移動することはなかったから。
僕たちは荷台。
テントとか、食材とか、食器とか、セットも全部、
照明とか入れたこんだなかに隙間を作って、
俺たち下っ端の劇団員は、そこに入って
九州まで行くんですよ。 |
飯島 |
ええ? 九州? 大変ですよね。 |
小林 |
事故起こして横転したら、死人の1人や2人出て、
それだけでもう公演どころか、
劇団飛びますよ、今だったら。 |
糸井 |
あの時代に既に変なのよ。 |
小林 |
変なんですよ。変を売り物にしてるから。
その後の世代のやつらに
「移動、どうしてる?」って言ったら、
「え? 新幹線ですけど」って言われたときに。 |
糸井 |
がっくりだよね(笑)。 |
小林 |
なんかね、夢の話みたいな世界になって。 |
糸井 |
新幹線って夢みたい(笑)。 |
小林 |
南のほうで公演やって、
5月くらいに戻ってくると、
幌の中、蒸し風呂みたいになるんですよ。 |
糸井 |
パレスチナとかも行ってるもんね? |
小林 |
はい。 |
糸井 |
(笑)。 |
飯島 |
ええ〜? |
|
糸井 |
笑うしかない。そういうのを、今だったら、
「そんなことしなくても新幹線あるんじゃない?」
っていうことは言えるんですよ。ね。
だけど、「幌っていうの、どうだろう?」
っていう人がいないと、
やっぱりおもしろくないんだよ。 |
小林 |
おもしろいのかなぁ。 |
糸井 |
おもしろいよ、やっぱり。
あのときだって。
だから状況劇場だったんだもん。 |
小林 |
うーん・・・・。 |
糸井 |
そこはね、みんながね、
ちょっとずつ上手になって、
下手なところをわざと作るぐらいにしないと。 |
小林 |
そうですね。でもあのころから、
唐さんわざとっぽかったからね。 |
糸井 |
当時、わざとですよ。
その貧しさがひどいもん(笑)。
紙を焼いて食べるとかっていうのをさ、
お友達が考えたりするようなさ。 |
一同 |
(笑)。 |
飯島 |
ええ〜? |
糸井 |
あれ、わざとなんだよ。
「紙をね、焼いて、こう食えば、植物なんだから」
みたいなさ。 |
飯島 |
お給料はあったんですか? |
糸井 |
ない。 |
小林 |
ないない、そりゃ。 |
飯島 |
あ、ないんですか。 |
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小林 |
いや、後に出てくるんですけど。
私は若干貰いましたけど、いわゆる無給です。 |
糸井 |
それは大変なことです。
‥‥あ、俺、次の仕事があるわ。
じゃあ、これで。 |
小林 |
どうも、どうも、
お話いっぱいしましたんで。 |
糸井 |
ごめん、ごめん。 |
小林 |
ありがとうございました。 |
糸井 |
ありがとうね。
酒場のオヤジって楽しいなぁ(笑)。 |
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(おわります。ご愛読、ありがとうございました!) |