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糸井 |
薫ちゃん、状況劇場を
出たとき何歳だったの? |
小林 |
28なんですけど、
9になる直前だったんじゃないですか。 |
糸井 |
はぁー。 |
飯島 |
私も近いです。28です。
21歳ぐらいからで。 |
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小林 |
ああ、そう。 |
糸井 |
つまり、30の前だ。 |
小林 |
30の前ですね。 |
糸井 |
あぁー。あぁー。そのころは、ある年なんだな。
自分としてもな、きっとなぁ。
成熟としてもそうなんだろうね。 |
小林 |
うーん・・・・。 |
糸井 |
30成人説ってあるじゃない?
「20歳成人だけど、
実際には今ってものすごく社会が
高度になっちゃって複雑化してるから、
成人って30だよ」って、
俺はよく人に言うんだけど。 |
小林 |
うん。 |
糸井 |
30前のことはもうだいたい未成年だからって
いう考え方をすることはできると思うのね。 |
小林 |
僕もなんとなく思ったのは、
20代は取り返しがつく。
なんかもう1回、別のことやるにしても、
チャレンジするにも、
漠然とただ劇団を変わるのでも。
劇団をずっとやってて、
役者やってるのが偉いっていうわけじゃないし、
芝居が特別偉いわけじゃないから、
そんなもの別に変わるものがあったったって、
おもしろがれるんだったら、
なんでもありだし、っていうふうに思ってたし。 |
飯島 |
わかります。私も独立する前は、
先生についてたから、
いろんなCMの現場とか、
大きいCMとか行って、
すごく楽しかったんですけど、
自分が1人になっても
そんなのきっと来ないと思ったんで、
屋台のコーヒー屋さんをやろうと思って。 |
糸井 |
はぁー! |
飯島 |
代官山の屋台のコーヒー屋さんに
いろいろ話聞きに行ったり。 |
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糸井 |
ほぅ、ほぅ、ほぅ。 |
飯島 |
で、屋台のコーヒー屋やって、
もしCMの仕事が来たらやろうかなとか、
そんな感じで思って。 |
糸井 |
実際にはその屋台はやらなかったの?
やらないで済んじゃったの? |
飯島 |
はい。 |
小林 |
済んじゃったりするっていうことが
大きいんですよ。
済んじゃったら、済んじゃった道に
なるわけじゃないですか。 |
糸井 |
済んじゃった道ね。 |
飯島 |
でも、何年かしてレストラン学校に通って、
そこの仲間同士で
屋台をやりたかったっていう人が集まって、
10人ぐらいでお金出して
屋台の車買ったんですよ。 |
小林 |
うん。 |
飯島 |
で、今もあるんですけど、
時々、イベントでみんなで屋台やるんです。 |
小林 |
屋台の車って。 |
飯島 |
軽の。 |
糸井 |
ホットドッグ屋みたいなやつね? |
飯島 |
そうです、そうです。
みんなで10万円ずつぐらい
出し合って買ったんですよ。
イラン人の人から(笑)。 |
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糸井 |
薫ちゃんの馬みたいだ(笑)。 |
小林 |
(笑)それは生み出せますよ。 |
糸井 |
飯島さん、6年、先生についていたんだぁ。
先生がいた時代って、
俺はほとんど知らないから、
ちょっと想像がつかないんだよねぇ。 |
小林 |
でも、振り返って、
たとえば20代前半とかっていうのは、
ああ、結局この人が師匠だったのかな、
あるいは先生だったのかっていうのは
あるんですか? そういうのはない? |
糸井 |
先生だらけとも言えるし。 |
小林 |
だらけですよね。
ああ、そうですね。 |
糸井 |
だから、俺はわりに無条件で
「いいなぁ」って思っちゃうから、
先生だらけでしたね。 |
小林 |
うん。そうそうそう。
僕も劇団辞めた後に、それに近い、
先生だらけだなという気持ちになりましたね。 |
糸井 |
フリーで生きていくのは
それかもしれないなぁ。 |
飯島 |
そうかもしれないですね。 |
糸井 |
飯島さんはね、
平気で他の料理人にね、
メモ持って話聞くんだよ。 |
小林 |
へぇー。 |
飯島 |
(笑)そうなんです。 |
糸井 |
料理人対料理人じゃないの。 |
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飯島 |
私はレストランの料理人っていう経験がないので、
そういうことを聞くのが大好きなんです。 |
糸井 |
あれ、メモしてた側の勝ちですよね。
最終的に。 |
小林 |
料理人っていうのは、
そういうときに素直に
ちゃんと教えてくれますか?
あるいは、決定的に言わないものって
あるんですか? |
飯島 |
言わない人もいますね。
でもこの間お聞きしたシェフは
なんでも教えてくれました。
もう自分のノートとかも全部見せてくれて。 |
小林 |
いい人ですねえ。 |
糸井 |
人に何か聞いてもらうって、
やっぱり嬉しいことでさ。
「年寄りがそういうものなんだよ」
っていうのは吉本(隆明)さんが
言ってたんだけど、
俺もそれ、自分もそうだし。
聞く耳さえあれば生きていけるよね。 |
飯島 |
この人はあんまり聞かれると
いやだろうなっていう人には、
見て、あ、こうするんだ、とか、
そういう感じで勉強して。 |
小林 |
なるほど。いや、でも、
ふたりはレベル高いですよ。 |
飯島 |
そうですか? |
小林 |
なぜこんな話するかっていったら、
僕、この間、買い物から出てきたら、
「小林さん」って呼び止めた人がいて。
22、3ぐらいの青年で。
「小林薫さんですよね。
いつもドラマとか観てます。
お話1つ聞いていいですか?」と言うんですよ。
「自分は、つい最近、
北海道から出てきたばかりで、
新聞配達しながらタレント養成所に
通ってるんです。
あのぅ、教えてもらえないですか。
役者にとって、1つあるとすれば、
なんでしょう?」
みたいなことを言うんですよ。 |
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一同 |
(笑)。 |
糸井 |
それは、それは違うなぁ。 |
飯島 |
何か漠然としすぎてますね。 |
糸井 |
何が、どこが違うんだろうなぁ。 |
小林 |
でも聞こうとしてるんですよ。 |
糸井 |
いや、その通りだけどさ(笑)。 |
小林 |
「俺、ちょっと急ぐから」って
言おうと思ったんですけど、
なんか妙に、まぁ、すれてなくて、
真面目だけど、ちょっと勘違いしてるなと思って。
でもまぁ、あのぅ、どう間違って
立派な人になるかわかんないから(笑)。 |
一同 |
(爆笑) |
糸井 |
そうですね。うん。俺もそう思うよ、きっと。 |
小林 |
「同時代の人の芝居でもいいし、
映画でもいいし、
いっぱい見ることじゃないか?
同じ世代の友達のことを」 |
糸井 |
いいアドバイスですねぇ。 |
小林 |
「なんかもうわかんないけど、
その人たちはどんなものを
おもしろがったりするのかっていうことって、
大事なことだと思う」と。
「はっ? ‥‥それは?」みたいな。 |
糸井 |
まだ行く(笑)? |
小林 |
うん。要するに、で、僕はそのときに、
「俯瞰でものを、自分を、
見るっていうことも大事だから、
一所懸命自分がなるっていうことも
大事かもしれないけど、
そこから見えてることって狭かったりするから、
それを、たとえば──」 |
飯島 |
真面目に答えてますね(笑)。 |
糸井 |
ちゃんと言ってるよ。 |
小林 |
「上の辺りから眺めるようなことも大事じゃねえか」
って言ったら、
「‥‥俯瞰でものを?」って、
言われたたびに返してくるの。 |
飯島 |
でも、おもしろいですね。 |
小林 |
本当に。なんか災難が待ってたみたいになって。
で、俺、次に行くところがあったんですよ。
「僕、ちょっと行かなきゃいけないんで」
って言ったら、
「じゃあ、じゃあ、じゃあ、もう1つ」。 |
糸井 |
ああー。 |
小林 |
「あのぅ、これからも電話してよろしいでしょうか。
携帯の、携帯のあの」 |
飯島 |
えっ? |
小林 |
番号交換をしようとするんですよ。
「いや、僕、本当に忙しいから」
そういうふうに15分間ぐらい喋りましたよ。 |
糸井 |
15分も? |
飯島 |
すごーい。 |
小林 |
やっぱり「教わる姿勢を教わっとく」
って大事なことですよね? |
糸井 |
うーん・・・・。薫ちゃん、
そういうの聞かれやすい顔してたのかねぇ? |
小林 |
いや、なんか僕ね、たまたま、あのぅ・・・・。 |
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糸井 |
油断があったんじゃないか(笑)。
心の隙ができてたんだ。 |
小林 |
そうなんですよ。
僕なんか今までそんなふうに
声かけられたことないんですよ。 |
糸井 |
大学とかに行くとね、そういう方々がいますよね?
生意気な大学だと、
「名刺交換しませんか」って言われるよ。
それもすごいなぁと。
「糸井さん、名刺お持ちですか?」とか言って、
こう出される。
「僕はなんとかなんですけど」って。 |
小林 |
それも勘違いしてますよね。 |
糸井 |
すごいよねぇ。うーん・・・・。 |
小林 |
たぶんそういう人は何も学べないって気がしますよね。 |
糸井 |
うーん。いや。断言はしませんけども、
学べてなるものか!
って思いますよね(笑)。 |
一同 |
(笑)。 |
小林 |
なんなんだろうなぁ。 |
糸井 |
なんだろう? |
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(つづきます) |